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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

死ぬのが先か出ていくのが先か 急拡大する「リースバック」のトラブル

更新日:2023年9月27日



 2023年2月20日の週刊朝日の表題の記事を紹介します。


「自分の住まいを売って現金を得て、売った後も家賃を払いながらその家に住む。そんな「リースバック」に関する情報をCMなどで見る機会も多いだろう。だがトラブルも少なくない。利点を最大限に生かすために、やってはいけないこととは。

「オレオレ詐欺とかの話は知っていたから、見知らぬ人からかかってくる電話には注意をしていたのですが……」

 そう話すのは、埼京線沿線の都内マンションで一人暮らしをする82歳の女性だ。

「ローンはとっくに終わっているとはいえ、年金生活。いざ病気になったらどうしようとか、ずっと不安は抱えていました。そんなときに電話で『このマンションを買いたがっている人がいる。1500万円で売ってほしい』と言われ、話を聞くことにしてしまったんです。何しろ築40年近いおんぼろマンションでしょ。まさかそんな高額で買ってもらえるなんて、リースバックってすごいなと思ったんです」

 業者は翌日2人でやってきて、その場で契約を迫った。

 女性は「高く売れるなら考えたいとは思っているが、今すぐにとは思っていなかった」と拒否したが、「こんなにいい条件はめったにない。今を逃したら次はない」と相手は引かない。女性が「帰ってくれ」と言っても居座り、なお契約を迫る。やっとのことで彼らが引き揚げたのは6時間ほどの押し問答の末だった。

 翌日以降も電話や訪問が続き、「権利だけ買わせてくれれば、大金を手にしたうえで、ここに賃貸で住み続けられるんだから」という説得に負けて契約してしまった。

「その日の夜、よくよく考えてみたら、家賃が高すぎる。翌朝電話で契約を取り消したいと言ったのですが、家賃が高いと言うなら安い物件を紹介すると言うだけで解約してもらえなかった。私が死ぬのが早いか、家賃が払えなくなって出ていかなきゃならないのが早いか、かえって不安は大きくなってしまいました」

 悔しそうにこう振り返る女性は、「自分が悪かったのですが」と反省の弁を繰り返した。


 マンション管理士でマンション総合コンサルティング代表の廣田信子さんは「高齢者を狙ってリースバックの方式を悪用し、カモにする業者がある」と話す。なかには詐欺まがいの手口もあるという。

「私が話を聞いたある高齢女性は、年金生活で住んでいるマンションの修繕積立金が値上げされたらどうしようという不安を感じていました。そんなとき、リースバックの広告が目に入り連絡を入れたら、営業が熱心にやってきました」


■クーリングオフは適用されない

 「このマンションには大規模修繕の予定がある」とか、「売却すればまとまった現金を手にできる」といった安心させる話を強調され、この高齢女性は仮契約を結んだ。ところが……。

 「マンションの売却を決めたと管理組合に伝えたところ、当面は修繕積立金の値上げの予定はないとわかった。また売却価格も市価の半分以下と安すぎることもわかったのです。すんでのところで本契約は阻止できましたが、高齢者につけこむ業者があることは確かです」(廣田さん)

 解約できたこの事例に対して、冒頭の82歳の女性が泣き寝入りせざるをえなかったのには理由がある。

 一般的な訪問販売の場合、一定期間内の無条件解約を定めたクーリングオフ制度があるが、消費者が所有する自宅やマンションを不動産業者に売却する契約にはクーリングオフが適用されないのだ。そのため、いったん結んだ契約を解除するには高額な違約金が必要になることもあるという。

 リースバックを事業化している企業は増え続け、仲介を含めれば現状で100社を超えるとされる。一方で国民生活センターは、2年前から「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」と発表している。

 このうち、リースバックに関する相談の3分の2以上は60代以上の高齢者からという。その相談件数は2016年度の571件からジリジリと上昇し、20年度は611件、21年度は668件になっている。

「リースバック110番」で相談を受けている佐藤淳弁護士は「高齢者には老後資金の不安があるにもかかわらず、金融の手が差し伸べられにくく、これまでは持ち家を売却するしか道がなかった。リースバックは持ち家を活用してお金を得る手段ではありますが、制度の性格上、買い取り額は相場よりは安く、その後の賃貸料も相場より高くなるのは仕方がない。契約の内容と、売却額や賃料が自分に適しているか、内容を理解して判断する必要がある」と注意を促している。

 冒頭で示したような“押し売りまがい”の営業行為は論外として、国民生活センターなどに寄せられるトラブルの多くは佐藤弁護士が指摘するとおり、契約内容の理解が不十分なために起きている。


■「買い戻せる」は口約束のことも

 ここからはより具体的に見ていこう。


【ケース1】「売却後は住み続けられるはずなのに、契約更新時に賃料の大幅値上げを提示され、住み続けられなくなった」というトラブル。

 弁護士・宅地建物取引士で弁護士法人リーガル東京代表の小林幸与さんは「こうしたケースは、リースバック後の賃貸借が定期借家契約の場合です。定期借家契約では、契約更新がないので契約期間を過ぎると再契約できません。再契約するなら賃料の値上げを受け入れろということになり、トラブルの元です。再契約ができる条項付きの定期借家契約か、普通の賃貸契約が望ましいです」という。


【ケース2】「リースバックで売却した住居を買い戻そうとしたが、応じてくれない。買い戻しはできるが売却時よりもはるかに高い価格を要求された」というトラブル。

 小林弁護士は「“あとから買い戻せる”と言われて契約したとしても、それが口約束では買い戻しできない場合があります。買い戻し(再売買)の詳細な条項について、契約書に書面化しなくてはいけません。また買い主が倒産するなどして、物件が競売に出され第三者に落札された場合などは、退去しなければならなくなってしまうこともある。契約前にしっかり確認するべきです」と助言した。


 さらに、小林弁護士が注意すべきだと指摘するのが【ケース3】の「修繕費の負担」をめぐるトラブルだ。

 通常の賃貸借契約では、借り主の故意過失によらない設備の故障や内装の汚れなどは、貸主の負担とされる。

「しかし、リースバック取引の賃貸借契約では、修繕費を借り主負担としているケースが多いのです。売り主家族が売却後も引き続き借り主として居住するので、建物内の設備や内装のチェックが買い主(貸主)にできないという理由からです。建物の修繕費用の負担については、契約前に必ず確認してください」(小林弁護士)


 また事例としてはさほど多くはないが、【ケース4】「契約時に高額の“諸費用”を請求された」というトラブルもある。

 小林弁護士は「まれに測量費用・事務手数料・仲介手数料などの名目で高額な費用を請求してくる会社があります。リースバック取引では、売買契約印紙代や抵当権などの登記抹消費用以外、費用がかかることはほとんどありません。売り主が負担すべき費用の明細を確認するようにしましょう」とアドバイスする。

 いずれのトラブルも、契約の際にしっかり内容を確認していれば未然に防げた可能性が高い。

「契約前に専門家や公共機関の窓口などに相談したり、比較検討して信頼できる買い主を選んだりするなど、慎重に判断してほしい」

 最後に小林弁護士はそう強調した。


 ここまでトラブル事例ばかり挙げてきたが、もちろんリースバックの制度を上手に利用した成功例も少なくない。

 埼玉県で暮らす80代の夫婦は年齢とともに生活に不自由を感じ、自分たちの年金収入でも住み続けられる高齢者施設へ入居を予約した。ただし、入居にあたってはまとまった金額を一時金として準備する必要に迫られた。

 夫が言う。

 「幸いなことに、施設は現時点では満室で、入居できるのは1~2年後になりそうだったので、その間に資金を作る余裕ができました。初めに検討したのは自宅の売却でしたが、売ってしまうと新たに住まいを探さなければなりません。また自宅を担保にした借り入れだと、施設に入居した後に自宅の処分や管理が大変。子供たちと相談してリースバックを選びました。施設への入居ができるようになるまで、今までどおりの生活ができるので満足しています」

 契約を結ぶ際、この夫婦は銀行や複数の不動産業者に相談した末に決めたという。


■注意点を踏まえトラブルを防ぐ

 都内のマンションで暮らす40代の夫婦はコロナ期間を経て、高齢の両親との同居を決めた。

 千葉県内の両親の家を二世帯住宅に建て替えて住む計画だ。その建て替え費用を捻出するため、自宅をリースバックで売却。実家を建て替えている間は両親と都内のマンションで暮らし、二世帯住宅が完成した暁には両親と40代夫婦、その子供の計5人が新居へ移ることにしている。

「いろんな手段を検討した結果、リースバックが最適だと判断しました。新居が完成するまでの約1年は定期借家契約でこのマンションに住める。親たちも、今から孫と暮らせて喜んでいます」

 なんといってもリースバックの最大のメリットは「まとまった資金が得られる」という点にある。

 自宅を担保に融資を受け、自宅に住みながら利子を払い、亡くなった後に自宅を売却して借入金を返済する「リバースモーゲージ」という手法でも資金は作れるが、マンション管理士の廣田さんは「土地の持ち分が少ないマンションは評価額が低くなるため、リバースモーゲージはなかなか難しくなる」という。

 まとまったお金が必要な人にとっては、「それならばリースバックで」とすぐ飛びついてしまいがちだが、紹介したトラブル事例も踏まえて「ぜひとも慎重に考えてほしい」と廣田さんは念を押した。

 国土交通省は昨年6月に「住宅のリースバックに関するガイドブック」を発表している。このガイドブックには「リースバックを利用する際のポイント」として、7項目の注意事項が記されている。前出の佐藤弁護士も「トラブル防止に参考になることが書かれているので、ぜひ目を通してほしい」とおススメしていたので、下の表にまとめてみた。


■リースバックを利用する際の重要なポイント

(1)不動産業者・金融機関など複数の事業者に相談し、自分のライフプランに合った条件・手法を選ぼう

(2)解約時に多額のお金がかかることも。きちんと条件・内容を理解するため、契約を急かす営業トークを鵜呑みにせず、落ち着いて、あとで家族に相談して決める、と伝えよう

(3)住み続ける期間にわたって、毎月賃料を支払うことができるか、一度計算してみよう

(4)提示されている売却価格について、複数の事業者に意見を聞いてみよう

(5)買い戻しは「当然の権利」ではない。「いつまでに」「いくらで」買い戻せる条件なのかなど、契約前に確認しよう

(6)自分が望む期間、本当に住み続けられる契約なのか、更新・再契約の条件など契約書の記載を確認しよう

(7)リースバック期間中に設備が壊れたら、直すのは自分・事業者のどちらか? 自分の好きなように修繕等をしていいのか?など確認しておこう

*国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」から抜粋


「おいしい話」にこそご用心。ぜひ参考にしてほしい。」


 リースバック自体は、自宅売却後も自宅に住み続けられる良い制度ですが、この記事にもあるように、悪用して、中古マンションを安価で買いたたき、転売して儲けようとしている業者もあるようです。高齢者を狙い、自宅に押し掛けて契約をせまる等、悪質な訪問販売やオレオレ詐欺に近いような事例もあるようです。国土交通省の「住宅のリースバックに関するガイドブック」を参考に、悪質な業者の詐欺にひっかからないよう注意してください。


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