2024年3月27日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。
「マンションの「三大トラブル」
マンション「三大トラブル」といわれている、「騒音」、「喫煙」、「ペット」問題。
喫煙やペットに関しては、管理規約や使用細則のルールに基づいて規制することができるため、大きなトラブルに発展する前に解決できますが、騒音トラブルは、管理組合、管理会社も踏み込んだ対応ができないこともあり、そのため住民の不満も相まってご相談が多く寄せられています。
分譲マンションの壁の厚さや間取りは、賃貸物件よりも建設コストをかけて作っていることが多く、一般的には遮音性能は優れています。
実際に、人の声やペットの鳴き声、テレビなど空気振動で聞こえる音の大部分は、コンクリート壁や気密性の高い窓サッシによってほとんど聞こえません。
ところが、上階に住んでいる住人のドアの開閉音や子供が走り回るドタバタとした足音、椅子や家具を引きずる音のような、床や壁から直接伝わる“固体伝播音”は意外と聞こえやすいものです。
上階の生活騒音は、一旦気にかかれば常に煩わしく思ってしまい、その結果、体調不良を起こすなど普段の生活に支障をきたすことがあります。
騒音の苦情は、まずは管理会社に電話を入れるか、「上階の住戸のお子さんのドタバタ音がうるさい。どうにかしてほしい」といった意見書を投函して管理組合に改善を求めるのが一般的です。
管理組合はその要請に応じて理事会で決議をはかったり、理事長の判断で注意文を全戸配布、または掲示します。それで、少しの間は収まることがありますが、しばらくすると再び騒音が発生するので長期間の効果はまず望めません。
騒音元の特定は慎重に
全般的に言えるのですが、トラブルが起こった時は直接注意喚起をするなどして、騒音元の居住者に納得してもらう方法が一番効果的ですが、それを特定することはとても難しく、「絶対にこの家だ!」と思って注意をしても、実は誤っている場合もあります。
それどころか「名誉棄損だ!」「言いがかりだ」などと言われ、裁判沙汰の大きなトラブルになるケースも少なくありません。
先日、私のもとにきた相談事例でも、こんなトラブルがありました。
都内のタワーマンションの住民から「〇×号室の子どものドタバタ音がうるさい」という苦情が届き、理事会も管理会社も事実確認をしないまま騒音元といわれた居住者に注意文を投函しました。さらに加えて、理事会議事録にその居住者の部屋番号も記載して全戸配布したのです。
騒音の音源元と言われた居住者からは、「確かに子どもは二人いるが、防音対策もしているし、しつけを厳しくている」、「妻は幾度のいわれなき注意文と議事録で精神的にまいっていて通院しており、現在、法的措置を検討していて弁護士に相談をしている」と連絡がありました。
後日、騒音元とされた居住者の弁護士から、苦情を入れている居住者へ子どもの足音が聞こえた日時の記録を求められ、書面で提出した記録と、ご家族の行動記録と合わせたところ、ご家族が何日間か不在していた期間も騒音被害があったことが判明したのです。
騒音の濡れ衣を着せられたご家族は弁護士を通じ、苦情を入れた住民と管理会社、理事長に対して謝罪文に顛末書を添えて全戸配布するよう要求し、理事会などもそれに応じることで最終的にはまとまりました。
このように、大きなトラブルに発展する騒音元の住戸の特定は、きわめて慎重に行わなければなりません。
こういった騒音トラブルによる、住民同士のいざこざは後を絶ちません。
このタワーマンションの場合は、管理会社も関与していますが、通常は騒音元の特定やその居住者に直接の注意は行いません。管理会社や理事会が行うのは、注意喚起のチラシのポスティングや掲示などの一次対応のみで、通常は「それ以上は当事者間で解決してください」という回答です。
ですので「それが一般的な管理会社の対応なのか」というご相談は本当によくあります。
ではなぜ、管理会社も理事会もトラブルに一歩踏み込んだ対応をしてくれないのか。
「マンション内のトラブルは「民事不介入」
じつは管理組合が管理会社と結んでいる、管理委託契約書では、『居住者間のトラブルの解決』の規定はありません。国土交通省が公表している『マンション標準管理規約書」でも、理事長が、共同生活の秩序を乱した者に対応する規定はありますが、居住者同士のトラブル仲裁や解決の対応はないのです。
つまり、管理会社も管理組合も警察と同じように、トラブルに関する問題は原則「民事不介入」なのです。
築年数の経過したマンションの管理組合では、世話好きの親切な理事がトラブルの仲裁を行う場合や、中小の管理会社などでは時々きめ細やかに対応してくれることがあるようです。
これらは、うまく解決できればいいのですが、特に築年数の経過したマンションでは世代間でも価値観が違うため、以前に<ストーカー化した「ハラスメントを理解できない老人たち」が大暴走…築40年「高齢者マンション」で起こった惨状の一部始終>で紹介したような、トラブルに発展する可能性もあります。
こじれてしまうと非常に厄介なため、最近の新しいマンションや大手の管理会社に管理を委託している管理組合では、そういった面倒なことに巻き込まれために、専有部分で起こる「居住者間のトラブルは、当事者間で解決する」と使用細則で規定しているところが多くなっています。
とはいうものの、騒音やニオイの問題で困っている居住者を見て見ぬ振りもできません。そこで管理組合や管理会社は、貼り紙、投函という初期対応だけ行い、その先は「当事者同士の解決」として一歩も踏み込まないのが主流になりつつあるので一般的です。
そういった事情から、最近では弁護士やマンション管理士に解決を直接依頼する居住者も増えています。
警察沙汰になり得る場合も
千葉県のとあるマンションの例では、騒音問題の当事者双方を理事会に呼び、便宜を図ろうとしたところ、結果的に「火に油」を注ぎ、理事会や理事長にその矛先が向けられました。
朝晩飛んだり跳ねたりする“ドタバタ音”を不快に思った、下階(被害者)の妻が、上階のご夫婦に「これでも読ませて少し静かにさせてください」と、高級な絵本数冊を放り投げたのです。
それを見た理事長が「まぁ、冷静に話しましょう」と言った途端、上階の妻は「何よ、理事長だからと偉そうに!」と言い放ち、理事長個人の悪口、理事会への不満、マンションの不満などをまくしたてて集会室を出て行き、結果2ヵ月ほどで上階の夫婦は引っ越ししていったそうです。
さらに、直接注意がこじれて傷害事件に発展する多く事例もあり、警察沙汰のトラブルにも発展しています。
騒音に耐えられなくなり、注意するときには怒りが爆発し、大声で怒鳴ったり、威嚇したりして恐怖を与えて110番通報されて事件になった例。
騒音を出していると勘違した下階の居住者が、天井を長い棒で「ドン・ドン!」と突いて、「うるさい!」警告。上階の居住者が110番通報して警察官が出動した例。
音源元の住戸に直接注意したところ、玄関前にゴミを捨てられて嫌がらせされた事例…さまざまです。
警察は、「民事不介入」が原則ですが、騒音での相談は多くあるようで、ほとんどが「管理組合、管理会社にご相談ください」と回答されます。
しかし前述のように、管理会社と管理組合は原則、直接交渉はしないため、どうしても警察が頼られてしまうのでしょう。
集合住宅だからこその気遣いを
「隣の住戸から電動工具を使って、室内を破壊しているような大きな音がする。壁に穴をあけているのかもしれないが、原因が分からず、不安で眠れない。管理会社に調査するように言ったが対応してくれない。隣の住戸の室内の確認をしてほしい」
高級マンションにふたりでお住まいの高齢のご夫婦から、以前にこういった相談がありました。
聞けば、「隣の住人は最近引っ越してきたのは独身男性のようだが、引っ越しの挨拶にも来ていないので、どのような人かまったく分からない」とのことで、依頼を受けた私が対応にあたりました。
インターフォン越しに訪問の理由を説明したところ、物腰が柔らかな男性が出てきて、お宅にお邪魔することになりました。
じつはその男性は建築デザイナーで、部屋を思い描くイメージに仕上げるために、電動工具を使って木を切ったり、ネジを締めや塗装をしていたということでした。
「思い通りにならず何回も作り直して。その騒音でご迷惑をおかけした」と平謝りで、依頼を受けた高齢のご夫婦を招き事情を説明したところ、騒音の原因が呑み込めたようで笑みがこぼれていました。
ご夫婦は、隣の部屋を見るまでは、躯体に穴をあけているのだろうとか、中の鉄筋が切れて、地震の時は自分の部屋に被害が及ぶのではないのかと心配で安眠できない日々が続いたそうです。
男性とご夫妻は、このトラブルをきっかけに、良き隣人同士になったそうですが、必ずしも丸く収まるとも限りません。
上下階で発生することが多い騒音のトラブルを防止する対策としては、マンションの消防訓練や炊き出し訓練、クリスマス会等のイベントで居住者のグループ分けを行う時に、フロアー(階数)別ではなく、マンションの上下階の居住者が同じグループになるように縦列で分けるようにすると効果が高いといわれています。
具体的には、201号室・301号室・401号室…のように、号数別でグループ分けをすることです。上下階の居住者がお互い顔見知りになっていれば、全然知らない人と騒音や漏水事故トラブルが発生する場合に比べて、顔見知りなら大きなトラブルは減るでしょう。
このような取組をして騒音の問題ばかりではなく、上下階の漏水の問題がスムーズに解決したマンションも多くあります。子供のドタバタ音は、たとえ裁判で勝ったとしても収まるものではありません。お子様のいる家庭では、床にコルクマットを敷くなど防音対策を行うなどが必要です。マンションは集合住宅です、お互いに配慮した生活が望まれます。」
この記事にあるように、住民間の争いには、基本的に管理会社も管理組合も、マンション管理士も介入しません。個人間の仲裁業務は弁護士の業務内容であり、逆に他の業種の人間が介入すれば、弁護士法違反になります。また、この記事にあるように、理事会が組合員からの苦情を信じ、被害を訴えられた組合員からの意見聴取をせずに、一方的に他の組合員を非難したのは、大きな間違いでした。
理事会で出来るのは、ルールを定めることです。双方から意見を聞き、例えば夜10時以降は、走り回らない等の住まい方ルールを定めることが、理事会の限界になります。ルールを定めた後は、ルールを守らない住民に対しては、理事会として注意を与えることは可能です。
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