
2021年3月25日付けの廣田信子さんの表題のブログを紹介します。
「ある大型マンションが取り組んだ総会対策をご紹介したいと思います。
そのマンションでは、組合員が気持ちよく総会に参加できるよう総会を効率的な決議の場とすることを目指し、この2~3年、対策に取り組んできました。そのきっかけは、長時間総会の連続によって、一般の組合員が総会出席を見合わせるようになってしまったことです。
総会しか、組合員が意見を述べ、聞いてもらう場がないと、総会が激しい議論の場になってしまいます。そのため、総会が長時間(10時間というようなケースも…)になり、その上、最後は、委任状等も含めた多数決で結論を出さざるを得ず、そのことへの不満が鬱積してしまう…
または、反対の声が大きすぎて、委任状等で可決できる状況でも採決ができない…
そんな状況になってしまうことが少なくありません。
激しい応酬が続く長時間総会は、一般の組合員から見たら、とても付き合って居られない…となってしまい、総会の参加者が減ってしまうことにもなります。 10時間かかるって、朝10時に始まった総会が夜の8時までかかるということです。 途中多少の休憩を取ったとしても、普通の感覚だと、とても絶えられるものではないですよね。 途中で抜けてしまう人も多いと思います。
このマンションでも、それに類することがあり、それを何とか改善したいという取り組みだったのです。
そのために…事前に対話や説明会などの場を作り積極的に住民意見の収集すると共に、理事会の考え方を説明する機会をつくりそこで出た意見をまた議案に反映する…という丁寧な進め方です。
具体的には、「アンケートによる間接対話」、「素案説明会(検討会)」2回「議案説明会」2回を行うと言います。
コロナ禍で、総会の実出席者を少なくするために組合員の意向を反映した丁寧な議案書づくりをしている管理組合もだいぶ多くなってきたと思いますが、このマンションは、コロナ禍前から、この取り組みを検討してきたもので、出席者数を押さえるため…ということとは反対で、総会が適切な時間で終わることで、一般の人も総会に参加しやすくしたい…という趣旨だったのですが、図らずも、それが、コロナ禍で、総会出席者を減らしたいという要請にも、合致したと言うことになります。
アンケート調査は間接的対話と位置づけ、総会に上程する候補案件(課題となっていることに対してなんらかの対応策を示す)について意見を聞き、それを踏まえて、上程する議案を絞り込みます。
どの議案候補も、アンケートでの投票では、総会への上程に賛成の方が圧倒的に多い(総会で十分可決できる)のですが、上程不要とする意見が一定数あった案件については、緊急性、重要性、必要性を考え今回は上程を見送ることとしています。
アンケートで結論が出せなかった案件は「素案説明会」でさらに意見を聞き、議案化するかどうかの判断をするといいます。
アンケートで示された具体的意見や議案化への賛否は、もちろん、しっかり広報しています。 議案化するかどうかを理事会だけが決めているのではなく、組合員の意見を反映しているということをきちんと示しているのです。
今の総会のしくみでは、総会に議案を上程すれば、結果的にほぼ可決されてしまいます。ですから、議案化するかどうかのところが一番の肝なのです。
総会までのタイトなスケジュールの中で、そこを丁寧にされているのはさすがだと思いました。 議案化すると決めた案件については、アンケートに寄せられた意見も踏まえて、しっかりした議案の素案をつくります。
総会2ヶ月前の「素案説明会」でさらに意見を聞き、それも反映して、最終的な総会議案を作成するのです。
さらに、その総会議案書についても、総会の3週間前に「議案説明会」で説明し、ここで出た質問等への回答は、総会での説明に反映されることになるのだと思います。
事前にここまですれば、総会は最終的な考え方を確認し、しっかり決議する場となり効率的に2時間ぐらいで終わらせることができるはずです。そうなれば、総会は、次期の事業計画や次期理事会のメンバーの考え方を聞き、総会で久しぶりに顔を合わせた人と交流する場…とすることもできるでしょう。(積極的交流はコロナ禍が落ち着いたら…でしょうが)
このように、総会議案書をつくる前の意見の吸い上げを大事にしてもらいたい…ということは、いろいろな機会で言ってきましたが、ここまでしっかりやられている管理組合があることをたいへんうれしく思いました。
特に、総会の2ヶ月前の「素案説明会」は、すばらしです。 議案の内容が具体的にならないとイメージがわかないので、意見も出にくいのです。
具合的な素案を元に、意見を聞くことで、理事だけでは気づかなかった視点も取り入れたより進化した議案にすることができるはずです。
このマンションが、ここまでできたのは、10時間総会が続いたというピンチだったとすると、ほんとうに「ピンチはチャンス」なんだと改めて思います。
広報紙を送っていただき、この取り組みを知って、ぜひシェアさせて頂きたくなりました。」
私が今、大規模修繕工事のコンサルタントを行っているマンションでも、理事会の情報発信不足から、一部入居者が疑心暗鬼になり、修繕委員会の解散を求めるという事態が発生しました。その後、理事会の皆さんと話し合い、3回に及ぶ途中説明会の開催と、意思決定は全組合員のアンケート結果を基に行うことで、組合員の信頼回復に努めた経緯があります。このブログにある10時間総会は確かに異常だと思いますが、逆に、入居者のマンション管理への関心の高さが伺えます。「ピンチはチャンス」と捉えることで、よりよい組合活動が行えている好事例だと感じました。
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