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  • 執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

母の死後「都内のマンション」を相続した女性が絶句した…「老朽化マンション」のヤバすぎる惨状



 2024年4月19日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。


高騰する「古いマンション」の保険料

 国交省によれば、国内の中古マンションは2022年時点で約694.3万戸にのぼり、国民の約1割が分譲マンションに居住していることを明らかにしました。このマンションの総数のうち、じつに約125.7万戸が建てられてから40年以上が経過した、“古いマンション”だということです。

 築40年以上経過したマンションは、今後も増加が見込まれており、10年後には約2.1倍の260.8万戸が、さらに20年後には約3.5倍の445.0万戸に膨れ上がることが予想され、大きな社会問題になっています。なぜなら、そのような古いマンションでは、管理運営が機能せず空室が増加したり、資産価値や住戸としての機能を損なうといった、いわゆる“管理不全のマンション”に陥る傾向にあるからです。現在でも、管理規約がなく10年以上も総会も行われずに、理事長(管理者)が選任されていないマンションは珍しくありません。

 そんな“マンション大異変”とも言うべき現状のなか、先日、築50年以上が経過した都内のマンションにお住まいの40代の女性から、私のもとに相談が入りました。訪問してみると、この方が所有する住戸は、倉庫や事務所と住戸が混在している雑居ビルの一室でした。

 聞けば、母親がお亡くなりになり、一人娘のご自身が相続して住み始めたものの、入居後に何年も総会が開催されてないこと、管理規約がないこと、理事長が誰だかわからないことなどを知ったといいます。このようなマンションは「自主管理物件」と言われており、そういったマンションに住んだことのないこの女性は、どのようにして自衛し管理してよいのか分からずに困り果てた様子でした。

 訪れた時に、1戸1戸を回り、管理費と水道使用料を集金して手書きの領収書を渡し、学習ノートのような金銭出納帳にボールペンで書き込んでいる居住者の高齢男性を偶然見かけたので「このマンションは誰が管理しているのか」と尋ねてみました。

 高齢の男性の話では、管理は5階に住む不動産屋さんがお一人でされており、その不動産屋さんがこのマンションの管理者で管理会社のようです。分譲マンションの場合は、管理費は銀行口座からの引き落としが一般的ですが、そもそもこのマンションは、自主管理物件のため、そういう仕組みはありませんでした。


保険請求は漏水関係が約5割

 建築基準法では、『築後10年を経過したマンションは、3年以内に外壁の全面打診調査を行う必要がある』と定められていることから、マンションの大規模修繕は「12年周期」で考えられることが一般的です。しかし実際には築40年以上の約4割が、また築30年以上の約2割で適時適切な大規模修繕が実施できていない可能性があることを国交省が指摘しており、ハード面においての外壁等の剥落、 鉄筋の露出・腐食、給排水管の老朽化といった生命・身体・財産に影響する問題を抱えています。加えて、マンションストック戸数のうち築40年以上では24.4%が、築30年以上では22%が2回以下の大規模修繕しか実施していないようです。

 そのため、大規模修繕をしていないマンションでは、近年、地球温暖化の影響で起こる、ゲリラ豪雨や線状降水帯による雨水の侵入や水漏れの二次被害に加えて、老朽化した給排水管による漏水事故が多発しています。

 一般的に分譲マンションの場合、このような漏水事故や水濡れ被害が発生すれば、マンション管理組合保険の『施設賠償責任補償特約(建物管理賠償責任補償特約)』か、または『個人賠償責任補償特約で保険金』を請求する場合がほとんどです。


 マンション管理組合保険を主に扱っている大手保険代理店、ファイナンシャルアライアンス株式会社の清野孝道氏によれば、「高経年マンションの保険請求は、漏水関係が約5割以上を占めている」と指摘します。


「マンションで発生する漏水事故は、給排水設備の老朽化に起因するものと、居住者の不注意(洗濯機のホースが外れていたなど)によるものが多く、その漏水に関わる調査費用や被害宅の復旧工事にマンション管理組合保険は使用されています」(清野氏)

 しかし、老朽化がすすめば、それだけ修繕する費用も高くつくのが一般的です。マンションの大規模修繕は管理組合の総意がない限りは勝手にできないため、とくにコスト面で折り合いがつかず、そのまま放置されてしまうということも多く見受けられます。


保険料が“爆上がり”するマンション

 このような事故が多いため、マンション管理組合の保険料が大幅に値上りしています。マンションによっては、保険料が1.5倍になったとか、1.8倍になったなど悲鳴を上げている管理組合もあります。大規模修繕工事を適切に実施してない、『だらしのないマンション』につられて、『真面目に管理しているマンション』まで大きな影響を受けているようです。


「事故件数の多いマンションは、保険料が大幅に上がる傾向にあります。このままマンション保険料の値上げが進めば、適正な保険が締結できない“管理不全マンション”が増える恐れがあります。被害宅の復旧工事等の損害賠償は、本来加害者宅の保険で対応すべきものを、加害者宅の保険加入を確認せず、管理組合の個人賠償責任特約が積極的に使われていることに問題があります。

 外壁がボロボロで、いつタイルが剥落するか分からないようなマンションが、お住まいの地域にある光景を想像してみてください。「危険な街」のイメージが定着し、最悪の場合、その地域からに人がいなくなって、治安も悪化してしまいますよね。このようなマンションを増やさないためにも、マンション管理組合では、漏水など、共用部分の損害事故に対して適正に対応していく必要があります。

 現在のマンション管理組合保険の保険料は、事故件数の多い・少ないで保険料が決まるように料率が設定されていて、専有部分の事故に積極的に管理組合の個人賠償責任特約を使用していると、更新時にマンション保険料は大幅に値上がりする仕組みです。

 マンション管理組合保険料の原資は、区分所有者が支出する管理費から算出されていますので、保険料の大幅な値上がりを避けるためには、居住者が自分で負担している個人賠償責任特約の加入率を上げていくことが必要不可欠です。マンションの共用部分において賠償事故が起きた場合は、加害者加入保険を優先的に使用することにより、管理組合の保険事故件数は抑制され、結果的に管理組合の保険料が安く抑えられるからです。

 マンション保険料の高騰は、管理組合だけの問題ではなく、専有部分を含めたマンション全体の問題として対応することで、“管理不全マンション”を未然に防ぐことに繋がると思います」(清野氏)


原状回復工事ができない場合も

現在のマンション管理組合保険に付保されている個人賠償責任特約(包括契約用)は、

●マンションの居住者本人や家族等が日常生活または居住者戸室の管理不備等で他人にケガをさせたり他人の物を壊してしまったとき

●線路へ立ち入り等により電車を運行不能にさせてしまったとき

●他人に借りた物を国内外で壊したり盗まれたとき

などさまざまなケースで保険金が支払われます。


 そのため、マンションの外でペットが居住者に噛みつくなどの危害を与えた場合でも、マンション管理組合保険の個人賠償責任特約から保険金が支払われます。

 先日も、ある居住者から子どもが遊んでいて友達にケガを負わせてしまって、その賠償金の支払いをマンション管理組合保険の個人賠償責任特約から支払ってほしいと要望がありました。

 理事会では審議の結果、マンション管理上の事故ではないので管理組合の加入している保険では対応しない旨を伝えましたが、「総会での保険加入の議案説明では居住者の家族が他人にケガを負わせた場合でも保険金は支払いすると管理会社が説明していたので、支払って当然ではないのか」とトラブルになったケースもあります。

 清野氏はこれに、「マンション管理組合保険の個人賠償責任特約の被保険者(補償を受ける人)は、居住者となっており、マンション内・マンション外の事故を包括的に補償しているケースが多いため、管理組合としてはマンション外の保険請求だとしても、断れない可能性もある」と指摘しています。

 現行の補償範囲では、このようなマンション外の事故を請求されるリスクがあるため、ある保険会社では、個人賠償責任特約の補償範囲をマンション敷地内に限定する選択肢を設けているようです。また、保険金の請求回数によって更新時の保険料も変わるため、まずは、各居住者が加入している、自宅(専有部分)の火災保険や自動車保険、県民共済、クレジットカードの個人賠償責任保険を利用してもらい、管理組合が加入している保険はなるべく使わないように居住者に協力を呼び掛けているマンションもこのところ多くなっています。

 近年ではマンション管理組合保険の個人賠償責任特約には最初から加入しない管理組合も増えています。しかし、これに加入しない場合は、漏水などの原因の住戸が、どこの個人賠償責任保険に入っていない場合では、被害を受けた住戸が長い間、原状回復工事ができないなどの問題もはらんでいます。

 管理組合が個人賠償責任特約には最初から加入しない場合は、居住者向けにあらかじめ個人賠償責任特約について『メリットとデメリット』について説明会を開催するなどして理解と協力をお願いして、居住者全員に各自で個人賠償保険に入るようにするルール作りなどが必要不可欠な時代だと考えます。」


 マンションの共用部の配管の漏水は、管理組合が加入している火災保険(マンション保険)の施設賠償保険から支払いますが、個人宅内の専用配管からの漏水に関しては、火災保険に付随する個人賠償責任特約で支払う必要があります。

 ただ、マンションの全入居者が火災保険の個人賠償責任特約に加入していないおそれもあり、そのようなリスクを考慮して、多くのマンションでは、共用部の火災保険(マンション保険)に個人賠償責任特約を付けて契約しているケースが多いです。ところが、この記事にもあるように、築年数の古いマンションでは、給排水管の老朽化に伴い、水漏れが発生し、その復旧費用に、共用部の火災保険(マンション保険)の個人賠償責任特約で多額の保険金を支払った結果、更新時の火災保険料が大幅に増額し、困っている管理組合が多いのも現実です。

 先日、日管連のマンション管理適正化診断を行ったマンションでも、26戸と小規模なマンションでありながら、過去2年間に、上階からの漏水の復旧費用に300万円近い補修費用を共用部の火災保険から支払った結果、更新時の5年間の火災保険費用が1000万近くになって困っているマンションもありました。

 ここはやはり原則に立ち返って、専有部の漏水事故は個人の火災保険で支払うことを、マンションの全組合員に周知する必要があると思います。また、何でもかんでも、保険金から支払わせようとする管理会社のフロントマンの対応にも問題があります。

 火災保険については、管理組合はもっと真剣に取り組む必要のある課題だと思います。


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