少し前の記事になりますが、2022年10月24日の週刊現代の表題の記事を紹介します。
「バブル絶頂期を上回る過去最高値に
東京では新築マンションの価格高騰が止まらない。不動産経済研究所によると、首都圏の新築マンション平均価格は22年上半期で6511万円。バブル絶頂期であった1990年の6123万円を400万円近くも上回り、過去最高値を更新した。
マンションデベロッパーで事業用地の購入を担当する何人かに話を聞いたところ、土地の価格は下がっておらず、むしろ力強い上昇傾向が継続中であるという。ならば来年新たに発売されるマンションの価格は、今よりも高くなる。ただし、それが今までのように調子よく売れるとは限らない。世界経済の状況を見渡すと、大きなうねりが見られるからだ。
エネルギー価格の高騰はヨーロッパの経済成長に急ブレーキをかけつつある。中国は相変わらずゼロコロナ政策を継続している。昨年からの不動産バブルの崩壊にも、有効な政策を実施しているとは思えない。アメリカはインフレ退治をすべく急激な金融引き締めの真っ最中だ。今年に入ってから5回の政策金利引き上げを行い、ゼロ金利が今や3%台に達した。
政策金利が上がれば住宅ローンの金利も上がる。30年固定の住宅ローン金利は2008年以来の6%台に上昇した。そうなると、当然販売には急ブレーキがかかる。現に、不動産やインテリア業界など、アメリカの住宅関連企業は金利上昇により大きな打撃を受けている。
日本はどうだろうか?
表向きの「統計数字」にはまだ現れていないが…
ハッキリ言ってこれまでのところ、日本の不動産市場では誰の目にも見える形で価格が下落している兆候は見られない。新型コロナの影響で飲食店舗ビルや中小のオフィスビルは、おそらく下落傾向にあると思われるが、それらを現す統計数字はまだ出ていない。
また、一流のオフィスビルを専門に扱う三鬼商事が発表する東京ビジネス地区(千代田、中央、新宿、渋谷、港の都心5区)のオフィス空室率は、コロナ騒動が始まった2020年の4月から約2年はなだらかな上昇を続け、ここ1年は6%台で推移している。
ところが新築ビルに限って言えば、この2ヵ月間は空室率が40%台となっている。一流の新築オフィスビルは財閥系の不動産会社が開発している場合はほとんど。テナントにはグループ会社を半ば強制的にはめ込むので、空室率が10%を超えることなどコロナ前なら考えられなかった。つまり、一種の「異常事態」が起こっているのだ。これはある意味、今のオフィス不況がいかに深刻かを象徴的に表している。賃料もゆっくりとではあるが、明確に下落傾向にあるが、下落率はそれほどでもない。ただし、実質的にはかなり下落していると思われる。オフィスビルの賃貸料は、テナントがつかない場合、表向きの賃料を下げるのではなく「フリー」を出して調整する。例えば、「最初の6ヵ月は家賃をタダにする代わりに3年間は解約できない」といった賃貸借契約をテナントと結ぶのだ。
なぜなら、賃料は一度下げると元に戻すのは困難。「フリー」で調整しながら、外見的な月額賃料は維持しようという手法だ。しかし、これは実質的な値下げであることも確か。したがって、都心のオフィスビルの収益は、目に見えないところで確実に低下しているといえよう。
建物から得られる収益が減少しているのだから、建物自体の価値評価も下がって当然だ。しかし、以上のような事情で、まだ可視的な値下がりは起こっていない。
もうひとつの原因として、「金利」がある。日本銀行の政策金利は2016年の初頭からマイナス0.1%である。すでに7年近くもそのまま。黒田東彦氏が日銀総裁である2023年の4月まで、この異次元金融緩和は続く見通しである。企業の資金調達金利も異様に低い。
日本のオフィスビルの有力な買い手であるREITの、金融機関からの資金調達金利は0.1%程度と推測される。考え得る限りの超低金利だ。そこにREITへの投資資金を加えてオフィスビルを購入すれば、さらに低コストとなる。言ってみれば金利負担はタダ同然といえる。
オフィスビルから得られる実質的な賃料が下がって収益利回りが1%台に下落しても、異常な低金利下であれば理論的に投資が成り立つ。それもあって、オフィスビルの価格は下がらないのだ。
では、マンションはどうか。
こんな異常事態が続くわけない
現在、住宅ローンの変動金利は低いもので0.3%程度の史上最低レベルになっている。購入者は返済可能額で予算を決めるので、高額な物件でも手が届きやすくなる。
ある試算によると、現在は1億円の物件が買える人が、平成バブル絶頂期の住宅ローン金利が7%の時代ならば、購入予算はせいぜい4000万円台になるという。つまり、金利を最底辺に維持していることでマンション需要者たちの購入予算は、高金利時代の2倍に跳ね上がった。それに合わせて、マンション価格も上昇してきたというわけだ。
しかし、こんな異常な低金利時代がいつまでも続くわけはない。アメリカでは年初からFRB(連邦準備理事会)が5回にわたって政策金利を引き上げた。引き上げ幅は現状で3%に達していて、今年は11月にもさらなる利上げがあると囁かれている。
その流れを受けて日本でも利上げが行われた場合、どのような事態が起こりうるのだろうか。
ペアローンを借りた人々が危ない
日本でも2023年4月の黒田東彦総裁の退任以降の利上げは確実だろう。あるいは、急進する円安にたまりかねた岸田文雄政権が、日銀総裁の首を挿げ替えてでも利上げを行うかもしれない。「検討使」と呼ばれる岸田首相がそんな荒業を使うとは考えにくいが、まったくあり得なくもない。
いずれにしても早晩、異次元金融緩和は終わるだろう。そのあとで、日本も少しは利上げするはずだ。私は個人的に、2023年は年間で0.5%の利上げではないかと予想している。しかし、これはただの予想である。今のアメリカ並みに年間3%超の利上げだって、決してありえないとはいえない。
なぜなら、1989年の12月に日銀総裁に就任した「平成の鬼平」こと三重野康氏は、3.75%から6%へと就任8ヵ月ほどで計2.25%も金利を引き上げた「過去」があるからだ。結果、当時の平成バブルは急速に萎み、「失われた20年」を招来したと指摘されている。
仮に日本で、2023年中に政策金利が3%も引き上げられたらどうなるのか。おそらく、住宅ローンの返済困難者が続出するだろう。現にアメリカでは、30年固定の住宅ローン金利が6%台に達したのは前編記事でお伝えした通り。日本でも、変動金利はおそらく5%前後まで上がってしまうだろう。
例えば1億円を0.3%で借りている方の月々返済額は約25万円(ボーナスなし)。この金利が5%に上昇すると50万円超に跳ね上がる。これでは、ほとんどの人が返済不能になってしまう。
日本ではもう10年以上も低金利が続いてきた。多くの人はそういった状態が未来永劫続くものと考え、収入に合わせたギリギリの返済額で住宅ローンを借り入れてマンションを買ってしまっている。
特に夫婦の年収を合わせてペアローンを借りた人々が危ない。
「売却してもローンが残る」最悪の事態
なぜなら、不動産は一人の名義が何かと都合がいい。夫婦どちらか一人の借り入れでマンションが買えるのなら、当然そうするはずだ。それでは足りないから、ペアローンを借りたケースが多いと思われる。返済は収入に対してギリギリに近いレベルの方が多いのではないか。そういう場合、金利の上昇はかなり痛いことになる。今でもギリギリに近い返済プランなのに、それが2倍に増えてしまったら……ということだ。
ペアローンで買われた物件が集中しているのは、東京の湾岸エリアや川崎市の武蔵小杉などの新興タワマンエリア。こういったところでは、ローン返済に困った人々の任意売却として売り出される住戸が大量に発生するはずである。そんな場合、ローン残額よりも高い価格で売れれば、何とかなる。
しかし、売り物件が激増すれば当然、価格にも下落圧力がかかる。価格が大幅に下落すると「マンションを売却してもローンが残る」という悲惨なことにもなりかねない。日本もアメリカ並みに金利を上げると、新興タワマンエリアでは「阿鼻叫喚の地獄絵図」が現出してもおかしくないのだ。」
この記事を書いた、榊 淳司さんは、最近いろんな所で、住宅バブルがはじけると警告しています。確かに、日銀の黒田総裁のあとの、金融緩和施策はいずれ見直されるでしょう。円安対策も含めて、金利が上がる可能性はかなり高いです。急激な金利上昇で、住宅バブルがはじけないことを願うばかりです。
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