2022年6月6日の廣田信子さんの表題のブログを紹介します。
「住宅の耐震化を進めることは、日本にとって重要な課題です。令和3年に閣議決定された住生活基本計画では、平成30年時点で約13%あった耐震性を有しない住宅ストックを令和12年までに、おおむね解消する目的を掲げています。あと、8年後です。したがって、旧耐震マンションの耐震診断、耐震改修は欠かせないのです。
そのためのマンションへの補助は…
1.住宅・建築物安全ストック形成事業による補助
●「耐震診断」に係る補助は、
補助率: 国と地方を合わせて2/3(国1/3、地方1/3)
補助対象限度額: 面積に応じて限度額があります。
●「補強設計」に係る補助は、
補助率: 国と地方を合わせて2/3(国1/3、地方1/3)
●「耐震改修」等に係る補助は、
補助率: 国と地方を合わせて1/3
補助対象限度額: 50,200円(平米当たり)
*ただし、Is値が0.3未満相当の場合は、55,200円(平米)
*これに、本年度より、耐震改修等と併せて行う省エネ改修等についても、新たに補助対象とすることになりました。
このほかにも、
2.地域防災拠点建築物整備緊急促進事業が対象になります。
平成25年11月に耐震改修促進法が施行され、昭和56年5月以前に着工した病院、ホテル等の不特定多数の者が利用する大規模な建築物や、地方公共団体が指定する避難路沿道にある建築物等については、耐震診断を行い、その結果を所管の特定行政庁に報告することが、義務付けられました。
マンションについては、地方公共団体が指定する避難路沿道にある建築物に該当する場合があります。
東京都が、それを実施しています。その場合は補助率がアップされます。
●「耐震診断」に係る補助は、
補助率: 国と地方を合わせて5/6(国1/2、地方1/3)
●「耐震改修」等に係る補助は、
補助率: 国と地方を合わせて5/6(国1/2、地方1/3)となります。
1、2の補助制度は、もし耐震改修ではなく、建替えまたは除却を行う場合は、その費用に、耐震改修工事費相当分を補助します。また1、2の制度は、地方公共団体が補助制度を整備した場合に、国が地方公共団体を補助する制度ですから、地方公共団体が補助制度を整備していない場合は補助を受けることができません。
補助の内容や要件等についても、各地方公共団体で異なる場合があるので、まずは、問い合わせが必要です。という具合に、国も補助を出しているのですが、なかなか進みません。
管理組合が、まずは、耐震診断の検討をしようとしても、耐震診断を受けることを頑なに拒む方もいます。国の耐震化を進める方針からすると、旧耐震で耐震診断を受けないマンションが、今後ずっと価値を持ち続けることができるのか…と思いますが…。
耐震診断の結果、Is値(構造耐震指数)が0.3未満の場合、それを耐震改修するのはたいへんなことです。補助金ではどうしようもない…と思い、いっそうのこと、耐震診断はしないと思う心理はわかります。でも、耐震診断を受けてみると、意外に大丈夫なこともあるのです。
もし、耐震診断の結果が厳しい状況でも、耐震改修はしないと決め、将来、建替えや解体を行うことを考えるとしても、その費用に、耐震改修工事費相当分が補助されることを考える必要もあります。
まずは、実態を知るところが出発点です。耐震診断を拒む方に、どう説明すればいいかと思い書いてみましたが、後期高齢者の方々に、将来を考えて理解をしてもらうのは難しいかな…と内心思います。後期高齢者の方々の心を変えるのは、理屈じゃなくて、マンションに対する「思い」だと感じることがあります。
自分が信頼する人たちが、頑張ってやっているから、それなら、協力しようという「思い」です。自分がいない将来のため…を理解してもらうのはなかなかたいへんです。でも、今、ご縁がある人たちの存在が高経年マンションで物事を決めるときは大事なのです。
そのことは、理解する必要があると思います。
将来を思い、頑張って耐震診断をしようと思う人たちがいて、その人たちが信頼されていれば、耐震診断は進められる…ということを感じました。もし、輪番制の繰り返しで、将来を考える人がいなかったら、それは、それで、耐震診断はしないということが前提の道筋をたどるのでしょう。
その話を、かなり年上の知人にしたら…
今、ここにあって、自分が暮らしているマンションなんだから、耐震診断をする方がいいかどうか…耐震診断の結果をどう判断するか…なんてもう自分では考えられない。でも、頑張っている理事の人たちがやりたいということなら…やることに反対はしないよ…と。これは、管理組合の管理運営や、理事の仕事に共感を感じているから、そう思えるのだと思います。
それは、たいせつなことなのです。もし、それがなくて、管理組合運営に不満だらけだったら、耐震診断に賛成しないな…と感じました。
この問題は、総会で反対者が多くて、でも、何とか過半数の賛成が確保できたから進める…というような話ではないので、悩ましい管理組合が多いのだと思います。でも、頑張って進めようと思う人がいないと、耐震診断は進みません。
理屈だけではなく、今、頑張っている人たちの「思い」が通じることが、大事なんだと思います。」
東京都はこのブログにあるように、補助金の比率をアップして、耐震診断・耐震補強の実施率を高めています。また1.2の補助金事業は、耐震補強を諦めて、建替えを行う場合にも使えるということなので、診断を実施して、補強設計を行い工事費の算出まで行っても無駄にはならないと思います。補助金の支給基準を緊急避難通り沿いのマンションという縛りを外して、すべての旧耐震マンションでも利用できるように、制度の改定を行って欲しいと思います。
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