タイルの補修方法で、浮いたタイルと躯体の間に接着剤を注入するアンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法があります。アンカーピンニング工法には、「全面注入」と「部分注入」の2つの工法があります。
上図の左側が全面注入であり、右側が部分注入です。左側の全面注入であれば、各タイル1か所は接着剤でコンクリート下地に接着されており安心ですが、右側の部分注入であれば、グレーの部分のタイルは、接着剤で固定されておらず、タイル目地部分のみで固定されていることになります。
先日、知り合いの人から、大規模修繕コンサルタントから外壁タイルの補修について、部分注入でも大丈夫と言われたのが、実際どうなのか?という質問がありました。
その時に私が答えたのが、一般部・指定部という考え方です。
改修の仕様書にも「特記がなければ一般部分は25穴/ m2、指定部分(見上げ面、ひさしのはな、まぐさ隅角部分等をいう)は50穴/ m2とする。」という記述があります。
私が施工監理する場合は、万が一タイルが剥がれて事故が発生した場合に、人命にかかわるような部分については指定部に、それ以外の部分(バルコニー・開放廊下の内壁や、外壁でも、花壇等がある場合)は一般部として、補修に無駄な費用をかけないようにしています。
その知り合いの方の住んでいるマンションの修繕コンサルタントは、外壁はすべて部分注入(25穴/ m2)で問題ないと言ったそうですが、次の大規模実施までの15年間に大地震等があり、人命に係るような事故を発生させないために、費用はかかるが指定部は全面注入(50穴/ m2)で施工したいと言ってました。費用的には、部分注入で50万円、指定部のみ全面注入で150万円ということで、100万円アップするという話でした。
一般の人にはアンカーピンニング工法というだけで、細かな仕様までは知らないことが一般的です。大規模修繕工事では、仕様や採用部位まで細かく質問して、理事会が納得してから工事を行うことが重要です。
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