2023年6月9日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。
「
合鍵をネット注文できるサービスを悪用し、不法侵入する事件が全国で相次いでいる。北海道内では5月、男が元交際相手の女性宅に合鍵で侵入し、殺害する事件が起きた。鍵に刻印された「鍵番号」さえわかれば、簡単にネット注文できてしまうからだ。危険な目に遭わないためにはどうすればよいのか。
5月4日、北海道東部に位置する釧路町のアパートの一室で、小学校教諭の女性(当時39)が遺体で見つかった。道警は元交際相手の男(37)を殺人容疑で逮捕した(殺人などの罪で起訴)。
捜査関係者によると、男は「合鍵を使って被害者宅に侵入した。合鍵は交際中に無断で鍵の写真を撮り、ネットで鍵番号を入力して、注文した」と供述したという。
鍵番号が悪用された事件は全国で後を絶たない。
2016年に松山市の女子大学生宅に侵入したとして逮捕された40代男は、不動産管理会社員を装い学生に鍵を提示させ、鍵番号をメモしてネットで合鍵を注文していた。
福岡県で2021年に逮捕された30代男は6年以上にわたり複数の女子大学生宅などに侵入していた。当時通っていた大学で、机の上やカバンの中にあった女子学生の鍵番号を盗み見て、暗記したり盗撮したりして合鍵を注文していた。
鍵番号とは何か。
鍵の上部に刻印された10桁ほどの数字やアルファベットの組み合わせで、メーカーによって異なる。鍵穴の種類や刻みのパターンを表していて、「鍵の設計図」とも呼ばれる。
錠取扱業者でつくる「日本ロックセキュリティ協同組合」によると、合鍵を作るには、かつては実物を業者に持ち込み、ギザギザなどがない「ブランクキー」を削り出すのが主流だった。
合鍵作製、ネットで簡単に注文
その後、鍵の形が複雑化するにつれ、業者がメーカーに鍵番号を伝えて発注するようになった。それに伴いネット上で発注を代行する業者が現れ、家にいながら合鍵を作れる手軽さや、割安さからニーズが高まった。近年は大手鍵メーカーも直接ネットで注文を受け付けている。
「鍵番号はクレジットカード番号と同じぐらい、人目につくと悪用されるおそれがある。身近な危険なのに意外と知られていない」
そう警鐘を鳴らすのは、鍵や防犯設備の民間資格を持つ防犯アドバイザーの京師(きょうし)美佳さん(52)だ。
京師さんによると、ギザギザした形の「ディスクシリンダー」や「ピンシリンダー」は、鍵番号だけで合鍵を作れる。表面に小さな丸いくぼみがある「ディンプルキー」も、鍵番号と鍵の写真があれば複製できるという。
合鍵を作る時に本人確認は要らないのか。
日本ロックセキュリティ協同組合は加盟業者に対し、不審な依頼の場合は免許証の提示の徹底を求めている。しかし、法的義務はない。
そもそも本人確認自体が困難だ。身分証の提示があっても、記載された住所で使われている鍵と同じものかを確認できる仕組みがない。鍵の実物がなくても、遠方にある実家の鍵など、合鍵作製を引き受けるべきケースも少なくない。
組合担当者は「業者側としては、鍵番号を知っている人は鍵の所有者だと判断せざるを得ない」と話す。
番号隠せるカバーや内鍵に機器
対策はないのか。
一番手軽なのは、鍵にかぶせて番号を隠せる「キーカバー」だ。数百円から購入できる。
効果が高いのは「スマートロック」だ。内鍵に専用の機器を取り付けて、スマートフォンのアプリで解錠・施錠ができる。賃貸物件で入居後に取り付けられる商品やレンタルサービスも登場している。
防犯アドバイザーの京師さんによると、スマートロックを導入すれば、不正に作られた合鍵で侵入される心配はなくなる。ただ、導入できる錠前やドアの形が限られていることや、スマホの設定に慣れない人には使いにくいことが課題で、「現在は過渡期」と話す。
メーカーも模索している。
大手の美和ロック(本社・東京)は21年から、鍵番号だけでは合鍵を作れないサービス「あんしん認証プラス」(1本当たり990円、税込み)を提供している。鍵とセットで「セキュリティーカード」を発行し、合鍵を作るには鍵番号に加え、カードに記載されたID番号も必要になるという仕組みだ。シリンダー(鍵穴)を交換する必要がないため、安価にできるのが利点という。
5月の釧路町の事件では、容疑者の男は被害女性のクレジットカード番号を盗み見て、ネットゲームの課金など計約20万円分を使ったことも判明している。取材を通じて、どんなに対策が進もうが、個人情報を悪用する者がいる、ということを伝えたいと強く感じた。」
鍵の複製問題は深刻です。キーナンバーは携帯電話でも簡単に写真撮影が可能です。この記事にあるように、鍵の番号だけでなく、クレジットカードの番号等からも、犯行が行われるおそれがあります。安易に他人に鍵の番号を見せないような対策を取ることが重要です。
Comments