2021年6月10日の廣田信子さんのマンションブログを紹介します。
「組合員が、管理組合の文書や資料の閲覧請求をし、そのコピー(謄写)を求める裁判例はいくつかあります。改めて、閲覧・謄写について確認すると、区分所有法では、規約や総会議事録の閲覧を拒んでならない(第33条2項、第42条2項)としています。
これは皆さんよくご存じだと思います。
ただし、会計資料の閲覧や、謄写についての規定はありません。 標準管理規約では、それを補い、以下のような規定になっています。
会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿、その他の帳票類を作成保管し、組合員及び利害関係人の理由を付した書面による請求があった場合は、これを閲覧させなければならない。ただし、閲覧については相当の日時・場所を指定できる。
区分所有法より閲覧できる書類等の範囲を広げています。当初は、区分所有法と同様、謄写に対する規定はありませんでしたが、現在は、3項で、請求した者が求める情報を記入した書面を交付することができる。その費用は請求者に負担させることができる。が入っています。
コピーの求めに応じて、相手に費用負担をさせた上で、書面を相手に渡すことができる…となっているのです。
渡さなければならない…じゃなく、渡すことができる…ですから、拒むこともできる訳です。さらに、古い規約では、3項の謄写に関する規定が入っていないものも少なくありません。
裁判所は、
(東京高裁平成12年11月30日判決)
区分所有者に帳簿、原資料の閲覧謄写請求権を認めるかどうかは、団体の規約によって自主的に定められるべきものである…と言う理由で、謄写請求権について規約に明文の定めがない場合、謄写請求権を認めないと判断しています。
しかし、それでは、資料の分析もできないし、不正等の証拠も入手できない…それでいいのか…と思う方もいるでしょう。
そこで、じゃあ、デジカメやスマートフォンで撮影はしてもいいのか…という話になります。
それに関して裁判所が示した判決があります。
(名古屋地裁令和元年10月25日判決)
細かい話は省きますが、裁判所は、指定する文章について、謄写や写しの交付請求は棄却しましたが、管理組合の事務所における閲覧の際の写真撮影を認めました。
これは、結構大きいことだと思います。
コピー(謄写)作業は大変ですし、ファイルから外した際に、紛失、破損の可能性もあります。今は、写真が、簡単に、しかも鮮明に撮れますから、資料の写真撮影ができるなら、充分に目的を果たせると思います。だったら、コピー(謄写)を積極的には認めない規定でも民主的な運営に反することにはなりません。
ただ…知人と話していて、でも、写真って、使い方を誤ると、ちょっと怖いかも…。 もし、管理組合運営に何か問題があったら、その証拠写真が、あっという間に拡散しそうで…と。
もし、大きな不正があった場合は、しっかり正さなければならず、その実態を組合員に知らせるには、証拠となる写真は有効でしょうが、管理組合運営においては、過去に遡ると、多少の問題が埋もれていることも少なくありません。
大勢に影響がない細かなミスまで問題にして、管理組合を混乱させることがなければいいが…と少し心配な気がします。
何でも写真撮影しSNSにアップする時代ですから。
そんなことではがなく、管理組合の資料の撮影という手段は純粋に民主的な活動のために使ってほしいと思います。」
大規模修繕工事や管理会社変更のための現地調査では、図面や契約書・総会議事録・点検実施記録等は、以前はコピーだったものが、最近は携帯電話の写真で代用するケースがほとんどです。管理組合もコピーのために図面や書類等の貸し出しはNGですが、写真撮影に対しては何も言いません。現地調査では図面等の書類以外でも、マンション内の写真を多く撮影します。
ネット社会の進展で写真データが簡単に拡散されるようになってきました。今後は撮影した写真についても、廃棄処分の徹底や第三者への漏洩禁止等の通知が必要だと痛感しました。
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