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空き家対策に新風。マッチングサイト「みんなの0円物件」が示す、無償譲渡の可能性

執筆者の写真: 快適マンションパートナーズ 石田快適マンションパートナーズ 石田

更新日:2021年9月17日



 2021年3月7日にライフルホームズプレスに掲載された表題の記事を紹介します。


「売る」「貸す」に加わった、「無償譲渡」という新しい選択枝

「ただほど高いものはない」。こう聞くと警戒心を抱くかもしれないけれど、それが建物や土地ならどうだろう。「どんな物件なの?」と好奇心が沸くかもしれない。   社会問題化する空き家問題。相続しても処分に困り、売るに売れず、余計なコストをかけたくないと悩む人がいる。一方で、小さな負担で新しい事業や暮らしを始めたい人もいる。その両者がつながったとき、見逃せないのが「無償譲渡」だ。札幌市の経営コンサルタント・中村領さんはそのマッチングサイト「みんなの0円物件」を立ち上げ、注目を集めている。「売る」「貸す」ではない、新たな選択肢になりつつある。  サイトでは、空き家のほか空き地、空き店舗など全国の150物件(2021年1月末時点)の情報が掲載されている。写真のほか、構造、眺望やアクセス、面積、築年、公図など関連資料、インフラ、固定資産税など必要な情報が一覧で示されている。「旭川市のアンテナ鉄塔がそびえ立つ2階建一軒家が0円」(北海道旭川市)、「海を望める高台にある、小屋付きの87坪の敷地が0円」(神奈川県横須賀市)、アピールポイントを押さえた分かりやすいワードがページに躍る。  掲載は無料。当事者同士が手続きする「¥0プラン」なら費用は発生せず、「おまかせプラン」(15万円)では、中村さんが複雑な契約⼿続きをサポートする。ただ「¥0プラン」でも実際は、引き受ける側に税金や登記費用が発生するため、サイトでは資金や制度、登記、契約といった知識を分かりやすくコラムで紹介。空き家を放置することで起こる問題や、無駄のない処分方法、活用のコツなど中村さんの体験や利用者の声を踏まえた記事もある。


きっかけは父の実家。250万円超の「マイナス資産」に不安

 中村さんがサイトを開いたきっかけは、2018年に父親がなくなり、旭川市内の商店兼住宅だった父の実家をどうするかという課題が急浮上したこと。「葬儀のドタバタが落ち着くと『ところで空き家は?』という話になりました」。試算すると、土地を売却できたとしても、解体と不用品廃棄などで250万円超の持ち出しが必要と判明。「マイナス資産を相続したと分かりました。先の見えない不安感が常に心のどこかにあり、早く解放されたいという気持ちでした」と振り返る。  仮に保有を続けると固定資産税が課され、公共料金の基本料金などもかかる。朽ちていけば近隣や景観への影響もある。そんな折、旭川市内での経営相談で創業希望者と偶然出会い、無償で譲ることになった。現在は麹ジューススタンドに生まれ変わった。  その後も中村さんは、不動産の知識などを学び、現場を見ていく中で、地方都市では一丁目一番地のエリアでも空き物件が連なり、活用したい人がいても、所有者を納得させるハードルが高く、頓挫する例を多く知ることになった。 「空き家問題は、企業支援の仕事とは切っても切り離せないものでした。中心市街地での空き家や空き店舗の大量発生は、まちのイメージ低下にもつながります。いくら精力的に事業を頑張っていても、そうした環境の影響は大きいです」と話す。


建物とともに、所有者の思いもつなげる

 中村さんは、2019年7月に「あらたな挑戦をする人たちが、0円物件等の活用により、可能な限りお金をかけずに持続可能な社会を創造していくことをサポートする」を理念に掲げ、「0円都市開発合同会社」(旭川市)を設立した。

 主要事業としてマッチングサイトを運営し、物件を手放したい人と活用したい人を全国規模で結んできた。物件数、閲覧者は右肩上がりで、2021年1月には300万ビューを達成。掲載される物件は、自身の経験と同様に相続のケースが多く、入手したい側からのニーズが圧倒的に多いという。2021年1月末時点で、掲載した150件のうち8割で成約した。  道内が拠点の中村さんが対象を全国に広げたのには、課題が全国共通であり、ネット上でマッチングする手法が通用すると考えたからだ。さらに、別の効果も表れてきた。「例えば北海道の物件に全国から問合せがあります。地域をまたいでマッチングすることで、自分たちが『利用価値がない』と思い込んでいるものも、他地域からの目で見ると違ったアイデアが出てきます」と可能性を見出している。  北海道オホーツク地方の文具店・書店を土地と営業権込みで0円で掲載した際は、希望者が相次いだものの、九州地方からの移住者との“縁談”が決まるまで一年余りを要した。所有者の思いに照らして中村さんがミスマッチのないよう間に入った。「円滑に、よい形で手放せるようサポートするのが私の役目。思い入れのある物が簡単には捨てられない人が多いように、建物も気持ちの問題が大きいですから」と、依頼者の思いや建物の記憶に寄り添った橋渡しに徹する。かつて、譲渡に至った後も放置されたケースがあった教訓から、今では契約前の段階で、使い道やスケジュールなどを確かめている。


自治体、金融機関、司法書士・・・。多様な関係者と協働

 全国でマッチングを進めていく上で、多様なプレイヤーを巻き込むことを意識している。「0円都市開発合同会社」は2020年度、国交省の「空き家対策の担い手強化・連携モデル事業」に採択されたことを受け、全国を行脚。空き家を調べ、首長や司法書士、不動産関係者らと意見交換している。「当初は自治体も半信半疑でしたが、お話しをするとこれまでにない発想に驚いて理解され、具体的な物件の情報がすぐ寄せられるようになります。そして、一度マッチングを利用してもらえると積極的に情報を提供してもらえるようになります」と手応えを感じている。  ネットワークの構築にも余念がなく、2020年12月には、旭川信用金庫と「流通促進に関する連携協定」を締結。同金庫の顧客に対してマッチング機会を提供していく。

 中村さんが「空き家問題は、建築基準法だけでなく、宅建業法、農地法、固定資産税制度など複数分野の問題が複雑に絡まっています。これらの足並みをそろえないと、円滑な流通は促進されません」と言うように、法律や制度面の壁も多岐にわたるため、多くのチャンネルからのアプローチが欠かせない。


チャレンジのハードルを下げる0円

 モノ余りの時代。不動産もその例外ではなく、特に地方部では空き家が増える一方で必要とする人は減っていく。そこに新型コロナウイルスの感染拡大が大きな価値転換を迫っている。中村さんは「コロナで、過剰に所有することの危うさや、変化への対応遅れによるリスクが明らかになりました」と指摘する。無償譲渡という新しい選択肢で、従来の不動産売買では扱えなかった物件の“流通”を活発にするのは、時代の要請ともいえそうだ。  中村さんは旭川市内で、無料で譲り受けた民家を活用したグリーンツーリズムの拠点「キャンプゼロ」を展開している。農泊ができる民家をベースとし、これまで地元の生産者が野菜などを販売する直売イベント「みんなのマルシェ」を開いてきた。敷地内の展望スポットは、電信柱の廃材や、体育館の木製はしごなどを再活用し、ほとんどコストをかけずに完成させた。コレクティブハウス構想として、農業を軸に6次産業化のための加工場機能を持たせたり、地元農家と市民が交流できる場をつくったりと計画している。中村さん自身もチャレンジを実践している。 「挑戦する人が減ったり、いなくなったりして世の中の活力が低下することを一番危惧しています。『0円』が決断を後押しして、みんなが簡単にチャレンジでき、失敗しても許容される、前向きな世の中にしたい」と中村さんは語る。ただほど夢が広がるものはない。」


 「みんなの0円物件」不動産マッチングサイトは空き家・空き地の利用策として非常に有効な取り組みだと思ます。ホームページを実際に見てみると、セカンドハウスに利用しても良いような物件も散見されます。地方移住促進による地方活性化にも、有効な手法だと思いました。


 
 
 

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