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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

武蔵小杉のタワマン 修繕積立金20億円 プロの住民が選んだ投資先



 2024年7月10日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。


「マンションの建物を維持するために住民から集める修繕積立金などを積極的に運用して、収益を得ているタワーマンションが川崎市にある。運用額は約2千人から集めた20億円以上。修繕積立金の不足が各地で心配される中、企業に匹敵する規模の運用の現場を取材した。

 JR武蔵小杉駅から徒歩数分という好立地。川崎市中原区のタワマン「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」では、59階建ての住宅794戸に約2千人が暮らす。

 2009年の竣工(しゅんこう)だが、周囲の植栽の手入れは行き届き、広々とした1階ロビーはホテルのようで、古さは感じない。

 住民らでつくるパークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー管理組合法人が運営する公式サイトによると、その資金力を支えるのが「積極的な資産運用」だ。

 同法人の代表理事副理事長で住民の志村仁さん(63)によると、運用方針の転換は16年。月々集める修繕積立金を増額したことがきっかけだった。

 有志を募ると、外資系投資銀行員や大手証券会社員、ヘッジファンド関係者と、タワマン内に住む複数の金融のプロが続々と集まった。


外資系投資銀行に証券会社 住民有志は金融のプロ 出した答えは

 立ち上げた「資産運用審議会」では、修繕積立金の特徴を土台に議論をスタートした。

 約16年周期で必ず支出がある、将来のインフレに備える必要もある、でも元本割れはしたくない――。

 国債だけでは、期待した利回りが得られない。株は売り買いの判断が難しい。

 プロたちが知恵を絞って出た案が、企業が事業資金などを調達するために発行する債券「社債」を中心とする運用だった。

 満期になれば元本に加えて利息が得られ、売り時の判断も不要。ただ、倒産などで債務不履行(デフォルト)のリスクはある。

 それでも分散させ、高い格付けのものに限定して購入することでコントロールできると判断した。為替変動リスクを避けるため、社債は国内企業に限定した。

 ただし、損失が出るリスクをゼロにすることはできない。格付けが一定以下に下がったら満期前でも例外的に売って、リスクを最小限にとどめることも取り決めた。

 管理組合法人の理事会に諮り、規約の改定を目指した。リスクに関する質問があれば、資産運用審議会での議論をもとに説明した。


ゼロにはできないリスク 「事前のルールが何より大切」

 志村さんによると、理事会メンバーが変わっても持続可能な仕組みにすることを目指したといい、「事前にルールを決めることが何より大切だった」と振り返る。

 理事会の了承を得た16年以降、管理組合法人名義で、証券会社2社の口座を開設した。

 毎月の理事会では、複数の社債購入の提案を受けることが日常になった。利回りなどを比べて1億円単位で買うことも珍しくない。

 現在、修繕積立金(年間約2億円)などを原資に運用する資産は約30億円。このうち約20億円分は、通信、金融、保険など国内の30社超の企業の社債で運用する。利回りは年0.4~2.8%程度。満期を迎えたものも含めて累計の運用益は2・4億円以上に上る。


駐車場の外部貸し トランクルームの収入 財務基盤の充実目指す

 ただ、こうした債券購入はどのマンションでもできるわけではない。条件がいい社債の多くは、億単位で取引され、定期的に買わないと、そもそも証券会社から提案されることもないという。

 盤石にも思える資産運用だが、志村さんはさらに、インフレや資材高などを背景にした、修繕工事費の高騰に備える必要性を感じているという。

 空いている機械式駐車場を外部に貸したり、使われていない地下スペースの一部を新たにトランクルームにして住民に有料で貸したり。これらで得られる年間2千万円以上も運用する。それでも、将来の経済状態を予測し、マンション単位で備えることには限界があるという。

 「デフレの平成からインフレの令和に入り、管理組合の財務基盤を充実させる必要性はますます高まっていると感じています」


修繕積立金 マンションの4割で不足  社債での運用はごくわずか 

 修繕積立金をいくら集め、どう運用するかは、多くのマンションが共通して抱える課題だ。

 全国のマンションのうち4270の管理組合を対象に実施した、国土交通省の「マンション総合調査」(2023年度)=有効回答1589、回答率37.2%=によると、約4割で修繕積立金が不足し、約2割は「不明」だった。

 修繕積立金の運用先について複数回答で聞いたところ、銀行の普通預金(約77%)、定期預金(約35%)、利息がつかない決済性預金(約26%)、住宅支援機構の「マンションすまい・る債」(約19%)と続いた。社債も含まれる「その他」は0.7%に過ぎなかった。


将来のインフレ 修繕工事費の高騰 「住民の話し合いが大切」

 マンション管理に詳しい、中古マンション売買会社コンドミニアム・アセットマネジメントの渕ノ上弘和代表によると、修繕積立金への向き合い方は物件ごとに、かなりの差があるという。

 住民の高齢化などでそもそも、必要な額の修繕積立金を集められていない例がある一方、都心の一部高級マンションでは、住民各自が資産運用する前提で、修繕積立金は一時金でまかなう方針としている例もある。

 国交省は6月、月々の修繕積立金を途中から大幅に引き上げる必要がないよう、当初から適切な金額を設定するようガイドラインを改定した。

 渕ノ上さんは「インフレや修繕工事費の高騰を背景に、どれだけ修繕積立金があればいいのか見通しにくくなっている」と指摘する。

 その上で「マンションの修繕にどう備えるのか、住民でよく話し合うことが大切だ」と話した。」


 マンションの修繕積立金は銀行に預けるのが一般的ですが、昨今の低金利もあり、ほとんど利息が付かない状況です。会計監査のために、年1回取る残高証明の費用が金利よりも高いケースも珍しくありません。そのような状況の中、入居者の中の金融のプロが参画し、修繕積立金の運用を行っている。という内容は驚きです。結果20億円の運用で運用益が2.4億円と増えています。

 全国の分譲マンションの修繕積立金は合わせると膨大な金額になります。これらの眠っている預金を有効活用することで新たなビジネスチャンスと考える投資会社も今後出てくるかもしれません。

 国も貯蓄から投資へと国民に働きかけている状況の中、今後は銀行預金だけでなく、投資の運用で修繕積立金を増やすことを目指す管理組合が増えてくるかもしれません。


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