2024年3月8日の日経クロステックの表題の記事を紹介します。
「2024年能登半島地震では、建物に大きな被害が発生した。国土交通省は有識者委員会を立ち上げ、建物被害の原因を分析する。特に被害が大きい木造住宅については現行耐震基準の妥当性を検証するとともに、旧耐震基準や新耐震基準の被害状況を把握するため日本建築学会と協力。被害の大きい地域の悉皆(しっかい)調査を実施する方針だ。
有識者委員会では、1981年5月以前の旧耐震基準、1981年6月以降2000年5月以前の新耐震基準、2000年6月以降の新耐震基準の3つに分けて、被害状況の把握や原因分析に取り組む。このうち筆者が特に注目しているのが、1981年6月以降2000年5月以前の新耐震基準の住宅だ。建築実務者の間では、耐震性能が不足する可能性が認識されており、「新耐震グレーゾーン」と呼ばれている。
能登半島地震で倒壊した、石川県穴水町にある木造戸建て住宅(写真:日経クロステック)
倒壊した建物の土台付近。土台と基礎は金物で固定されている。柱脚部にホールダウン金物などが見当たらない(写真:日経クロステック)
新耐震基準が2000年を境に区別されるのは、国土交通省の前身となる建設省が、木造住宅を対象とした建築基準法に基づく告示を2000年6月に施行したからだ。構造関連で特に重要な告示は2つある。壁のバランスがよい配置を確認する方法を示した「2000年建設省告示1352号」と、柱や梁(はり)といった構造部材の接合部に用いる金物の仕様を明確にした「2000年建設省告示1460号」だ。これらの告示が施行される前は、どのように壁を配置し、接合部の金物に何を使うかは設計者の判断に委ねられていた。そのため、建基法が期待する耐震性能を確保できていない住宅が建てられた可能性がある。
2016年4月に発生した熊本地震でも、2000年5月以前の住宅に耐震性能が不足している可能性があることは指摘されていた。最大震度7を観測した同県益城町の中心部を対象に日本建築学会などが実施した悉皆調査では、新耐震基準の木造建物のうち、2000年6月以降に建てられたもので倒壊した割合は2.2%。それに対し、2000年5月以前は8.7%と約4倍の開きがあった。
新耐震グレーゾーンの問題にいち早く対応したのは東京都だ。2022年12月に公表した「TOKYO強靭(きょうじん)化プロジェクト」で、新耐震基準の木造住宅の耐震化に取り組む方針を明らかにし、2023年度から耐震診断や耐震改修の補助制度をスタート。都内11の区市で耐震診断や耐震改修の補助を始めている。2024年度には導入自治体が大幅に増える見通しだ。
東京都は2000年以前に建てられた新耐震基準の住宅に「耐震性がない」ものがあるとする。その数は約20万戸と想定している(出所:東京都の資料を基に日経クロステックが作成)
能登半島地震をきっかけに、自宅の耐震性能を意識する一般の人々が増えるだろう。その際、「新耐震は大丈夫」という従来の常識を見直してもらう必要がある。そのためにも、都が新耐震を耐震診断や耐震改修の補助対象としたことは、注意喚起する上で非常に有効である。
新耐震基準で2000年5月以前に立った木造住宅のうち、耐震性能が不足している住宅はどれくらいあるのか。東京都は、「耐震性なし」が約20万戸と見積もっている。2000年5月以前に建った新耐震基準の住宅は、都に限らず全国にある。「新耐震基準の住宅でも、2000年5月以前に建ったものは要注意」という認識が一般に広がることを期待したい。」
戸建て木造住宅の場合は2000年6月以降の建築確認を取得したものでないと、地震に対して安全とは言い切れないようです。築20年以上の戸建て木造住宅にお住まいの方は、今一度、注意が必要です。
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