前回に引き続き総会議案書のお話です。
マンションコミュニティ研究会の廣田信子さんのマンションブログの内容を紹介します。
「総会が近づき、総会議案書づくりの真っ最中の管理組合も多いと思います。ぜひ、議案書は丁寧に作ってくださいね。特に、新しい提案、変化を伴う提案は、これまで、十分な合意形成のステップを踏んできたと思っても、その集大成として、議案書にすべてを書くことがとても大事です。
絶対に書くのを忘れないでもらいたいと思うことの一つが、そもそも、なぜこの検討を始めたかというきっかけです。そう強く思わされた事例があります。
ある総会でのことです。 その総会では、使い勝手が悪い駐輪機の入れ替えの提案がありました。理事会としては、アンケートも広報もちゃんとして、きちんとステップを踏んでの提案だったのですが…
最近入居した組合員から、管理会社の売り上げを増やすための提案を無自覚に実施していたら、修繕積立金がなくなってしまう。これは無駄な支出だ。との批判があって、話は、駐輪機のことを離れ、管理会社批判と修繕積立金の問題になってしまって、会場は不安な空気に包まれました。
その結果、委任状・議決権行使書は集まっていて決議ができたのに、採決が見送られました。その発言に対し、理事がきちんと対応できなかったのが問題です。
そもそも、駐輪機入れ替えの検討は、3年前の総会で、駐輪機が使いにくいので何とかしてもらいたいという声が複数の組合員から出たことがきっかけで始まったものだったのです。 ところが、毎年、理事が変わるので、今期の理事の方々は、前期理事会からの課題の引継ぎと、管理会社の提案がすでにあったところから検討を始めているので、そもそも、総会での組合員の要望から始まったということを理事が誰も認識していなくて、きちんと説明できなかったのです。
総会の数少ない出席者の中でも、そのことを覚えていて発言してくれる人はいなかったのです。管理会社の担当者は、わかっていたでしょうが、思いもかけないことで管理会社批判が展開されている中で、火に油を注ぐようなことは言えなかったのでしょう。
で、結局、この提案を批判した新組合員の声が、通ることになってしまったのです。
このことが、総会後大問題になります。
3年前の総会で駐輪機の入れ替えを要望した人たちは、今総会の議案となったことで安心して、賛成の議決権行使書を提出して、総会には出席していなかったのです。
総会後、なぜ採決しなかったのか、3年もかかってようやく実現するはずだったの…と
大問題になりました。
しかも、通常総会で採決しなかったつけは、新たに輪番で理事になって新理事に回ってきます。 困った新理事からの相談で、私がこのことを知るに至りました。
そのときの総会議案書を見て、私は、これじゃだめだ~と思いました。
来期、駐輪機の入れ替えを行うということと、管理会社からの見積書しか入っていないのです。過去の理事会議事録、広報等を見ると、3年かけて(3年もかかって)いろいろやっています。それなのに、議案書には、総会での声を受けて検討を始めたということも、実際にアンケ―トを実施したら、不便だ、危ないという声が高かったことも、いろいろな方法を提案してもらい比較検討したことも、理事会だよりで経過を報告してきたことも、何も書かれていないのです。
もし、そのことがきちんと議案書に書かれていたら、新組合員から、あのような発言は出なかったのではないでしょうか。 もし、発言があっても、理事がきちんと回答することができ、自信を持って採決ができたはずです。
特に、総会での組合員からの要望で検討を開始したことが、しっかり語られなかったことが、こうなってしまったことの一番の原因だと思います。
過去のいきさつや、これまでの過程は、誰も、しっかり覚えていないのが当たり前と思って、すべて振り返って、議案書にきちんと記載してくださいね。
特に、理事が輪番制一年交代で総会出席者が少ないと、こういうことが起こります。
実際、このとき、回答できなかった理事さんたちは、全員、3年前の総会には出席していなかったそうです。で、過去を知らない新組合員が、あの議案書を見て、いいかげんな検討で提案したのでは…と思うのも無理からぬことだと思いました。
まあ、3年前に要望した組合員の方には、総会に出席して、きちんと発言してもらいたかったな~と思いますが…。」
確実なのは、少し手間はかかっても、しっかり過去を振り返って整理し、すべての重要な情報を議案書に込めるということです。 そうすれば、理事も自信を持って総会に臨めるはずです。」
ここにも、前回話した議決権行使書の弊害が出ています。議決行使書で意思表示したから、総会に出席しないでいいと思い、総会の場で、声の大きい人の意見を尊重したために、このような結果になってしまった訳です。私がいま顧問を引き受けている管理組合は、総会議案書の最後に、組合で長期に渡って解決すべき問題が、長期的課題として、きちんと記載されています。このように文書で残し、毎年1回の総会で、進捗状況を確認することは、住民の目線をそろえるという意味でも、大切なことだと思います。
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