
分譲マンションでは、収容人員数が50名以上、店舗など併設している場合には30名以上のマンションにおいて防火管理者の選任が義務づけられています。防火管理者は消防法によって定められた制度で、火災の発生を未然に防止し、万一火災が発生した場合には、その被害を最小限にとどめる役割を担っています。
ファミリー用マンションでは、1部屋4人で算定されるので13戸以上のマンションであれば、防火管理者を選任する必要があります。
防火管理者の業務は、①消防計画の作成②防火訓練の実施と消防署への届け出③マンション内の巡回点検の3つの業務があります。
消防計画の作成
消防法第8条では、管理権限者(マンション管理組合の理事長)はマンションの防火管理者を選任し、防火管理者をして消防計画を作成させ、これを所管の消防に届け出なければならないと定めています。
マンションでは防火管理者がきちんと選任され、消防計画が作成されていないと法律違反になり罰則を受ける場合もあります。消防計画については、マンション固有の避難経路や消防設備などの内容を具体的に盛り込み、実際の火災発生時には、きちんと運用できることが重要です。
消防訓練の実施
消防法では、マンションなどの共同住宅では、少なくとも年1回以上、消防避難訓練を実施するものとされています。消防避難訓練は、火災や地震の予行演習という意味とともに、マンションの居住者が実際に顔をあわせて、マンションの防災対策について考える良い機会です。理事会としては、避難訓練の内容を工夫して、できるだけ多くの住民に参加してもらうようにする必要があります。形式だけの訓練ではなく、実際の消火設備を見て回ったり、非常食の炊き出しを行うなどのイベントを行うことで、参加者を増やす必要があります。
マンション内の巡回点検
マンション内を定期的に巡回して、避難通路に障害物が置かれていないか確認したり、消防設備点検の業者から提出される報告書に目を通し、指摘事項があれば理事会等で解決策の検討を行います。
実際にマンションの防火管理者がおこなう実際の業務としては、管理会社の担当者から渡された点検報告書に目を通して押印したり、年に一回程度マンションで実施している消防訓練の際の進行役を務めることです。いずれにしても管理会社からの指示に従って業務をおこないますので、消防設備等に関する高度な専門知識までは必要とされていません。
防火管理者には資格が必要
防火管理者になるためには資格が必要です。防火管理者資格を取得するには、消防署が主催する講習に、主に平日に2日連続して参加する必要があるため、仕事を就いている方にとっては講習を受講するのは大変な事です。
こうした講習を受ける手間や、防火管理者としての責任もありますので、防火管理者は敬遠されがちです。そこで、管理組合では防火管理者に対して「講習の経費」や「一定の報酬」を設けることが一般的です。
マンションの防火管理者は、管理組合の役員とは異なり講習を受けて資格を取得することが不可欠です。また、防火管理者は「住人の安全を確保する」という重大な役割があるので、役員の選任とは異なり、防火管理者は輪番で決めるべきものではありません。
こうした事情もあって、防火管理者のなり手が見つからない場合には資格取得のための受講料のほか、防火管理者手当として年間3万円程度の報酬を設定するマンション管理組合も多いようです。非常に重要な役割をもったマンションの防火管理者ですから報酬を支払うことは必要なことだと思います。なお、防火管理者に報酬を支払う場合には、報酬手当の額を定めた「防火管理者に関する細則」を作成した方が良いでしょう。
防火管理者の外部委託も
高齢化がすすむマンションはもちろんのこと、賃貸人が多いマンション等では、防火管理者の成り手がいないマンションも増えてきています。マンションでは万が一の災害に対して準備をしておくことが重要ですので、こうしたマンションでは防火管理者を外部委託することも増えてきています。
最近は管理会社で、防火管理者の外部委託を受けてもらえるケースも増えてきています。
どちらにしても、マンションの防火管理者は重要な役割を持った人になります。マンション内に管理組合の下部組織として防災委員会等を組織し、防火管理者には、防災委員会の責任者として、積極的に活動してもらうことが、今後もますます重要になってくると思います。
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