4兄弟、「老老相続」の途中1人が…
- 快適マンションパートナーズ 石田
- 3月18日
- 読了時間: 5分
更新日:2 日前

2024年1月4日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。
「関東地方の地方都市。
あるアパートの一室で、2024年2月、男性が「孤独死」した。79歳。見つけたのは、近くにある男性の実家で暮らす、おい(55)だった。「本家」筋にあたる。
男性は、本家が所有するアパートの一室を借り、妻と暮らしていた。妻は2年ほど前に死去。子どもはいなかった。
おいによると、前夜、男性の部屋は電気がつかなかった。郵便受けには新聞がたまっていた。かぎをあけて入ると、布団の上に、男性が「大の字」で横たわっていた。
よほど寂しかったのか、火葬場から持ち帰った妻の遺骨は、部屋に置いてあった。
警察が調べると、壁に小さい穴が開き、頭に傷もあった。倒れてぶつけたのか。遺体は解剖に回す、と告げられた。おいは、「怪しまれている感じがした」と苦笑いする。
病死とみられるという解剖結果は、翌日には伝えられたと記憶している。
遺骨は妻とともに、近くの共同墓地に納められた。ただ、それで一段落、とはいかなかった。むしろ、恐れていた事態が現実になった。
相続だ。
■評価額は1億円超
「本家は、地方の『プチ地主』なんですよ」
亡くなった男性は、4人兄弟の一人で、三男だ。4兄弟の父親は1990年に亡くなり、不動産の一部は4兄弟が共有したが、多くは母親が相続した。宅地5筆と今回のアパート。地方都市とはいえ、駅に近い住宅街にある。固定資産の証明書によると、土地5筆の評価額は合計で1億円はくだらない。
その母親が百余歳で亡くなったのは、2017年のこと。アパート建設時の負債が残っており、遺産総額は基礎控除なども計算すると相続税が課されるラインを下回る。課税対象でなければ、急いで遺産分割を済ませる必要もない。
4兄弟はみな70~80代。何人かは遠くで暮らす。そのうちコロナ禍が始まり、顔をそろえる機会はほぼなくなった。
転機は、相続登記が24年4月から義務化されると決まったことだ。
不動産の所有者が亡くなった際、相続した人に名義を書き換える相続登記。従来は任意で、所有権を主張すべき場面などがなければ必要性も乏しかった。しかし、名義が放置されたままでは、土地を利用したくても、適切な管理を求めたくても、接触が難しい。そんな「所有者不明土地」が問題化。対策として、相続登記が義務になった。
義務化を見据えた銀行が、借金の担保となっている土地の登記の状況を確認してきたことが、遺産分割協議を始めるきっかけとなった。おいが中心となり、自身の父親と叔父3人が「できるだけ4人で公平になるよう」(おい)という分け方でまとまったのが、23年の末ごろだ。遺産分割協議書に4人の署名をもらい、全員分の印鑑証明、同じく4人それぞれの住民票に戸籍謄本などなど。書類を用意し、あとは司法書士に手続きを進めてもらえば――。
その矢先の孤独死。男性が相続するはずだった分は、どうするのか。やり直すしかない。男性が持っていた不動産もある。妻は亡く、子どもがいないため、さらに兄弟間での相続も発生することになった。
■細切れになる土地
「はやく進めておくべきでした」
「老老相続」の危うさを実感したおいは言う。当事者の3兄弟は、「もう(おいに)任せたから、はやくしてくれ」という感じだったという。新たに必要になった書類を集め、司法書士がすべて登記を終えたのは、最近のこと。「それぞれもう高齢なので、いつ次の相続が生じるかもわからない」とおい。
所有権はしだいに、おいやそのいとこにあたる世代たちに移る。「私たち世代の5人6人で、ばらばらに共有することになります」。いとこも遠く離れて暮らし、それぞれが細切れに相続した土地を有効活用できる未来は、思い描けそうにない。「まとめて換金し、お金で分配した方がいいのかも」。おいはそう考えているという。
原則長男が単独で財産を継承する家督相続が1947(昭和22)年に廃止され、日本の相続は均分相続が基本となった。ただ、代を重ねるほど相続人が増え、持ち分は細分化される。登記が放置されれば、実際の所有者の確定や、不動産の売買などは、どんどん困難になっていくことになる。(山田史比古)
■相続登記、3年以内にしないと過料 すぐできない場合は申告制度も
法務省の登記統計によると、義務化された24年4月以降、9月までの相続登記は、土地で約65万3千件、建物は約11万2千件。前年は公開データの集計方法が違うが、同省によると、相続登記は前年の約1割増だという。
義務化に伴い、正当な理由がないのに不動産を取得して3年以内に申請しないと、10万円以下の過料が科される可能性がある。24年4月の前に相続した不動産も、相続登記をしていなければ義務化の対象となっており、はやければ27年春に過料の対象となる。
法務省は23年の「マスタープラン」で、過料の運用方針を示している。相続登記を申請していない場合、一定の期間を定めて申請を求め、されない場合は地方裁判所に通知。過料を科すかどうかは地裁が判断する。申請していない事例を把握する方法も例示。現時点では、相続登記の申請時に添付された遺言書や遺産分割協議書の記載ではほかにも申請すべき不動産があるのに、されていない場合を想定しているという。
相続が代を重ねて相続人が多数にのぼる場合や、争いが決着していない場合などは、過料の対象とならない「正当な理由」になる。すぐに相続登記を申請できない場合、自らが相続人であると申告すれば登記の義務を果たしたとみなす「相続人申告登記」制度も開始。24年4~9月に土地で約5千件、建物は約500件の申告があった。
日本司法書士会連合会が24年1月、40~60代の600人にアンケートをした結果、義務化を「知っている」は48・6%。半数に満たなかった。
義務化にあわせ、固定資産税評価額100万円以下の土地では相続登記時にかかる登録免許税を免除する措置がとられている。26年2月には、相続登記が必要な不動産が把握しやすくなるよう、被相続人など特定の人の名義になっている不動産の一覧を発行する制度も始まる。法務省は、相談体制の充実など相続登記を申請しやすい環境をつくることで自発的な申請を促したい考えだ。(山田史比古)」
この記事を読むと相続登記義務化の影響が少しずつですが出てきているようです。確かに大変そうですが、早めに手続きを進めていくほうが、子や孫にとっては良いようにも思います。またこの記事のように土地が細切れになるよりは売買することで、後々の土地の有効利用も諮れます。高松市でも、空き家バンクや、空き家相談員制度等があります。早め早めの対策が重要だと思います。
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