先日の相談会で、玄関ドアの内側は専有部で外側は共用部だが、玄関ドアすべてを専有部に変更することは可能か?という相談がありました。聞けば、2回目の大規模修繕工事で玄関ドアの交換を検討しているのだが、玄関ドア交換費用が高額なため、専有部であれば各個人が費用を出して希望者のみ変更しても良いのでは?と考えたとのことです。
マンション管理士の試験に出てくるような話で、返答に困ったのですが、まずは共用部の定義から考えてみたいと思います。
マンションの共用部には、実は2つの共用部が存在します。一つは「法定共用部」というもので、区分所有法に定められている建物の部分や設備のことです。 玄関ホール、廊下、階段、エレベーター、屋上、給排水設備、消防設備、電気配線などが 法定共用部分 に該当します。 この共用部は、法律で定められた部分であり、専有部には変更できません。例えば廊下や階段が専有部に変更され他人に転売されると、他の入居者は自分の部屋に行くこともできなくなります。
もう一つは「規約共用部」というもので、管理組合の管理規約によって共用部分とすることのできる部分です。 集会室・管理事務室・地下駐車場・倉庫などの本来は専有部分とすることのできる部分、屋外の倉庫などの附属の建物などが 規約共用部分 です。この規約共用部は、マンションの管理規約で共用部とされた部分であり、規約を改正すれば専有部として、他の区分所有者に販売することも出来ます。仮に、1階部分にキッズルームがあった場合、管理組合として不要ということになれば、管理規約を改正して、店舗にして販売することも出来ることになります。
結果として、玄関ドアの外側は、やはり法定共用部分になると思います。このドア全てを専有部とした場合、住戸内の専有部と、共用廊下の共用部のどこが、占有部と共用部の境になるかという問題になります。専有部と共用部を明確に区別するためにも、玄関ドアや窓サッシ部分を共用部に指定しておかないと、区分けが出来なくなります。
相談者には、外部に面するドアを勝手に個人が替えると、色やデザインもバラバラになり、外観の変更ということで、特別決議が必要になりますよ。とアドバイスしたのですが、どうもピンときていないようでした。マンション管理士の教科書にも載っているような内容ですが、改めて質問されると、逆に回答に困るような相談でした。
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