2022年1月20日の日経クロステックの表題の記事を紹介します。
「朝鮮半島の南西部に位置する韓国光州市の中心部で2022年1月11日午後4時前、建設中の鉄筋コンクリート(RC)造39階建て高層マンションの一部が崩落する事故が発生した。22年1月18日正午時点で作業員1人が死亡、5人が行方不明のままだ。複数の韓国メディアによると、マンションの38階から23階までの壁や床などが崩れ落ちた。崩落の原因は分かっていない。
マンションを施工していたのは韓国の建設大手HDC現代産業開発だ。21年6月にも、光州市内で建物を解体中に死傷者17人を出す倒壊事故を起こしたばかり。同社の鄭夢奎(チョン・モンギュ)会長は22年1月17日、辞任を発表した。
光州市は22年1月12日、同社が市内で進めている全ての工事について中止命令を発出。同月13日には「安全性の確保なしに工事を再開することはない」と発表した。市は崩落事故を起こした現場について、専門家による調査を実施し、建物の安全性が確保されないと判断した場合は解体したうえで再施工するプランについても検討するとしている。また、市が推進する事業において一定期間、HDC現代産業開発を参加させない措置を検討するとした。
韓国光州市で建設中の高層マンションで、外壁や床スラブなどが崩落した(写真:Yonhap News Agency/共同通信イメージズ)
現地では、養生期間を十分に確保せずにコンクリートを打設していたことが崩落につながったとの見方が強まっている。韓国大手紙の中央日報は、「建設現場周辺では『5日ごとに1階ずつ積み上がるように見えた』との証言が出ている」などと報じている。
日本の専門家は事故をどのように見ているのか。コンクリートの材料特性やRC構造物の劣化メカニズムに詳しい東京理科大学の今本啓一教授も、施工不良が崩落の原因となった可能性があると指摘する。
今本教授は、崩落前に39階の床スラブを打設する様子を捉えたとされる映像から、次のように推測する。「打設中のスラブが沈む様子が見て取れる。支保工などがかなり不十分な状態でコンクリートを打設していたのではないか」
また、崩落箇所の下部を捉えた写真から次のように指摘する。「硬化したコンクリートから鉄筋を引き抜くのは容易ではないが、写真を見ると鉄筋がきれいに抜けている。コンクリートの強度が極めて低い状態で施工を続けていた可能性がある」(今本教授)
さらに今本教授は、崩落後のマンションの写真から、こう推測する。「外壁は仕上げをしたように平滑だが、吹き付けなどの作業をした痕跡は見られないため、打設したコンクリートが剝き出しになっていると考えられる。しかし、表面にセパレーターの穴が見当たらない。明らかにプレキャスト工法ではなさそうなので、スリップフォーム工法(自昇式の型枠足場を用いた工法)を採用していたと考えられる」」
コンクリートは打設してから水分の蒸発とともに硬化していき、一般的には28日(4週間)で必要な強度が出ます。それよりも早く強度を出す早強コンクリートもありますが、早強コンクリートを使っても、設計上必要な強度が出るまでには7日間程度が必要です。記事を見ると1フロアーを5日程度で施工していたとのことであり、コンクリート打設中の衝撃を硬化が進んでいない下階のコンクリートが支えきれず崩落したものだと思います。日本のマンションは1フロアーの施工は一般的には14日(2週間)です。コンクリートの強度が出るのが28日(4週間)なので、下2層部分にポストを設置し、補強しながら上階の施工をすることが一般的です。また記事のような5日程度のピッチで施工をする場合は、柱・梁とも工場で製作したPC(プレキャストコンクリート)部材を用いて施工することが一般的です。
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