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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

40代男性の「堅実な人生」を狂わせた、「品川のタワマン」の意外な落とし穴

更新日:2022年7月12日



 2022年3月28日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。


「2021年、首都圏の新築マンションの平均価格は6260万円と、3年連続で上昇を見せた。バブル期を上回り、過去最高を記録する価格だ。しかし一般的なサラリーマン世帯、とくに子育て世代にとっては、目下の生活費や教育費と、とにかくお金は出ていくばかり。多少家計にゆとりがあっても、住居費にばかりお金をかけるわけにはいかないというのが大半の本音だろう。

 一方で、日本では「賃貸より持ち家のほうが偉い」「社会的信用がある」といった風潮もまだまだ根強く残っている。そうした消費者心理ゆえか、中古マンション、とりわけ築浅のタワーマンションの中古取引市場は活況だ。中古のタワマンは、新築よりお得に購入できることが多く、いいことずくめのように思えるが、隠れた落とし穴もあることをご存じだろうか? 今回は、中古で憧れのタワマンを手に入れた46歳男性が直面した“悲劇”をご紹介しよう。


お得に手に入れた、憧れのタワマン暮らし

 古川崇さん(46歳・仮名、以下同)は、専業主婦の妻・美代子さん(38歳)と一人娘の結衣ちゃん(3歳)との3人暮らし。中古で購入した品川エリアのタワーマンションの中層階に暮らして5年目だ。

「教育資金や老後の生活資金についてもシミュレーションしたうえで、家計に無理がないようにと考えたら、中古マンションが最適解でした。賃貸にしなかったのは、妻の強い希望です。教育熱心な彼女いわく、“名門私立のお受験では持ち家に住んでいるのが必須条件”だそうで」

 品川アドレスのタワーマンションは、崇さんの憧れでもあった。「ここに引っ越してきてから、人生に追い風が吹いているようだった」と話す様子からは、幸せに満ち溢れた当時の暮らしぶりが容易に想像できた。

 崇さんの勤務先は、大手テレビ局傘下のラジオ局だ。しかし意外にも、マイホーム購入にあたって将来のキャッシュフローを入念にシミュレーションするような崇さんの堅実さは、最近になって身についたものだという。

「学生時代は演劇漬けで、大学にも行かず芝居小屋やミニシアターに通いつめていました。2回も留年するほどにちゃらんぽらんで、運よく希望のメディア業界に就職できてからも、“資産”といった言葉はずっと縁の遠い存在で、家を買うとか安泰とかは考えたこともなかった。でも、リーマン・ショックと美代子との結婚がきっかけで、人生観ががらっと変わったんですよ」


結婚して「堅実な人生」を目指す

 2008年のリーマン・ショック当時、崇さんは33歳の働きざかり。しかし、ラジオ局も例外なく不況のあおりを食らい、ボーナスはお情け程度の額しか支給されなくなり、自主退職のすすめやリストラ勧告が飛び交うなかで、同僚は次々と去っていったという。

 ただでさえ“斜陽業界”と言われて久しいラジオ局である。この危機を生き延びたとしても、バブル景気を謳歌した一世代上のような右肩上がりの昇給は見込めないのは、もはや明らかだった。

「妻の美代子とは、仕事の関係で知り合いました。独身時代はフリーのレポーターとして活躍していて、いろんな現場に呼ばれていたようです。が、リーマン・ショック以降は仕事が目に見えて減り、そのままフリーレポーターとしてキャリアを積む人生に、自信を失っていたようです。そんな彼女を幸せにしてあげたくて、プロポーズと同時に、“堅実に生きる”ということを自らに誓いました」

 結婚4年目には、長女・結衣ちゃんが誕生。「妻と子どもに不自由ない暮らしを与えることが自分の使命」と語る崇さんは、結衣ちゃんの教育費を捻出するため、3年ほど前から副業にも精を出している。

「学生時代から舞台の脚本を書いていたツテをたどって、インターネット配信ドラマのシナリオライターの副業をやっています。ブームの後押しもあって、ありがたいことに依頼が途切れることはなく、学資保険とお受験対策塾の月謝がちょうど賄えるくらいの副収入は得られていました」


「修繕積立金」が突然2倍に!

 結衣ちゃんのお受験本番を半年後に控えたころ、マンションの年一回の理事会総会の告知とともに、「ある通知」がポストに投函されていた。マンションの修繕積立金が値上げされるとの内容だ。よく読めば、現状の2倍の6万円になるという。

「これまで、修繕積立金と管理費、月額に換算した固定資産税を合計すると、毎月8万円もの出費がありました。あと、駐車場代が3万5000円、車のローンが2万円。そこに修繕積立金が3万円の増額ですよ? ただでさえ余裕はなかったのに、完全に赤字です。顔から血の気がサーッと引いていくのを感じましたね……」


2022年、タワマンの修繕費が一斉に高騰する?

 一般的なマンションでは、おおよそ12年に一度の周期で大規模修繕が行われる。長期修繕計画に基づいて修繕のための資金を各戸から徴収し、積み立てておいた修繕積立金がその原資となる。ところが近年、タワマンを中心に修繕のための資金が不足し、修繕積立金が値上げされるケースが相次いでいる。タワマンは、通常のマンションに比べて大規模修繕工事のコストが2倍以上かかるともいわれるが、費用が膨らむ一因として、仮設工事費用がある。

 低層階は通常のマンションと同様に鋼製足場を組み、中・高層階ではゴンドラを使用して修繕作業を行なうことが多いのだが、それには大掛かりな装置が必要となるため、どうしても修繕工事費用が高額になってしまうのだ。さらに、建築業界の人手不足により人件費が上昇傾向にあるため、大規模修繕の費用そのものも全体的に値上がりしている。タワマンの場合、新築引き渡し時とくらべて、月々の修繕積立金が3倍や4倍に値上がりすることも珍しくない。

 くわえて2021年9月、国土交通省はマンションの長期修繕計画や修繕積立金に関するガイドラインを改定すると発表した。それにより、長期修繕計画の計画期間について、「30年以上で大規模修繕工事が2回以上含まれる」へと変更がなされた。

 つまり、長期修繕計画を25年間で立てているマンションは、さらに5年先まで計画を考えておく必要があるうえ、その期間内に2回の大規模修繕工事を行なわなければならない。マンションによっては今回の制度変更で予期せぬ大規模修繕が発生し、大幅な資金不足となりかねない事態となったのだ。これらの理由から、「2022年以降、タワマンの修繕費用が一斉に高騰するかもしれない」と警鐘を鳴らす専門家も多い。


「賛成派」VS「反対派」で、理事会が紛糾

 崇さんのケースに話を戻そう。崇さんの居住するタワマンでは、修繕費を値上げするには管理組合の総会での決議が必要である。約1ヶ月後に開催される総会で、区分所有者の2分の1以上の賛成があれば、値上げが可決されることになる。崇さんも美代子さんも、家計に大ダメージを受ける値上げには反対するつもりであった。

 そんなある日、美代子さんがいつものように結衣ちゃんと家で過ごしていると、突然インターホンが鳴った。オートロックの内側であるドアホンを鳴らすということは同じマンションの住人だろうが、その日はマンション内のママ友とも特に約束はしていない。モニターを確認すると、これまで会釈程度の付き合いしかなかった同じ階の主婦だった。ドアを開けると、彼女はいきなり「相談がある」と勝手に玄関に入ってきて、反対票を入れるよう長々と話し始め、美代子さんは帰ってもらうのに一苦労したそうだ。

「それからというもの、違う階の反対派の人たちから電話がかかってくるようになりました。いったいどこから電話番号が漏れたのか……。いっぽう、“値上げ賛成派”の理事会メンバーは、まるで選挙運動みたいに一戸ずつ訪問して回っているようでした」

 住民たちはひそひそ声で、賛成と反対、どちらに投票するのかお互いに探り合っている。それまで、住人の間にそこまで深いかかわりはなかったとはいえ、にこやかな会釈や世間話をするような関係性だったのだが、そんな空気は消え、「日に日にギスギスした空気になっていったように感じた」と崇さんは語る。

「自分の気のせいかもしれませんが、これまでは、エレベーターホールや廊下で会うたびに、必ず結衣の頭を撫でてくれた同じフロアの高齢の夫婦が、会ってもなんとなくよそよそしくて、ぼくらと距離を置くんですよ。あとでほかの人から“あの人たちは賛成派だよ”と聞いて、そのせいだったのかなと、なんとなく納得しました」


このままでは、家計が破綻する…

 総会の日が近づくにつれて、美代子さんは不満を募らせていった。「共有部でも遠慮なしに声をかけられ捕まってしまうことが多いから、結衣の塾に遅刻しそうになった」「家でも心が休まらないから、お受験対策に集中できない」と嘆く。


 崇さんはついに決心する。

「ここを出よう。副業を続けたとして、自分が生涯で稼げる収入の予測はつく。修繕積立金や管理費は今後も下がることはないだろうし、教育費がますます増えることを考えると、老後もここに住み続けることは不可能に近いだろう」

――しかし、美代子さんとしてはタワマンを手放すつもりは微塵もなかったようで、崇さんの提案に猛反対したそうだ。

「美代子はプライドが高いんですよ。東京出身なのに親の方針で公立しか行かせてもらえなかったことがコンプレックスらしく、娘には“下から私立”の整った環境で育ってほしいと躍起でした。お受験も当然、名門私立狙い。なかでも“三田の幼稚舎”になんとしてでも入れたい、そのためにはタワマンに住みつづけなければならない、と」

「絶対にタワマンから離れたくない」と、美代子さんは毎日のように崇さんに訴えた。そうこうしているうちに総会が開催され、賛成多数で修繕積立金の値上げが決定されたのだった。


タワマンから引っ越すしかない

 崇さんと美代子さんは、依然として「引っ越す」「引っ越さない」で議論を重ねていたが、実際に値上げされて、美代子さんも毎月の家計が受ける打撃を痛感したのかもしれない。

「美代子は、最終的には引っ越しに同意してくれました。管理費が値上がりしてから2ヶ月が経ったころ、“お受験対策塾の月謝が払えない”と気づいたみたいで」

 家計は2ヶ月分、赤字になっていた。冷静になった美代子さんと、毎晩結衣ちゃんが寝てからふたりで話し合った結果、家計をダウンサイズすることに決めた。まずは車を手放し、不動産仲介業者にマンションを査定してもらった。結果、住宅ローンの残債より高額で売却できることがわかり、すぐに買い手もついたそうだ。

 そして同時に、結衣ちゃんのお受験もあきらめた。賃貸マンションに住めば、住居費は大きく圧縮できるのは確かだ。しかし夫婦で資産形成のコンサルタントに相談にいったところ、受験に合格した場合、賃貸でもかなり厳しい暮らしになるというライフプランを突きつけられたのだという。

「面談してくれたFPさんに、“小学校受験だけで人生が決まるわけではありませんよ。いま無理して苦しい生活を送るよりも、もっと先を見据えて資産形成を行ない、ゆくゆく中学や高校の受験で再チャレンジするほうが、結果的にご家族のみなさんが幸せになるのではないでしょうか?”といったようなことを間接的に言われ、美代子は泣いていました。仕事をやめてからは、結衣がすべてみたいな感じでしたから……」

 こうして一家で近隣の賃貸マンションへ移り住み、崇さんファミリーの“夢のタワマンライフ”は、終わりを告げたのだった。


賃貸暮らしに戻った結果…

「お受験対策塾を辞めたことで、美代子はすっかり元気をなくしてしまいました。引っ越してからも、近所でお受験ルックに身を包んだ家族連れを見るたびに、明らかに暗くなって……。夫婦の会話はすっかり減ってしまいましたが、ぼくたちはケンカしているわけではないし、仲が悪いわけではないんです。“美代子も結衣も幸せにしたい”という私の信念はずっと変わりませんから、彼女の傷が癒えて笑顔が戻るまで、とにかく仕事に邁進しようと思っています」

 不動産は「水もの」といわれている。崇さんが中古で購入したタワーマンションでいえば、いきなり2倍もの修繕積立金の値上げというのは、一般家庭にとってはかなり酷であろう。しかし、修繕積立金や管理費の値上げはタワマンに限った話ではなく、全国のマンションで起こっていることだ。当然ながら、不動産を購入したときの社会情勢がずっと続くということはありえない。空前の低金利が続いているが、今後金利が上がる可能性も大いにあるし、物件周囲の環境の変化によって物件評価額は上下する。購入者に目を向けてみれば、家族構成や経済状況など、ライフスタイルの変化はどの家庭にもあるものだ。2020年以降、新型コロナウイルスの影響によって働き方が変わったり、住まいに対する価値観が変化したりという人も多いだろう。それは「VUCA時代=先行き不透明な時代」と指摘される現代ならではの傾向でもある。


「家は一生に一度の買いもの」という考え方は、もはや過去のものとなりつつある。「理想の住まい」を求めて物件選びに妥協しないことも大いに結構だが、状況に応じて「理想の住まい像」を柔軟に変化させていける人のほうが、結果的に満足いく住まい選びができているという印象を受ける。

これから中古マンションを買おうと検討している読者のみなさんには、資金計画や下調べを入念に行なうことはもちろん、不測の事態に備えた心構えもぜひ持っておいていただきたいと考えている。」


 この記事では、修繕積立金が2倍になって3万円値上がりしたと記載されています。修繕積立金が月額6万円だとすると、専有面積が60㎡だ仮定して、㎡あたりの修繕積立金は1000円という計算になります。ファミリーマンションで200円程度が一般的ですが、その5倍ということになると高すぎるようにも思います。駐車場代も含めて、家のローンがなくても毎月15万円の支払いは、やはり厳しいものがあります。タワーマンションには、高額所得者が多く住んでおり、3万円程度の値上げはたしたことがないのかもしれません。

 タワーマンションは、高層階の住人と低層階の住人で、所得にも違いがあり、意思決定が難しいと言われていました。マンションを買うときは、管理費や修繕積立金・駐車場代等も含めて、検討することが重要です。


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