多くのマンションは国土交通省が作成したマンションの管理規約のモデルである「標準管理規約」をもとに、規約を定めています。この標準管理規約は、あくまでモデルであり、区分所有法で定められた項目以外については、各マンションの実情にあわせて変更しても問題ありません。標準管理規約のままであれば問題ないと思われている方も多くいらっしゃいますが、よく読んでみると、もう少しこうしたらより良くなるのにと思う項目もあります。今回、私の独断で、標準管理規約から追加・訂正すればいいと思う内容を説明したいと思います。
第12条:占有部分の用途
まずは、専有部分の用途に関する項目です。標準管理規約では「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」と記載されています。
「2 区分所有者は、その占有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。(民泊利用禁止)
3 住宅の一部をテレワーク等、来客を伴わない事業を行う場合は使用することが出来る。」との条文追加を提案します。
2の民泊については、マンションによっては、許可する判断もあるかもしれません。
また、3項の追加は、昨今のコロナ対応で住宅内での在宅勤務やテレワークが増え、パソコンを用いた就業スタイルも増えているための措置です。3項で明記しておいた方が、後々トラブルになることも少ないでしょう。ポイントは「不特定多数の来客がない業種であること」「看板を表示しないこと」「住人に迷惑をかけないこと」「特定の顧客以外をマンションに入れないこと」です。マンションは建築基準法上の建物用途は共同住宅のため、部屋全部を事務所で使うことは当然不可としています。
第17条;専有部分の修繕等
次は専有部分の改修方法に関する規定です。「床のフローリングについてはLL-45以下の遮音性能を有する製品を使用すること。」「壁に穴を開ける際に主要構造部(柱・梁・耐力壁等)に穴を開けていないか、アンカーを躯体に打ち込む際に鉄筋や電気配線を探査してから穴を開けているか等。」の項目を追加をお勧めします。具体例を追記することで、リフォーム工事時のトラブル事前回避になります。主要構造部以外の壁についても外壁に穴を開ける工事については、原則禁止にした方がより安心です。
第27条:管理費・32条:管理組合の業務
ここはコミュニティ条項と言われる項目の追加です。管理費を充当する項目および管理組合の業務に「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成および、それに要する費用」を追記。さらに「2 自治会費は、賃貸人を含む居住者が払う費用であり、管理費とは異なる。マンション内で行うレクリエーション費用は自治会費から支払うこと。」
この項目は、今回の管理規約見直しで削除された項目ですが、自治会が、まともに機能していないマンションでは、やはり必要な条文だと思います。標準管理規約からは削除されましたが、追記することは可能です。
ただ見直しの根拠となった理事会の懇親費用等、一部の入居者のみの飲食に管理費が流用されている件については注意が必要です。第37条2項に「役員は、別に定めるところにより、役員としての活動に応ずる必要経費の支払と報酬を受けることができる。」との記載もあります。飲食を行う場合は、この報酬をあてる等、一般の組合員から非難されない対応が必要です。
第36条:役員の任期
通常は1年任期が多い役員ですが、以下のように改定することをお勧めします。
「役員の任期は2年とする。改選時期は1年毎に半数の役員の入れ替えとする。2 再任は妨げないが、最長2期4年までとする。」と訂正。
1年毎に、すべての役員の入れ替えでは、十分な引継ぎができず、大規模修繕等、数年に渡る業務の継続ができなくなります。また、ワンマン理事長がマンションを私物化するのを防ぐ目的で、最長の任期の記載をお勧めします。
第46条:議決権
標準管理規約は各住戸の専有面積割合によるとされていますが、集計が非常に手間になります。広い住戸の人の議決権が、狭い住戸の人の議決権より尊重されるのは、面積にそれほど違いのないファミリーマションでは、逆に不平等なのではと思います。そこで議決権については「各組合員の議決権の割合は、住戸1戸につき各1個の議決権とする。」と訂正することをお勧めします。
第53条:理事会の会議及び議事
理事会については理事の半数以上の出席が必要です。そこで規約に以下の条文を追加することをお勧めします。「5 理事に事故があり、理事会に出席できない場合は、その配偶者又は一等親の親族(理事が、組合員である法人の職務命令により理事となった者である場合は、法人が推挙する者)に限り、代理出席を認める。なお外部専門家など当人の個人的資質や能力に着目されている理事については、代理出席は認めない。
6 理事会に出席できない理事については、テレビ会議等でも参加も認める。」
代理出席を認めないと実務の場面で、出席者が半数に満たず、理事会が流会になるケースが多々発生します。また、テレビ会議や携帯電話での出席も、今後必要になってくるでしょう。
第60条:管理費の徴収
管理費未納対策として以下の条文に追加をお勧めします。「7 管理費を6か月以上滞納した場合は、理事会の決議を経て駐車場使用契約を解除することができる。」
管理費滞納者に対して、駐車場を使用させない対策は、効果が高いです。
お住まいのマンションの規約と見比べてどうですか?ぜひ参考にしてください。
法律の文章は、読んでいるだけで頭が痛くなりそうですよね。管理規約はマンションの住まい方のルールを定めたものです。今回のコロナ騒動もあって、また新しいルール制定も必要になってくるでしょう。新しい色々な問題に対処するためにも、たえず最新の規約に改正していくことが重要です。
快適マンションパートナーズでは、管理規約改正のお手伝いもさせていただきます。
Comments