2022年6月21日の「マンションと暮らす」の表題の記事を紹介します。
「マンションの管理組合員が月々納める管理費と修繕積立金。しかし、なかにはこの支払いを滞納する人が出てくる場合も。滞納が続くと、ゆくゆくはマンション管理を進めるうえでの重要な問題につながってしまうので、しっかり対応しておく必要があります。
この記事では、管理費や修繕積立金への滞納者が出た場合の対応方法について解説します。
滞納者を抱えるマンションは全体の約1/4
マンション管理組合は「管理費」と「修繕積立金」を毎月管理組合員から集めます。管理費は共用部分の日常的な管理に、修繕積立金は大規模修繕の実施にそれぞれ使用される資金です。いずれもマンションの運営に必要な資金であり、支払いは管理組合員の義務となっています。
しかし、近年では経済不況や雇用状況悪化の影響を背景に、管理費、修繕積立金を滞納する人が増加傾向にあるとされています。資金を適切に集められなければ、本来必要となる管理や修繕を実施できなくなるかもしれないため、注意が必要です。
滞納は決して珍しいことではありません。国土交通省による平成30年度のマンション総合調査では、管理費・修繕積立金を3ヶ月以上滞納している住戸があるマンションが調査対象内の24.8%あったという結果が出ています。
修繕積立金を滞納されたときの5つの対処方
それでは、マンションに滞納者が出た場合、どのような対処方法があるのかを見ていきましょう。
【対処法1】口頭・書面での催告
管理費、修繕積立金の滞納が起きた時には、まずは理事会で報告を行なったうえで、口頭や簡 易的な書面で滞納者に支払いの催告を行いましょう。
多くの場合、管理会社との委託契約内容に滞納者への催告も含まれているので、管理会社を通じて滞納者に催告を行うのが一般的です。ただし、管理会社に任せっきりにするのではなく、逐一催告の進捗を報告してもらい、理事会でもしっかり状況を把握しておきましょう。
この方法は、滞納が始まってからの期間が浅い時期に有効です。滞納期間が短ければ、滞納額はまだ支払困難な金額ではないと考えられるので、このような簡易的な催告であっても支払が再開する可能性はあります。しかし、滞納期間が長くなり、金額が大きくなると、口頭や簡易的な書面では支払われないかもしれません。
【対処法2】内容証明郵便で催告
内容証明郵便とは「いつ、誰が誰に向けて、どのような請求を行ったか」を郵便局が公的に照明する制度です。法的手続きに踏み込む前段階の手段として広く知られているため、受け取った滞納者が事態の深刻さを理解し、支払いに応じる効果が期待できます。
また、滞納があった際に請求をせずにそのまま放置してしまうと、滞納者は「消滅時効」の援用が可能になってしまうので注意が必要です。消滅時効とは、法律上「権利を行使せずに放置した」とみなされて、権利が消滅する制度。管理費、修繕積立金の滞納の場合は、5年間請求がなければ消滅時効を援用できます。
ただし、内容証明郵便での催告を行っておけば、滞納者への請求権利行使を行った事実が公的に認められるので、時効が成立する期間の引き延ばしが可能です。
【対処法3】裁判所による支払督促
滞納者がなかなか支払に応じないのであれば、裁判所の出番です。
簡易裁判所には「支払催促」の制度があります。これは、家賃や賃金などの支払いが行われない場合に、申立人の申立てにもとづいて、簡易裁判所の書記官が相手方に支払いを命じる手続きです。この制度は書類のみで手続きができ、審理のために裁判所に出廷する必要がありません。また、訴訟を起こす場合と比較して、費用が半分程度に抑えられる点も大きなメリットと言えるでしょう。
滞納者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申し立てを行わなければ、催促する側は仮執行の申し立てが可能です。仮執行の申し立てに対しても異議が出されなかった場合、確定判決と同様の効果を得られることになり、滞納者の財産の差押えが可能になります。
書類受取から2週間以内に滞納者から異議が出された場合は、裁判に移行します。
【対処法4】訴訟を起こす
相手が全く支払いの意思を見せない場合には、訴訟を起こすしかないかもしれません。管理費、修繕積立金の滞納についての訴訟では、管理組合が原告となって提起することが可能です。
裁判を行う場合、必ずしも弁護士を立てる必要はありません。しかし、訴状の作成や裁判所への出頭に手間がかかる点や、法律上適切な主張をしなければならない点を考えると、弁護士に相談しておいたほうが得策と言えるでしょう。
滞納している金額が60万円以下の場合は「少額訴訟」を利用できます。少額訴訟は、60万円以下の支払請求について訴えを起こした際に、簡易裁判所で審理を行える制度です。基本的に審理は1回で終了し、当日中に判決が言い渡されます。
通常の裁判の場合、請求額が140万円以下であれば簡易裁判所、それ以上の金額の場合は地方裁判所の管轄となります。
【対処法5】財産の差し押さえ
支払催促や裁判で確定判決が出ても、滞納金の支払が行われない場合には、滞納者の財産の差押えができます。
差押えの対象となるのは、滞納者の勤務先に対する給料債権、滞納者の銀行預金や自動車などです。また、滞納者が所有するマンションの住戸も差し押さえの対象となります。
管理組合が進める滞納金請求の4つの手順
ここまで紹介してきた請求の方法を管理組合で行うためには、どのような手順を踏めば良いのでしょうか? ここからは請求の進め方について紹介していきます。
【手順1】理事会で話し合う
区分所有法では、共用部分の管理に関する事項は、集会の決議で決すると定められています。修繕積立金や管理費は、共用部分の管理に関わる事項ですので、滞納があった場合の対応方針は総会の場で決議を行います。
総会での決議に向けて、まずは理事会で話し合いを行いましょう。理事会では、滞納者に向けての対応方針や取り立ての方法を計画して、総会に提出する議案をまとめます。
【手順2】提出した議案を総会で決議する
理事会でまとめた滞納者への対応計画議案について、総会の場で管理組合全体の決議を取ります。議案の内容を管理組合にとっての正規の請求手順として決定するためには、総会における議決権総数の過半数の賛成が必要です。
決議を取る際には、後々トラブルが起きないように、弁護士への依頼などにどのくらい費用が必要になるかの見通しを事前にしっかり共有しておきましょう。
ただし、管理費、修繕積立金の滞納があった場合の請求について、管理規約で「理事会の決議のみで訴訟提起を行える」といったように規定されているのであれば、総会での議決は不要です。
【手順3】法的手続きを進める
滞納が始まってから日が浅いのであれば、理事会からの口頭や簡易的な書面による催告で支払いがされる可能性もあります。しかし、それだけでは支払いに応じる見込みがないとみられる場合には、内容証明郵便や支払督促、訴訟などの法的手続きをともなう手段が必要です。
法的手続きは、事前に総会で承認を得た計画に沿って進めていきましょう。
【手順4】最終手段は差し押さえ
法的措置によって確定判決が出たうえで、それでもまだ支払いが行われない場合には、財産の差押えが行えると区分所有法の第59条で定められています。
差し押さえの対象になるのは、滞納者の勤務先の給与債権や銀行預金など。また、滞納者の所有する住戸を競売にかける手段もとれます。
このような強制執行は、滞納者自身も望まないところでしょう。事態がここまでに進展する前に、滞納者が法的措置に応じない場合、どのような事態に発展するのかを早い段階で当人に知らせておけば、ここまで進行する前に支払いが行われるかもしれません。
「滞納が続くとどうなるか」を管理組合で共有しておこう
マンション総合調査の結果が示すように、滞納は意外に多くのマンションが抱える問題です。
各区分所有者の家計の事情にも左右される問題であるため、発生を防ぐのは困難かもしれません。ただし、滞納が続くと、最悪の場合財産の差押えもあり得るとわかっていれば、滞納が危険な行為だという認識をもってもらえるかもしれません。
滞納が発生する可能性を減らすためにも、管理費、修繕積立金の重要性や、滞納が起きた場合にどのような措置がとられるかといった内容を管理組合全体でしっかりと共有しておきましょう。」
管理費の滞納は多くのマンションで発生しています。支払いをうっかり忘れるのは良くあるケースですが、6か月以上続くようでしたら、早めに対応しなければ、滞納金額が大きくなり、回収できないおそれもあります。この記事にはありませんでしたが、駐車場を解約するのも有効な方法です。
管理費の時効は5年なので、遅くとも5年以内には少額訴訟や、差し押さえで法的処置をとる必要があります。事前に理事会等で対応方法を協議し、滞納が決められた時期を越えれば、機械的に対応するのが、一番良い方法だと個人的には思います。
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