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独居が半数弱の近未来 みとりは必須ですか? 上野千鶴子さんの提案

執筆者の写真: 快適マンションパートナーズ 石田快適マンションパートナーズ 石田


 2024年10月24日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。


「「みんな最後はひとりになる」。社会学者の上野千鶴子さんは、ベストセラー「おひとりさまの老後」でそう書いた。現実はそれに追いつき、国立社会保障・人口問題研究所は、単独世帯の割合が2050年には44・3%になると推計する。上野さん、独居世帯が半数近くになる近未来を、私たちはどう迎えればいいのですか。


単独世帯、私が増やしたわけではない

 ――ベストセラーの「おひとりさまの老後」を書いた17年前と比べて何が変わりましたか。

 「第一の大きな変化は単独世帯が圧倒的に増えたことです。いや応なしに進んだ人口学的趨勢(すうせい)ですから、私が増やしたわけではありません(笑)」

 「第二に、おひとりさまのイメージがネガティブからポジティブに転換したことです。独居を選ぶ高齢者が増えたのは世界的に共通した流れで、個人主義化は食い止められません。それに対応する社会制度が設計されればいいのです」


 ――現状の問題点はなんでしょうか?

 「高齢おひとりさまの女性は貧困率が高く、男性は社会的に孤立する傾向の強いことがデータで明らかになっています。この貧困と孤立さえ解決されれば、単独世帯の増加そのものが悪いわけではありません」


女性の貧困は人災だと言っていい

 ――なぜ、女性は貧困に陥りやすいのですか。

 「貧困の理由は低年金です。低年金の理由は、現役時代に低所得だったからです。日本社会では、女性の多くが働いてこなかったか、働いても低収入の仕事にしかつけません」

 「雇用の規制緩和によって正規と非正規を分け、労働市場を二重化したことが原因です。働く女性の過半数が非正規なのは、夫に扶養されていれば女性の収入は家計補助程度でいいだろうという理由からです。そこに家計支持者であるシングル女性やシングルマザーが参入していきました。女性の貧困は、人災だと言っていいものです」

 ――では独居男性の孤立は、なぜ起きるのでしょうか。

 「3世代同居率が高い時代には、高齢男性たちは家族の中で死ねました。この二十数年の間に男性の孤立度が高まった大きな理由は、離別と非婚の増加です。女性は離別すると子を引き取り、シングルマザー世帯になることが多い。経済的な困難を背負いますが、親子関係は維持できます。実家との関係も強いですが、男性にはそれがありません」

 「非婚の場合、女性の多くは経済的に困窮していてもシングルを継続しようとする。ところが男性シングルはいつまでも『出会い』を期待し続けるというデータがあります。女に頼らなきゃ男は生きていけない、ということでしょうか」


男性たちの社会性ってなんなのか

 ――さらに男性は人間関係をつくるのが下手ですよね。

 「企業など男性ばかりの同質的な組織、ホモソーシャルコミュニティーは覇権ゲームの世界ですから、心を許す友人関係はできにくい。どちらが上かということで値踏みし合う関係ですからね。男らしさ、女らしさを社会化されてきた結果、そうなっているのでしょう。反対に女性たちは相手の気持ちをくむコミュニケーション力を求められてきました。何十年も社会人をやってきた男性たちの社会性って何なのでしょうね」

 ――上野さんが回答者をしている朝日新聞の「悩みのるつぼ」コーナーのようになってきましたが。

 「友達はいます、と答える男性もいるけれど、じゃあ、その友達は、一人暮らしをしていてコロナで発熱して寝ていたら助けにきてくれますか? 女の人ならたいてい助けにきてくれます。困った時に相互に助け合えるような人間関係じゃないんですよね。男性がつくるのは、弱さを見せない人間関係です」

 ――男として人生を送っていると、そういう特性は生得的なものなんじゃないかと思ってしまいます。

 「男らしさはDNAやホルモンでは決まりません。男性ホルモンが攻撃性を高めるというけれど、人間はホルモンの奴隷でしょうか。幼い頃から、『男らしさ』を学習してきたのでしょう」


家族形成コストが高すぎるゆえの未婚化

 ――それにしても、なぜ非婚の傾向が進んでいるのでしょうか。

 「家族形成コストが非常に高くなっているからです。30代男性の婚姻率はきれいに年収と相関しています。コストは経済面だけではなく、女性の場合は時間と家事労働が重くのしかかります」

 「いま30代の男性の3人に1人、女性の5人に1人がほぼ生涯未婚になるであろうと予測されています。家族形成コストが高すぎるので事前に回避する行動が『未婚化』であると分析する社会学者もいます。だから、このコストをもっと社会が共有して減らしてあげれば、結婚回避行動は減るだろうと予測がつきます」


 ――親子の同居が減った理由はなんですか?

 「子どもが老親と同居しないことは親不孝だと思われてきました。同居しないと子どもは責められ、同居を断る親は自分勝手だと世間から言われた。しかし、世帯分離する方が親と子どちらにとっても楽だということが経験的にわかってきたからです。ただし、貧困と孤立がなければ、ですが」

 ――一人暮らしは個人的にも社会的にもコストが高くなりませんか。

 「介護保険ができる前の親子同居で、誰がコストを払っていたのか。それは『嫁介護』という名の妻のタダ働きでした。それで家族は追い詰められ、介護殺人も起きた。同居は社会的なコストが安い、などというのは女性の不払い労働を無視した意見です」

 ――高齢単独世帯の増加にどう対処すればいいと考えますか?

 「貧困と孤立に対処するには、定年制を廃止して高齢者も働けるようにすればよいでしょう。若者が減り、今では女性の労働力化はほとんど限界まできている。残っているのは高齢者ですから、働ける人はどんどん働けば、人ともつながります。定年制はエイジズム、年齢差別ですから」

 「フレイル(虚弱)などで働けない高齢者もいますから、介護需要による福祉立国という選択肢もあります。医療と介護の需要で福祉まちおこしをしている地域もある。高齢者は、金融資産をため込んでいますから、それを活用してもらいましょう。介護保険には保険財源と同じだけの税の給付もついてきます」


孤独死と呼ぶのはもうやめよう

 ――独居は孤独死になりやすいという問題もあります。

 「『在宅ひとり死』と孤独死は違います。多くの高齢者は在宅で最期を迎えることを望んでいますが、介護保険につながれば、ケアマネジャーが付いてデイサービスやホームヘルプを利用できますので、孤立しないですみます」

 「ただ、介護保険の要介護認定率は全国平均でいま、2割弱なんです。介護保険につながる前のグレーゾーンの人たちが、制度の谷間に落ちかねない。一人暮らしの女性たちは、自分たちで相互扶助のネットワークを作っていることが多いです。ポジティブな生き方をしているおひとりさまは、社会関係資本が豊かなんです。モノを所有しなくても貸し借りしたり、お互い様で助け合ったり。金持ちより人持ちで共助のシステムを作っているのですが、男性たちにはそういうネットワークがないようですね」

 ――孤独死になる前に、相互扶助で支えあうと。

 「ええ、結果として女性の孤独死の割合は男性に比べて低いです。ただ、最近では、臨終に立ち会い人のない死を孤独死と呼ぶのはもうやめようという提案も出ています。ちなみに孤独死と呼ばれるのは、死亡してから一定時間以上経って発見された場合ですが、3日以内に発見してもらえば十分ではないでしょうか。なぜかというと、要介護認定を受けて要介護1になると、最低限、週に2日のホームヘルプやデイサービスが入り、送迎サービスを受けられますから、亡くなっても3日以内に発見してもらえます。それでいいじゃないですか」

 「子どもが親の臨終に立ち会いたいという思いこみを、私は『看取(みと)り立ち会いコンプレックス』と呼んでいます。死にゆく人が望んでいるとは限らないでしょうし、死に目に遭えなくてもいいのではないかと思います。本人も家族も覚悟を決めたらいいんです。後で悔やむくらいなら、もっと早く別れと感謝を伝えておけばいいでしょう」

 ――高齢の独居は、不幸なのでしょうか。

 「間違ってはいけないのは、独居と孤立は違うということです。介護保険が施行されてからの24年間の蓄積のおかげで、かつては不可能だった在宅ひとり死が可能になりました。この現場の進化は、世界に誇る日本の財産だと思います。経験値が上がり、スキルがアップし、人材が育ちました」


上手に迷惑をかけるスキルを学んで

 ――自助について、どう考えればいいですか?

 「自助といえば、金で買うサービスです。金がないのを補ってくれるのは人間関係ですが、お金では人間関係を買えません。どうやって他人に助けを求めるか、そのためには自分の弱みを人に見せなければなりません。友達がいない親は、友達の作り方を子どもに教えられないでしょう。『人に迷惑をかけない大人になれ』という教育方針は完全に間違っています。『人に上手に迷惑をかけるスキルを学べ』と育てた方が、はるかにその子の生存確率を高めます」

 ――人に頼るすべを学ぶべきである、と。

 「そうです。人はずっと強者のままではいられない。勝ち抜くための教育ではなくて、弱者になった時にどうやって助け合えるかをちゃんと子どもに学ばせないといけません」

 ――家族の助け合いについて、どう思いますか?

 「これまで、家族は『自助』の範囲とされてきました。しかし、『先生、家族って共助ですよね』と教え子の東大生が言いました。これが彼らの実感です。これまで家族は一体と考えられてきましたが、今では家族もそれぞれの利害を持った『共助』。だから、家族関係を良好にしておかないと助け合えません」

 「家族の中でも、かけていい迷惑とかけてはいけない迷惑があります。なのに、ずかずかと親や子の人生に踏み込んで自分の思うようにしてかまわないと考えてきたのが、これまでの日本の家族でした。しかし、もう子どもたちは、そう考えてはいないようです。家族って共助でしょ、ってお互いを尊重しあう態度を示しているのです」(聞き手・真鍋弘樹)」


 この記事には高齢の一人ぐらいに対するヒントが記載されています。

「高齢おひとりさまの女性は貧困率が高く、男性は社会的に孤立する傾向の強いことがデータで明らかになっています。この貧困と孤立さえ解決されれば、単独世帯の増加そのものが悪いわけではありません」

 女性の貧困化と男性の孤立、この2つを解決する手法を、マンションというコミュニティを活用して、共助で助け合うことだと思います。

 住んでいる皆さんが自分事ととらえ、知恵を出し合うことで、マンションだからこそ解決できる解決方法があるように思います。


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1 comentario


すがわら えいこ
すがわら えいこ
4日前

まずは、日本の政治と日本の男から変わらなくっちゃね。

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