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  • 執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

高齢化社会のマンション問題 合意形成が100%得られる“知恵”とは? 

更新日:2023年3月28日



 2022年9月8日の週刊朝日の表題の記事を紹介します。



西京極大門ハイツ(2016年撮影、提供=西京極大門ハイツ管理組合法人)


 建物と住人、二つの老いが進む中で、これからのマンションには先を見据えた計画がいっそう必要となる。どんな視点で計画を立て、どのように管理していくべきか。建て替えまで見据えた綿密な計画を立て、知恵を絞って再生につなげている京都のマンションに足を運び、秘訣を探った。

 京都市右京区、最寄り駅から徒歩10分ほどの住宅地にある築46年の分譲マンション「西京極大門ハイツ」。鉄筋コンクリート造7階建て、全190戸の決して新しくはないマンションだが、業界ではちょっと知られた存在だ。

 管理会社に管理業務を委託しているマンションが圧倒的に多い現在、西京極大門ハイツでは築12年目、1987年に「管理組合法人」を立ち上げ、区分所有者である住人たちの手で自主管理を行ってきた。その中で培われてきたのが、「自分たちの資産は、自分たちの手で守る」という強い意識だ。

 きっかけは、1回目の大規模修繕工事の時だった。最初の10年は管理会社に管理業務を任せていたが、いざ工事の段階になった時、積立金が必要額の1割もたまっておらず、金融機関の融資でしのぐ苦い経験を味わった。「二度と同じことを繰り返すまいと思った」(西京極大門ハイツ管理組合法人・佐藤芳雄理事長)と、この経験が転機となり、管理組合を法人化し、自主管理の道を選ぶことに。同時に、建物の老朽化を克服し、長く住み続けられるマンションにするために、修繕計画にとどまらない「総合計画」が必要だと考えた。

 そこで策定されたのが、長期修繕計画の発展形ともいえる「まちづくりマスタープラン」だ。最初に策定されたのが91年、築16年目の時に作られた20年計画で、20年後には高齢の居住者が増えることを見据え、どう組合運営をしていくのかを一冊にまとめた。長期計画ゆえに、物価の変動も考慮し、過去10年間の物価上昇率を踏まえ、3.5%の物価スライド制を採用。10年ごとに修繕積立金を改定する仕組みも導入した。



91年に策定された最初のマスタープラン


 特筆すべきは、こうした計画を全て住人の手で作っていることだ。計画を練る際に専門家の意見を聞くこともあるが、何をどう進めていくかを決めるのはあくまで自分たち。特に専門的なことに詳しい人がいるわけではなく、実際に最初のマスタープランを立てた際のメンバーは、めっき工場勤務、呉服店勤務、菓子店勤務、染め工場勤務、税理士事務所事務員、役所勤務と、いわば“畑違い”の6人だった。

「自分たちのマンションを、これからどうしていくのかということを、自分たち以上に真剣に考える人はいません。何より所有者目線でマンションを運営していくことが、長く住みやすい住まいづくりにつながると思います」(佐藤さん)

 これまでに3回の見直しを経て策定されたマスタープランは、総会議案として全会一致で採択されてきた。プランは実行してきた取り組みの振り返りに始まり、区分所有者の状況、売買価格の推移、将来の人口動向予測などまで網羅し、見直しのたびに住民向けに説明会を開催して意見交換の場も設ける。このプランが軸となり、財政の見直しに始まり、将来の建て替えに備えた用地取得、地域との交流の場となるコミュニティーカフェの開設、子育て世代の入居を促すための施策など、さまざまな取り組みを行ってきた。

 こうした取り組みをスムーズに行うためには、円滑な合意形成が欠かせない。実際に、西京極大門ハイツでは、総会決議の主要議題で、毎年ほぼ100%の「賛成」が得られているという。その裏には、長年の試行錯誤による“知恵”がある。

 一つ目が、「総合計画」でもあるマスタープランの存在だ。このマスタープランは、実は合意形成を得やすくするための知恵の一つでもある。いわく、「総合計画というものは反対が出にくい」(同)。総合計画は方向性を示すもので、「いろんな取り組みを進める際に、理屈付けとして使いやすい」という。

「多くの住民は、マンションのあり方について、それほど関心がなく、今より負担が生じず良くなるならそれでいいと考えている。そうした人たちが、賛成せざるを得ないような話の持っていき方をすることが大事です」(同)

 往々にして反対意見が出やすいのは、お金の話になった時。誰もが、金銭的な負担を極力減らしたいと思うからだ。そこで二つ目のポイントとなるのが、「負担額を上げるという話は、10年単位で話すこと」。例えば「来年から積立金を上げる」というと反対意見が出やすいが、「10年先に上げる」という計画を理由とともに説明すると、理屈で考えてもらいやすいという。

 実際に、西京極大門ハイツでは、管理規約、細則を全て網羅した規約集に修繕積立金の10年ごとの上乗せ計画を記載。規約集は一部改正のつど、全員に配布するよう徹底している。

「何かしないといけない時に、そのつどお金を徴収するというやり方は、なかなか合意形成が得られない。マンションは100人いれば100通りの常識があり、白黒つけることが難しい世界。だから大勢で議論をするのではなく、覚悟のある人が中心になって考えをまとめていく流れを大切にしています」(同)

 その前提となるのが、三つ目のポイントとなる管理組織への信頼感や安心感だ。信頼感や安心感を得るには、普段の様子が見えている透明性や公開性が重要になる。住民スタッフで運営し、マンション内だけでなく近隣住民との交流の場ともなっている「日曜喫茶」や、未就学児を対象に絵本の無償貸し出しを行う「カンガルー文庫」、桜祭りや夏祭りなどの四季行事など、盛んなコミュニティー活動を行っている。「住民は、管理組織のメンバーの普段の動きを意外と見ているものです。だから“普段から一生懸命やっている、あの人が言うなら”というふうに動いていくことが大事。顔の見える関係づくりが安心感の元になります。理事長を務める私の携帯電話の番号も、住民の多くが知っていますよ」(同)

 現在、管理組織の理事は5人、監事が2人。以前は14人の理事で務めていたが、14年前に3~5人の可変定数に変えた。理事・監事は評議員会の推薦で総会提案され、その下で管理組合が運営される仕組みだ。マンションの理事は輪番制で1年ごとに交代していく例が多いが、西京極大門ハイツでは、少なくとも2~3年は務める体制を維持している。継続性を保つためにも、2008年から役員報酬を制度化した。役員としての適性を見いだして育てていく、人づくりの仕組みも考えている。

「マンション管理は、いわば会社経営。管理会社任せや素人役員が1年交代で務めていたのでは、ノウハウも蓄積されず、物事が進んでいかない。理事が責任を持ってマンション管理を学び、真剣に将来を考えていくことが必要」(同)

 分譲開始から暮らし続ける住民は高齢期を迎え、車椅子で一人暮らしをしている高齢者もいる。高齢世帯が年を取っても住み続けるための施策として、共用部分をバリアフリー化したり、朝夕の巡回による安否確認、また希望者は管理組織で鍵を預かり、いざという時に室内に入れるようにするといった対策も行っている。同時に若い世帯を意識したイベント企画やコミュニティー活動の成果が実を結び、途中入居の住民には子育て世代が多いという。

 将来の建て替えを見据えた取り組みは、18年前から検討委員会を設置し準備をスタート。敷地内の駐車場利用料を財源とする「環境整備積立金会計」を設置し、建て替えに備え、隣接する土地を買収していく計画を立てた。すでに隣接地を一部取得しており、「いつか来る建て替えに向けて資金を積み立てる」のではなく、「不動産を保有してその時に備える」という考えのもとで計画を進めている。増床分を第三者に売却あるいは等価交換すれば、住人の追加負担なしで建て替えが実現できるという構想だ。

「建て替えや解体は、どんなマンションもいずれは直面する現実。先のことを考えたら、打てるうちに少しずつでも手を打たないと」(同)

 自分たちの資産は、自分たちの手で守る──。考えてみれば当たり前のことなのだが、集合住宅となると“所有者”として「建物を管理していく」という意識がどこか欠落してしまうケースが少なくない。問題を抱えながらも先延ばしにしてきた結果、困難な壁に突き当たるケースもある。

「ピンチをチャンスに変える発想を持ったマンションは、その後の管理がうまく進むことが多い。困ったことがあった時こそ、これまでのやり方を変えるべきタイミング」

 これまで数々のマンション管理の例を見てきたマンションコミュニティ研究会代表の廣田信子さんは、こう指摘する。先の西京極大門ハイツも、1回目の修繕工事で資金不足という痛い目にあったことが、その後の運営体制を大きく変えるきっかけになった。

「問題が表面化した時こそ、どう取り組むかが問われる。どうやったらうまく回るかという視点で、楽しみながら試行錯誤できる管理組合は強い。そうした意味で、今回の法改正をチャンスと捉え、自分たちのマンションに生かすよう真剣に取り組んでほしいと思います」(廣田さん)

 法改正とは、今年、全面施行になった改正マンション管理適正化法。マンションの管理に自治体がお墨付きを与える「マンション管理計画認定制度」が4月からスタートし、6月に第1号の認定(東京都板橋区にあるマンション「高島平ハイツ」)が出たばかりで、9月1日に第2号として、先の西京極大門ハイツが認定された。自治体によって取り組み方が異なるが、既存マンションには管理状況の届け出を条例で義務化し、分譲前のマンションにも分譲会社からの管理計画の届け出を義務化する動きもある。自治体がマンションの管理状況を把握して助言や支援を行うことで管理不全を予防し、良好なマンションストックや住環境を形成するのが狙いだ。

「管理状況を改善するためのサポートを手厚くしていこうという自治体の動きを、活用しない手はない。何より管理をきちんとやっていこうという動きは、そこに住む人の安心感や誇りにもつながるはずです」(同)

 認定制度の普及や管理への意識の高まりを受け、今後は「管理がきちんとできているマンションを買いたい」というニーズがさらに強まるとも見られている。マンション問題に詳しい米山秀隆さん(大阪経済法科大学教授)は言う。

「マンション管理の目的は、突き詰めると“中古物件としての競争力を維持すること”にある。この競争力は、立地、管理状況、そして知ってもらうための広報活動の3点が物を言う。自治体からの認定や評価は、管理を頑張っているというアピールにも使える」

 いずれはどんなマンションも直面することになる解体や建て替えを見据えた計画も、できるだけ早いうちから立てておくのに越したことはない。

「いわば“マンションを使い尽くす”という視点で、築80年に向けたマスタープランを作るのも手。80年となると、世代交代もあり、今の意思決定が変わる可能性もありますが、長期的な視点で資産価値を維持するという考え方で動いていて損することはない」(米山さん)

 将来を見据えた計画を考える上で大切になるのが、所有者としての当事者意識だ。大手マンション管理会社、大和ライフネクストの久保依子さんは言う。

「マンションは、誰が役員になるかで、運営の仕方が大きく変わってきます。特に大きいのが、理事長としてリーダーシップを取る人の人柄。マンション管理について積極的に知ろうとする姿勢、経営的な視点、周囲からの人望がそろった人がリーダーになると、物事が円滑に進んでいきやすい」

 同社の管理現場で、多くの管理組合を担当してきた大野稚佳子さんに、課題解決が進む管理組合の特徴を聞くと、「当事者としてのぶれない軸を持っていること」という答えが返ってきた。無論「自分が役員を務める代では、何事もなく終わらせたい」と願う人が少なくない。それでも課題を解決していくには、個々の価値観の集まりの中で何とか折り合いをつけ、譲れないものを決めて実行していく力が必要だ。

「そうした意味で、経営感覚がある人は強い。いつまでに何を決め、何を実行しないといけないのかを把握し、主体的に動ける人です。今までのやり方を疑う視点も時には必要。心地よい住まいは、そこに住む人の手によってつくられることを強く実感します」(大野さん)

 長生き時代の集合住宅には、先を見据えた計画性や実行力が必要になってくる。さて、あなたが住むマンションの未来は、どうだろうか?」


 西京極大門ハイツは、自主管理マンションでありながら先進的な取り組みを多く行っている模範的なマンションです。築46年ということで、多くの高経年マンションにとっても参考となる点が多くあります。今回の記事で取り上げられている「まちづくりマスタープラン」も、長期的にマンションの将来を考えるということでマンション管理センターの作成した「長期マネージメント計画」と通じるものがあります。

 築40年超のマンションでは、自分のマンションの終活を考える上でも、住民みんなで、自分のマンションの招来を「長期マネージメント計画」を基に考えるべきだと思います。

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