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  • 執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

意外と侮れない「外壁タイル」剥落事故の怖さ

更新日:2023年2月16日



 2022年7月17日の東洋経済オンラインの表題の記事を紹介します。


「近年は夏前から、突然の大雨に見舞われるケースが少なくない。とくに夏になると台風により強風、暴風などの被害が発生する可能性も高まってくる。大雨や強風などの悪天候は、マンションの外壁に大きな影響を及ぼす。中でも、マンションの外壁に貼られたタイルが剥がれ落ちる剥落(はくらく)トラブルが多数報告されている。またタイルが落ちないまでも、浮きなどの劣化が目視で確認されるようになるのもこのシーズンだ。

 加えて日差しが強くなる季節でもあり、風雨以外に紫外線の影響も気になるところだ。また不具合のあるタイルが、地震の揺れなどをきっかけに剥落してしまうことも考えられる。


剥落で大きなトラブルに発展も

 タイルは建物の耐久性を向上させ、美観にも大きく貢献する。しかし浮きや膨れが目立つようになり、劣化がすすめばやがてマンション住人はもちろんのこと、通行人など第三者が負傷してしまうかもしれない。また周辺の車や住宅の破損など被害はマンション敷地外へ及ぶおそれもあるのだ。

 このようなケースではマンションの所有者、つまり管理組合の管理責任が問われかねない。賠償責任が問われた際には、経済的な負担を背負う可能性もある。またマンション自体の資産価値低下にもつながりかねないなど多大な影響が想定される。剥落など大きなトラブルにつながる前に、外壁タイルの不具合にいち早く気づき、必要な対策を行うことが重要となる。

 外壁タイルの不具合は経年劣化によるものなのか、それとも施工不良などほかの要因が影響しているのか。実は外壁タイルの不具合の確認時期が竣工後の引き渡しからどれだけ経過しているかによって責任の所在や対応策は異なる。以下、経過年数ごと注意すべきポイントについて詳しく見ていこう。

 分譲マンションを購入後、一定の期間内の不具合や施工不良であれば、売り主である分譲・施工業者が無償で交換や修繕に応じてくれる保証システムがある。これがアフターサービス契約だ。アフターサービスの内容は売り主の契約上の責任として「規準書」に定められている。



外壁タイルについても規定されており、2年間の対応が一般的だ。中には5年間としている分譲会社もあるので、まずはご自宅のアフターサービス規準書を確認していただきたい(画像:さくら事務所)


 またアフターサービスとは別に、宅建業者である売り主が負うものに「契約不適合責任」がある。契約の内容に適合しない場合、売り主に目的物の修補など責任を追及することができるというものだ。そして買い主保護の観点から、契約不適合責任の責任期間を引き渡し日から2年以上にする特約を除き、買い主に不利となる特約はしてはならないというルールが定められている(宅建業法40条1項)。

 さくら事務所でも、これまで数々の外壁タイルの浮き・剥離の調査に携わってきた。その経験上、基本的に2年目までの不具合に関してはアフターサービスや契約不適合責任の適応が可能で、無償で十分な対応を得られる事例が少なくない。

 ただ、契約不適合責任の適応にあたっては、アフターサービスとは少し事情が異なる。因果関係の立証が不可欠となるからだ。言い換えると「ある事実がそれに先行するほかの事実に起因していること」の証明、これが因果関係の立証となる。

 つまり外壁タイルが剥落したことと、外壁タイルの施工の不備がどのように関係しているのかを管理組合側が証明しなければならないのである。施工業者の故意・過失や損害発生との因果関係等の要件を立証するのは骨の折れる作業であり、管理組合にとって負担増となることは否めないだろう。


そこで実際の修繕にあたっては、次の3点に留意が必要となる。

1. 浮きや剥落の詳細な調査、原因追及。中立的な第三者機関の導入も検討すること 2. 原因の可能性を複数ピックアップし、その対策を織り込んだ補修を行う 3. 現在トラブルがない箇所も、将来的には補修が必要になる可能性がある。現状のみならず、将来的な外壁トラブルへの対応も協議しておく


 先述のとおり、竣工引き渡しから2年以内であれば、アフターサービスや契約不適合責任を活用し、無償で外壁の不具合に対応してもらえる場合がほとんどとなる。ではさらに時間を経た10年以内の場合はどうだろう。

 2年以上10年以内に外壁トラブルが生じた際は、タイル張り施工に問題があったことが確認できるかどうかがカギとなる。契約不適合責任が問えるからだ。タイル張り施工の問題が明らかであれば、分譲・施工会社が費用負担に応じる場合も少なくない。

 一方で、契約不適合責任には因果関係の立証が不可欠となる。管理組合側が、外壁タイルの浮き・剥離の発生原因が、施工上の過失にあった旨を明らかにしなければならないのだ。

 外壁タイルの浮きや剥落の原因は多岐にわたる。原因の1つとなるのが柱と壁の間などにあえて設ける構造スリット(隙間)絡みの不具合だ。構造スリットは建物全体のバランスを保ち、また地震などの揺れに対し、平行方向に力が作用することで柱や梁が折れてしまうのを防ぐ役割を担っている。この耐震性目的の隙間そのもの、もしくは隙間用部品を構造スリットと言う。このような隙間にまたがってタイルが貼られると、浮きの原因になってしまう。

 また外側からの内部確認は難しく、そもそも構造スリット自体が設置されていないケースも報告されている。分譲会社や施工会社の責任を明確にするためには、こういったポイントの指摘も不可欠だ。専門的な知識をもつ第三者機関に依頼し、的確なチェックを依頼するのが確実だろう。そのうえで補修方法を検討し、原因対策を講じることをおすすめしたい。


10年以降の不具合発覚では…

 外壁の不具合にはさまざまな要因がある。下地の厚さや処理をはじめ、先にお伝えした構造スリット関連など施工不良が原因になる場合も少なくない。しかし月日が経つにつれ、建物は変化するのもまた自然の流れだ。経年劣化が原因による、外壁のタイル浮きや剥離が起こるのも仕方のないことではある。

 実際はタイルの不具合が施工に起因していたとしても、その因果関係の立証は2年から10年目に比べてより困難なものとなる。分譲会社や施工・設計会社側の責任の追及、また費用交渉が難航するケースも少なくない。

 結果として、管理組合が施工費用を負担しなければならなくなってしまう。想定外の出費が増え会計を圧迫、修繕積立金にも影響を及ぼす可能性も否定できない。

 外壁タイルの剥落、落下に伴う事故は過去に何度も問題となっている。2019年、熊本で築6年目のマンションの11階部分から外壁タイルが落下。走行中の軽乗用車に当たり、怪我人を出したニュースは記憶に新しいところである。

 国や行政など、公的な機関による調査は行われないのかと疑問に思う方もいるかもしれない。実は外壁に関しては、建築基準法施行規則の改正 (2008年4月1日施行) により、3年ごとの全面打診調査が義務付けられている。目視や双眼鏡や望遠鏡を用いたチェック、手の届く範囲はテストハンマーによる打診を行うなどの調査内容が定められている。

 ただ、「落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」の調査であり、明確な判断材料が提示されているわけではない。また節目ごとの特定建築物調査は実施済みのマンションであっても、外壁に大きな不備、大量の浮きが見つかるケースは残念ながら存在する。3年ごとの特定建築物調査の結果を過信すると思わぬトラブルにつながりかねない。


日頃からの点検が重要

 外壁タイルの剥落の明らかな兆候はタイルの浮きの発生である。まず浮きの発見が必要だが、目視での発見は難しい。剥落を防ぐためには、日頃からの点検以外に方法はないのだ。以前、建物のどこかで剥落した箇所があるマンションではより注意が必要となる。

 特定建築物調査の結果にかかわらず、どんな場合においても、竣工2年目、10年目までには外壁の点検の実施を行うことを推奨しておきたい。特に2年目は外壁だけでなく、幅広い内容に対して無償で修繕を申請することができ、非常にコストパフォーマンスが高いタイミングだと言えるだろう。加えて引き渡し後10年以内は、構造耐力上主要な部位や雨水の侵入を防止する部分などに限定されるが、共用部分のアフターサービスが利用できる。大規模修繕工事の施工時期を確認するための劣化診断を兼ね、あらためて外壁の点検を行っておくといいだろう。さくら事務所では場合によってはドローンも活用し、目視が難しい箇所の不具合や劣化の予測に役立てている。

 外壁の不具合は一見しただけでは判断が難しい。しかし実際に剥離などトラブルが発生した後では、マンションの所有者である管理組合が建物の管理責任を問われる事態となってしまう。また大規模修繕工事ではじめて不具合が発見された場合、時間もコストも予想外に必要となる。アフターサービスの有効活用や第三者機関のアドバイスも検討し、こまめに点検することがトラブル回避への近道となるはずだ。」


 この記事にもある通り築10年まででなければ業者への瑕疵保障の請求は非常に難しくなります。大規模修繕工事の実施時期も視野に、築9年目に建物診断を実施することをお勧めします。築10年以内でタイルはく離の割合が10%を超えているようであれば、施工不良をデベロッパーや施工会社に請求できる可能性がかなり高くなります。


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