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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

時給「1500円」でも集まらない、マンション管理員「人手不足」の惨状…150万円をかけても集まるのは一桁、「ぼったくり」とクレームも



 2024年5月20日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。


マンション購入の「意外な盲点」

 マンション価格の高騰が治まらない昨今。購入希望者は頭を悩ませていることと思いますが、じつはマンション購入で重要なのは価格だけではありません。

 長く住み続ける家として考えた場合に“意外な大誤算”となり得るのが、じつは管理費や積立金の「予測できない高騰」です。今回はこれについて著したいと思います。

 労働者の確保や物価上昇への対策として、政府は2023年から北海道、東京都、大阪府、愛知県、福岡県などの主要都市の最低賃金を順次引き上げし、これにより全国の平均時給が過去最大の1002円のベースアップとなりました。物価に応じた賃金のベースアップは当然の措置ではありますが、一方でこの賃金引き上げに不満を漏らすのが、中小・零細企業の経営者や個人経営の飲食店店主などでした。人件費にこれまで以上のお金がかかり、また募集したとしても、そもそも“人気のない職種”には人が集まらないからです。

 この悪循環に陥っているのがマンションの管理員や清掃員の人手不足です。それもかなり深刻で、最低賃金での募集では誰も集まらず、首都圏に限って言えば多いところで時給換算2000円程度と、東京都の最低賃金である1113円をはるかに上回る賃金で募集をしているところもあります。

管理会社の採用担当者によれば、150万円をかけて1ヵ月間募集をしても応募はせいぜい20件程度で、そのうち採用になるのは5件~7件。「管理員を一人採用するのに20万円かかった」という管理会社の採用担当者の嘆く声をよく聞きます。


管理委託費「値上がり」のワケ

 管理員ひとりに支払われる時給は、東京都内では1300円~1500円が大体の相場のようですが、そのほかに交通費や各種保険料、ユニホーム代金、福利厚生費用などの間接費用、計画年休制度による有給補償費用、有給休暇を取得した際のアテンドの人件費、高齢者の清掃員への介護保険の一部負担、定着率を上げるための昇給、報奨金の支給など「見えないお金」がかかっています。その見えない費用などがプラスされて、管理委託費の『管理員業務費用』は時給に換算すると2,000~2,500円になるといわれています。

 清掃員や管理員を雇う際はこれらが採用する管理会社のコストとなり、それゆえマンションの住民ひとりひとりが支払う管理費が値上がりや高騰にもつながっているのです。

 なかには、マンションの管理員から時給を聞き出した居住者が、管理委託契約書の業務費用と比較して「時給2,300円になっているが、管理会社が1000円以上もぼったくっているんだろう!」とクレームを入れる場合もあり、その相談を受けることも多々あります。

 管理委託費の高騰で管理費会計の収支状況が厳しく、一見した限りでは、赤字予算ではないようですが、しかし実際には、繰越金で収支がやっとプラスになる『単年度収支は赤字』のマンションも多くなってきているのが現実です。近頃では管理委託費の値上げに関して組合の協議が整わず、結局は管理会社が撤退せざるを得ないマンションも多くみられます。

 国土省のマンション総合調査(H30)では、約73%が「分譲時に分譲業者が提示したマンション管理会社のまま変更をしていない」と報告されており、このことから管理委託費について十分に話し合ったり、組合がきちんと機能し住民同士のコミュニティが内製化されていると思われるマンションは少ない状態と言えるでしょう。

 複数の同業他社から見積をとり、業者を競わせてコスパのいい管理会社に変更するマンションもあり、約21%のマンションが「分譲時に分譲業者が 提示したマンション管理会社に委託していたが、その後現在の管理会社に変更」と回答しています。

 しかし、私の知っている限りでは、2年間で5回も管理会社を変えたマンションもありますが、ほとんどが管理委託費の高騰についての相談で、「管理会社を変更したい」という相談はほぼありません。こう記したのには理由があります。実は管理会社の変更は非常に難しいのです。というのも管理委託費の削減を目的にリプレイスをしても、サービスの品質が下がり『安かろう、悪かろう』になっては本当の目的にたどり着くことができないからです。

 では、この高騰にどういった対策を講じればよいのでしょうか?


「自主管理」の危険性

 この問題を解決するための究極の手段として、管理会社に業務を委託せず、すべてを管理組合が自前で管理を行ういわゆる『自主管理』を選択する方法もありますが、これはあまりおすすめはできません。

 自主管理のマンションは、管理委託費を支払う必要がないので費用は多く削減できますが、管理費の徴収、ゴミ出し、清掃、漏水等建物、設備の不具合の緊急対応の業者の手配など、今まで管理会社が行ってきた業務のすべてをマンションの組合員が行わなければならないので、かかる負担は半端ではありません。

 さらに、管理会社は管理組合等名義の「保管口座」や「収納・保管口座」について、印鑑や引出し用カード等の管理を法律上で禁じられていますが自主管理のマンションでは、理事長や会計担当理事が通帳と銀行届出印を一緒に保管することができ、さらにキャッシュカードの作成、使用もできるのです。そのため、管理組合の役員が財産を横領するといった、住民にとったら見逃すことができない事件も発生しています。

 管理組合の財産、特に将来の大規模修繕に備えて積み立てている積立金は、非常に高額なものとなっており、その保管には最大の注意を払うのは当然です。

 仮に管理会社のフロントマンや管理員が、管理費や金品を着服しても、使用者責任としての義務があるので原則として、管理会社が損害を負うことになり、多くの場合はお金が戻ってきます。

 ところが、自主管理のマンションで横領が起こった場合は、たとえ訴訟で勝訴判決を受けても加害者に賠償能力がなく、財産を隠されるなどして被害にあったお金が戻ってこないパターンが頻発します。

 理事長が、管理組合のお金を持ち逃げして行方が分からない、前の理事長が引っ越して新理事長が就任したら、管理組合の通帳の残高がほとんどなくなっていて、大規模修繕工事もできず組合員から一時金を徴収しなければならなかった事例は一つや二つでありません。


トラブルを避ける対策

  前回にもお伝えしましたが、お金の不透明な使い道に関する相談事例は自主管理のマンションでは非常に多く、管理規約、使用細則はあるものの「役員が主観的な拡大解釈をしてやりたい放題で困っている」という相談もよくあります。

 さらに「理事会に意見を言ったらクレイマー扱いされて住みにくくなった」、比較的小規模の自主管理マンションでは「10年以上も同じ人が理事長を続けていて、独断専横的な管理組合運営をしており是正できないのか」などといった相談も日常的です。

 国交省の調査では、管理事務のすべてを管理会社に委託している『総合管理』のマンションは、全体の74%と、ほとんどのマンションが管理会社に委託しています。自主管理のマンションわずか 6.8%ですが、その割合からすると相談件数が多いのは事実です。

 こうしたトラブルを避ける対策としては、会計業務(出納)だけを管理会社に委託して、管理員業務、清掃業務、建物設備管理業務、緊急対応業務等は組合が行う『一部委託方式』を採用するといった方法もあります。

 また、自主管理のマンションでも比較的大規模な団地などでは、管理組合を組織として自立させて事務作業や手続きを行い、事務局会計担当者を雇い入れている場合もあります。

 こういったマンションは組合員の管理意識も高く、自分たちで植栽管理、建物、設備の管理や自衛消防訓練、防災の炊き出し訓練、お正月の餅つき大会、春の観桜会などイベントを積極的に企画して団地全体の多世代のコミュニティ形成を推進しています。

 団地内の居住者同志の交流も盛んで、管理組合が主体で運営されている『本来、あるべき姿』の自立した管理組合もあります。豊かに暮らすためには、ある程度の運営共用部分の維持管理の資金は必要だと考えます。一方で、マンションには多くの人がそれぞれ異なる考えや価値観を持って住んでいることも忘れてはいけません。

 価値観の違いを埋めるために、何が大切なのかを考え、その方向性に沿う管理組合運営が住みよい環境をつくるためには欠かせません。」


 かつては管理会社を変更(リプレース)することで管理費を削減することも出来ましたが、管理会社変更ではコストダウンにならないケースも増えてきているのが現状です。かといって、この記事にあるように自主管理に切り替えるのも現実的ではありません。最近、気になっているのはアプリによる管理です。管理費や修繕積立金は収納代行会社に委託し、日々の清掃や建物の維持管理はビル管理会社に委託し、管理組合運営はマンション管理士に委託することで、費用を抑えて管理するサービスも発売されています。新たな管理手法のひとつとして採用を検討すればいかがでしょうか?


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