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2040年までに6兆円の経済的損失か。増える「所有者不明土地」への対応と今後の対策とは!?

更新日:2021年10月21日



 2021年8月30日付けのオウチーノニュースの表題の記事を紹介します。


人口減少や高齢化等の社会情勢の変化に伴って表面化し、近年、重要課題の一つとされている所有者不明土地の問題。

 もし、あなたのお隣の土地の所有者が、ある日突然いなくなったらどうなるのでしょう。 将来に、どのようなリスクが起こり得るのでしょうか?


所有者不明土地とは?

 所有者不明土地とは、「不動産登記簿等の公簿情報等により調査してもなお所有者が判明しない、または判明しても連絡がつかない」土地のことを言います。この所有者不明土地は今後、日本全体で考えなければならない大きな問題となるため、国土交通省も具体的にどのような土地を所有者不明土地とするか、明確に定義をしているほどです。(参考:「所有者不明土地法の施行について」:国土交通省)

 所有者不明土地が生まれる一番の理由は、土地を取得してもその登記が義務付けられていないからです。登記後に情報が変更された場合に更新する義務もありません。また所有者不明土地のうち、土地の上に建築物(簡易建築物を除く)がなく、かつ、業務の用その他の特別の用途に供されていない土地を特定所有者不明土地といいます。

 こうした所有者不明土地は全国的に増えています。一般財団法人「国土計画協会」が所有者不明土地について平成29年にまとめたところでは、広い意味での所有者不明土地の割合は、土地全体の20%にも及ぶという結果が出ています。実に九州の面積よりも広い所有者不明土地が日本にはあるということです。

 所有者不明土地の存在は、公共事業の推進等の様々な場面において支障が生じます。所有者の特定等のため多大なコストを要し、円滑な事業実施ができなくなるのです。これは最終的に税金を払っている私たち自身の負担が増えているとも言えます。

 こうした背景をもとに、平成30年6月に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(所有者不明土地法)」が成立しました。この法律の要点は3つあります。

  1. 所有者不明土地を円滑に利用する仕組み

  2. 所有者の探索を合理化する仕組み

  3. 所有者不明土地を適切に管理する仕組み

所有者を探しやすくするとともに、不明だった場合はその土地を行政が収容しやすくし、事業等に活用できるようにするものです。


なぜ所有者不明の物件が生まれるのか

 2016年度の地籍調査によると、登記簿上の所有者不明土地の割合は約20%でした。 この調査には続きがあります。今後、こうした土地の発生抑制のための取り組みを行わなければ、2040年には所有者不明土地は北海道の面積に迫る約720万haまで増加すると推計されているのです。

 では、なぜこのような所有者不明の物件が生まれるのでしょうか。前述の調査にも相続未登記の連鎖によりネズミ算的に拡大することが懸念点として明記されています。

 これには次の3つが原因として考えられます。

  • 子どもなどの相続人がいない場合

  • 相続人が決まらなかった場合

  • 相続人が登記簿の名義を変更していない場合

 特に、3つ目の「相続人が登記簿の名義を変更していない」ケースがもっとも多く発生しているのが現状です。


相続人が登記簿の名義を変更していない理由

 所有者不明土地が生まれる原因として、「相続未登記」の問題があります。相続人が決まらずに放置されるケースや、相続人が決まっているにも関わらず登記簿の名義変更がされないケースがあります。

 登記変更をしない理由は、何なのでしょうか。  ひとつに「売却しにくい土地であること」が考えられます。核家族化が進んでいる現代において、親が所有していた土地に子どもが住み続けるケースは、そう多くはありません。売らずにそのまま土地を所有していた場合、当然「固定資産税」や「都市計画税」が発生しますし、管理の手間や費用もかかります。どうせなら早く売ってしまいたいというのが本音ですが、立地によっては売却が難しい場合もあるでしょう。

 そこで、名義を変えずに放置した結果、時間の経過と共に世代交代が進み、法定相続人が増えて登記簿情報と実態は更にかけ離れていくため、その土地を新たに利用する話が持ち上がった時には、相続人を辿って名義変更の同意を取り付けるのに、膨大な手間と時間を要することとなります。


2024年をめどに登記の義務づけ

 現在、相続登記は任意であり、名義変更の手続きを行うかどうかは相続人の判断に委ねられています。所有者不明土地を抑制する手段が、現段階ではないというのが現状なのです。

 こうした問題を解消するための関連法が令和3年4月に可決、成立しました。内容は2024年を目途に土地や建物の相続を知った日から3年以内の登記を義務づける、相続登記の手続きを簡素にする、と言ったもののほか、管理が難しい場合は相続した土地を手放して国庫に納められる制度の新設などが盛り込まれています。


所有者不明の恐るべきリスク

 あなたがマンションに住んでいるケースを考えてみてください。所有者不明の住戸が増えると、どうなるでしょうか。  管理費や修繕積立金の滞納が発生し、管理会社が請求しようにも登記の所有者が亡くなっていてはどうしようもありません。滞納金が増え続ければ、マンション全体の管理や長期修計画にも影響を及ぼします。

 では、一戸建てならどうでしょうか。誰にも迷惑をかけないと思っていませんか?  修繕されない一戸建ては、あっという間に老朽化が進みます。屋根や外壁は腐食し、庭の草木も生い茂ります。そんな住戸の前を往来している人は嫌悪感を抱くでしょうし、強風で住宅の一部が破損して、その欠片があなたの家に飛んでくる可能性だってあるのです。

 土地の場合も同様に、所有者がわからないことによる弊害が生じます。 公共事業や再開発に向けた用地取得や徴税の妨げとなるというのが、ひとつ。空き地の管理にも支障が生じ、雑木の繁茂による火災・放火の危険性やゴミの不法投棄による環境衛生上の問題も考えられます。

 「自分には関係ない」と考えるのではなく、いつ我が身にふりかかるかわからないこの問題に対し、一人ひとりが真剣に向き合っていく必要があるでしょう。


所有者不明土地を取得することはできる?

 所有者不明土地を取得するにはどうしたらよいのでしょうか。また、その方法はあるのでしょうか。


登記簿謄本を確認する

 買いたい土地があっても、その土地を訪れれば土地の一部に持ち主の連絡先が書いてある訳ではありません。土地の持ち主が誰かを知るためには法務局で登記簿謄本(正式には「登記事項証明書」)を取得するのが一般的な方法です。登記簿謄本の取得は誰でも行うことができます。

 登記簿謄本には土地の所有者の名前・住所が記載されています。最初は誰のものか分からなかった土地でも、登記簿謄本を取得することでその所有者情報が得られます。その情報を頼りに所有者へ連絡が付くのであれば、それはもはや所有者不明土地ではありません。相手へ購入の意思を伝え、直接(または不動産会社を間に介して)交渉を行います。


登記簿謄本からは所有者が判明しない場合

 登記簿謄本を見るなどしても所有者と直接連絡がつかないのが「所有者不明土地」です。この場合、登記簿謄本からさらに進んだ調査、住民票や戸籍を取得するなどして所有者や相続を受けた人へコンタクトする必要があります。しかし、一般の人が勝手に他人の住民票や戸籍を取得することはできません。

 考えられる方法は弁護士や司法書士など第三者でありながら住民票や戸籍を取得することができる限られた国家資格者へ取得を依頼することです。これらの人は職務上の理由に該当する場合は他人であってもその住民票や戸籍を取得することが可能です。ただし、単純に不動産を購入したいという理由から、第三者が他人の住民票や戸籍の取得を士業の人たちへ依頼しても受理されることはないでしょう。書類の取得そのものが目的の場合は、職務上の理由に該当すると言えないからです。

 どういったケースであれば対応が可能か、専門家へ個別の事情等を説明したうえで、確認をしてみましょう。また、購入に限らず、所有者不明土地の管理、利用、取得を可能にする対応が民法の「不在者財産管理制度」「相続財産管理制度」によって定められています。前者は所有者である人の住所が定かでなく戻る見込みもないケース、後者は所有者が死亡し相続人がいることが明らかでないケースでそれぞれ利用します。

 ただし、家庭裁判所を介する手続きとなるため時間がかかりますし、制度の利用を申し立てられるのが所有者の利害関係人であるなどの制約があるため、必ずしもこれらが購入希望者にとって有効な制度になるとは限りません。


所有者不明土地の時効取得

 時効取得とは、10年、20年と長期間にわたり他人の土地を占有していた場合に、その土地の所有権を認める制度です。土地の占有は平穏かつ公然と行われていなければならないので、脅迫して占有している場合や、他人の目に明らかにならない形で占有されている場合はこの制度の利用はできません。

 たとえば相続した土地の一部が隣地所有者のものであったにも関わらず利用され続けていて、現在は隣地所有者の所在も分からず所有者不明土地となっているような場合に、この土地を時効取得するケースなどが考えられます。時効取得によって所有権の取得が認められれば所有権移転登記をすることが可能になります。正式な所有者となるため、将来の売買などもスムーズに行えるようになります。


所有者不明土地に係る固定資産税

 所有者不明土地が利用されているケースも少なくありません。固定資産税は土地の所有者へ対して課せされるのが原則であるため、たとえ利用があったとしても所有者が不明の場合、その土地からは実質的に税金が徴収できない状態でした。そのため、令和2年度税制改正において、固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合、使用者を所有者とみなし固定資産税を課すことができるようになりました。この制度は令和3年度分の固定資産税から適用となります。

 土地の使用者に該当するのは年間を通して使用している状態で、住民票や電気・ガスなどの利用や利用状況などから判断するものとされています。


所有者不明土地への対応と今後の対策

 法務省及び国土交通省が所管する「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が、2018年11月より一部施行。2019年6月に全面施行されました。

 この特別措置法では、名義人の死亡後長期間にわたり相続登記がされていない土地について、法定相続人等を探索した上で登記官の職権により長期間相続登記未了の旨等を登記に付記し、法定相続人等に登記手続を直接促すなどの特例が設けられています。

 2018年11月15日からは、今後、相続登記が放置される可能性のある土地に対応するために、一定の土地について相続登記の登録免許税の免税措置も開始。 2019年5月17日には、所有者に関する情報が正しく記載されていない「変則型登記」を減らすための法律が可決しています。

 また、国民に対する意識調査によると、空き地の所有者の約半数が負担を感じたことがあると回答しており、国民の8割近くが土地の所有権を放棄してもよいと考えていることもわかっています。

令和3年4月に可決、成立した「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案」では、土地の上に建物がないなどの条件を満たす土地を対象に、法務局による審査を経て、10年分に相当する土地の管理費を納めれば国庫に納付する形で相続した土地を手放せる相続土地国庫帰属制度の導入が決まっています。


所有者不明土地による経済的損失は約6兆円

 土地が利用できないことによる機会損失や所有者の同意を取り付けるまでにかかるコスト、税の滞納などによる経済的損失は、所有者不明土地問題研究会の調査によると、2017~40年までの累計で少なくとも約6兆円にのぼると推計されています。

 所有者不明土地の問題は、過疎化が進む自治体だけでなく都市部においても広がっており、一刻も早い対応が求められています。

 今後の課題である所有者不明土地の発生抑制・解消に向けての取り組みが進められていますが、膨大な所有者不明土地の問題を解決する道は、まだまだ遠いと言わざるを得ないでしょう。


 先日テレビで、都会の一等地の空き家が、所有者不明で解体も売買もできないというニュースがありました。この空き家は明治以降所有権移転ができておらず、今では所有者が100人を超え、全員同意が得られないため、解体も土地売買もできない状況になっているという話でした。この記事にもあるように、所有者不明土地が九州の土地面積に匹敵するというのは、おどろくような状況です。令和3年4月から、国への寄付も制度として認められているとのことですので、参考にすればいかがでしょうか?


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