現在大規模修繕工事のコンサルタントを実施している理事会の方から、「大規模修繕工事の前に建物2次診断を実施しなくても問題ないですか?」との問い合わせがありました。
建物診断には、1次診断・2次診断・3次診断とあり、調査会社のホームページでは、仕事を受注したいためか、大規模修繕工事の前には、出来るだけ詳細な診断・調査が必要だというような事が書かれています。このような内容のホームページを見ると、全ての診断を実施しないと、工事は出来ないような気になってしまいますが、実施する工事内容によって、実施する診断も異なってきます。
1次診断とは
1次診断とは簡易診断とも呼ばれ、目視検査と手が届く範囲のタイル打診検査を主に行う検査です。検査後は、現況写真を添付された報告書が作成され、劣化状況や劣化度、修繕要否等が記載されます。診断費用についても20万円程度で実施可能です。
2次診断とは
2次診断は1次診断に加えて、妻側等の手が届かない部分の外壁タイル打診調査や、健全部のタイルの引張試験・コンクリートの中性化試験・シール材の硬化試験等が実施されます。1次診断の目視検査と違い、測定器を用いての機械診断が多く、数値で劣化度が示されるため、1次診断よりも客観性が高くなります。診断費用は100万円程度になります。
3次診断とは
主に設備系の配管調査を中心に、内視鏡による配管内部の調査や、配管の抜き取り検査・建物の構造体を調査するコンクリート圧縮試験や、配筋調査等が行われます。調査のためには、配管を切断したり、コンクリートを切断したりするため、復旧費用までを含める200~300万円程度の費用が必要です。
まとめ
建物診断は良く人間の健康診断に例えられます。風邪をひいたと病院に行って、レントゲンは取られません。熱を測って、触診をして終わりだと思います。また、骨粗鬆症でもない若い人に、骨粗鬆症の検査は実施しません。
1回目2回目の大規模修繕工事であれば、塗装・防水のやり替えとタイルの劣化部の補修がメインですので、余計な費用をかけず1次診断だけで問題ありません。
2次診断は3回目以降の大規模修繕工事で、躯体の劣化や塗装の付着力が弱ってきたケースで実施すべき調査だと思います。
また3次診断は、給排水管の交換や、耐震補強工事等を実施するのであれば、実施する必要のある調査です。
以上のように、実施する工事内容によって、診断方法は分けて考えたほうが良いと思います。
修繕積立金という大切なお金を使って診断を実施するのですから、オーバースペックにならないように注意して、効果的な建物診断を実施すべきだと思います。
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