東京都は、「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」(通称:マンション管理条例)を制定し、昭和58年12月31日以前に新築された人の居住に要する戸数が6戸以上のマンションの管理組合は、5年毎に管理状況の届け出が必要です。
これは、管理不全に陥っているマンションを把握した上で、専門家等を派遣し、マンションのスラム化を防ぎ、不良資産化させないために定められた制度です。場合によっては行政による指導・勧告も行える制度となっています。
昭和58年より前のマンションが対象と定められたのは、区分所有法が改正されたのが昭和58年であり、それ以前のマンションが管理不全に陥っている可能性が高いためです。
改正マンション管理適正化法では、この東京都条例を基に、「管理計画の認定制度」が定められました。
マンションコミュニティ研究会の廣田信子さんのブログに、実際の調査の難しさが書かれていますので、以下に抜粋を紹介します。
「東京都や一部の区で、条例による「管理状況届け出制度」が始まっています。
一番の目的は、管理不全マンションの予備軍を事前に見つけ管理不全にならないようにサポートすることです。
マンション管理適正化法の改正で、今後、時間を掛けて、このような制度が、全国的に広がっていくことが想定されますが、この仕組みの根本的な問題は、支援が必要と思われる管理不全、又はその予備軍のマンションほど、届け出てはくれない。 さらに、届け出がないマンションにアプローチするが、大変困難だということです。
先日、総務省関東管区行政評価局(私はその存在を初めて知りましたが…)が、「届け出制度」がある東京都、一部の区で、支援策等の実施状況と管理の実情を調査し報告書を発表しています。
その調査の中で、自治体の協力を得て、未届けの30棟のマンションを抽出し、届け出ない理由を聞こうと試みています。
管理組合の理事長等の連絡先を把握できないので、30マンションを調査のため現地訪問したのですが、そのすべてのマンションで管理組合の役員と接触すらできませんでした。 外部の人間が、役員の部屋番号等を知る手立てがなかったのです。
30棟のうち16棟は、管理組合用ポストが設置されていたので、(逆に14棟はポストもなかったのです)調査協力依頼文を投函したのですが、後日連絡があったのが16棟のうち1棟だけでした。
また、管理員室があったのは13棟。そのうち3棟では管理員と接触ができたのですが、管理会社から理事長に連絡するよう伝えると回答を得たのは1棟だけでした。
「管理組合ポスト」「管理員室」「管理会社の連絡先の掲示」すべてがないマンションも5棟あり、そこでは、役員と接触する手がかりすらない状況です。
これまでの実態調査でも、マンション管理士の方が、戸別訪問で、何とか理事長に接触しようとした苦労話はたくさん聞いています。 一度、訪問したぐらいでは難しく、
・管理員の勤務時間帯をご近所に聞いて、 その時に再訪問した。
・住民が誰か出てくる、叉は返ってくるのを待って、 理事長が誰か聞いた。
・各住戸を戸別訪問し、理事が誰か聞いて回った。
・全住戸に連絡をくれるよう書いた手紙をポスティングした。
等々です。
しかし、最近は「個人情報」だからといって、教えてもらえないケースも増えているといいます。
理事長(マンションの管理者)が誰であるかということは「個人情報」じゃないでしょう…と言いたいですが…。 管理会社にお任せの理事長は、管理会社が連絡しても、接触したくないと逃げてしまう場合もあります。
このように、管理組合の役員が分からず接触困難な状況を、どう解決していくか…はかなりの難問です。
報告書でも、「自治体が理事長等に接触するにはより困難」と結論づけています。いっそ、その道のプロの探偵事務所に依頼する?そんなことが頭を過ぎりました。 どちらにせよ、この制度をしっかり回そうと持ったら、かなりコストが掛かることは間違いなさそうです。」
香川県でも昭和58年12月31日より前に新築されたマンションは49棟あります。中でも高松市郊外の小高い丘の上にあるSマンションは築43年の階段室型の24戸のマンションで、大規模修繕工事も1回も実施されておらず、住民は半分程度しか住んでいないような状況でした。行政の支援がないと、確実に廃墟マンションになるようなマンションも香川県には存在しています。
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