2024年5月28日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。
「マンション住民の高齢化にともない、直面するのが管理組合の役員のなり手不足問題です。住民が役員を務めるのではなく、なり手を外部の「第三者」に委託するマンションも出てきました。
東京・明治神宮に近い静かな住宅街に立つ「第15宮庭(きゅうてい)マンション」。地上7階建て、35戸で、1971年に完成した。
築50年を越える、このマンションの管理組合は2021年、大きな決断をした。
マンションでは、区分所有者が組合員として管理組合をつくる。区分所有者が理事などの役員となって組合を運営。理事長が管理者となり、管理の業務は管理会社に委託するのが一般的だ。
第15宮庭マンションでは、管理者の業務そのものを外部に委託する「外部管理者」方式をとることにした。現在も管理組合はあるが、理事はいない。管理者はマンション管理士の瀬下義浩さん(62)が務める。
高齢化が進むマンションでは、理事のなり手不足に陥ることも多い。年数や状況に応じて管理の見直しを進めようにも、専門的な知識がないと難しい。
「法律に強く、知識も、業者などとの人脈もある人に管理者をしてもらうことは、リスクヘッジにもなる」。区分所有者の赤松初日(はつひ)さん(38)は話す。
瀬下さんの業務執行や会計処理などに問題がないかを監査するため、3人の区分所有者が監事となる態勢に変更。赤松さんが筆頭監事に就いた。瀬下さんを交えて監事会を月1回開く。
外部の専門家である瀬下さんへの報酬は毎月11万円。エレベーターなどの維持管理に入る業者や保険などを見直し、月々の管理費などを上げることはせずに対応しているという。
外部管理者方式をめぐっては、外部の管理者が、自分たちに都合がよい管理規約にしてしまったり、管理組合のお金を不当に使ってしまったりという懸念もある。
管理組合の口座の通帳は瀬下さんが保管しているが、届け出印は赤松さんが筆頭監事として保管。押印した「支払い指示書」に基づいて瀬下さんが支払いなどを手続きしている。
管理規約も、区分所有者でも第三者でも管理組合の役員に「なれる」という規定にし、瀬下さんなど特定の人や団体が「なる」という規定にはしていない。
日本マンション管理士連合会は、管理士らの能力を向上するため、17年から試験を伴う「認定マンション管理士」制度を始めた。同会の会長も務める瀬下さんは「安心して第三者管理を利用していただける取り組みを進めていきたい」と話す。
■「管理会社が管理者」も想定 国ガイドライン改訂案
国土交通省は16年、標準管理規約を変更して住民や所有者以外の「第三者」が役員になる場合について記載。17年にはガイドラインを作成した。
近年増えているのは、マンション管理会社が管理者になるケースだ。マンション管理業協会の調査によると、管理者業務を「受託している」「受託を検討している」と回答した管理会社は167社(23年)で、20年から約3割増えた。管理者業務を受託している管理会社のうち、理事会を設置しない方式をとっているのは約7割にのぼった。
住民の負担軽減になる一方で、管理会社が管理者になり、工事を関連会社に相場より高く発注するなどの問題も起きている。国交省は今年3月、管理会社が管理者になる場合も想定したガイドラインの改訂案を公表した。
改訂案では、管理者の業務を監査する「監事」を設け、区分所有者とマンション管理士などの専門家から少なくとも1人ずつ選ぶとする。管理会社の関連会社との取引などについては、総会で承認を得る必要があるとした。
管理者の任期は原則1年程度とし、毎年開催する総会で選任決議をする。また、交代しやすいよう、管理規約には管理者の固有名詞を記載しないよう求める。月内にもガイドラインを公表し、運用を始める。(山田史比古、石川春菜)」
35戸の小規模マンションでも、管理費を上げることなく、第三者管理に移行できたことは驚きです。火災保険の見直しやエレベーターの維持管理費用で外部理事長への報酬が賄えるのであれば、理事のなり手不足の高経年マンションでも、第三者管理がますます増えてくるように思います。
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