大規模修繕工事を実施するに伴い、コンサルタントや施工会社の候補を、入居者の紹介から募る「館内公募」という方法があります。かつては多くのマンションで行われていた方式ですが、最近は少なくなってきています。
館内公募は入居者の知り合いの設計事務所や建設会社から選定するので、変な業者が入ってこなくて、逆にいいのでは、と言われていたのですが、逆に、入居者の紹介ということで、変に遠慮して断れなかったというケースも多々あります。その業者が、信頼性のある良い業者ならいいのですが、全く大規模修繕工事の経験のないような業者だった場合には、悲惨なことになります。
また「施工業者を紹介した住人がバックマージンを受け取っているのではないか」と不信感を抱く組合員が出てくる可能性もあります。最近は、理事会役員にも利益相反の倫理規定が求められ、自分に利害関係のある業者の選定には、関われないというマンションも多くあります。
以前聞いた話では、マンションの大規模修繕を行ったこともない、一戸建ての外壁を改修するような業者に、館内公募で工事を頼み、コンクリートのひび割れ補修等も実施せずに工事を行ったため、工事実施後に、また大規模修繕工事をやり直したという話もありました。結果、その業者を紹介した入居者は、マンションにいられなくなり、転居したそうです。
また、理事長が自分の知り合いの業者に施工させたいために、まったく大規模修繕コンサルタントの経験のない設計事務所にコンサルタントを依頼し、その仕様書と見積もり明細では、見積もりができないと、多くの業者が見積もり辞退をしたケースもありました。
最近でも、まったく聞いたこともないような施工会社が大規模修繕工事を行っているマンションがあったので、修繕業界の人間に聞いたところ、入居者からの強い推薦で、決まったというような話を聞きました。最初から意中の業者に落札させるためにコンサルタントに頼むのですから、明らかに出来レースです。担当しているコンサルタントも、大規模修繕のコンサルタントはやったことのないような設計事務所でした。
出来レースで公平な競争が行われず高い金額で発注するのも問題ですが、技量不足の会社にコンサルタントや施工を頼むのは、管理組合にとっても最悪の状況です。
どうしても知り合いの業者がいないというのであれば、設計コンサルタントは各県のマンション管理士に紹介してもらい、建設業者は各県で発行している「建通新聞」等で公募する方が安心だと思います。
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