top of page
執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

50代から考える実家の相続 「その土地いりません」と言いたい時に



 2024年6月30日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。


「「この方法でダメだったら、ずっと畑を手放せないと思った。正直、ホッとした」

 千葉県内に住む男性(59)はそう話す。農業を営んでいた父が86歳で2018年に亡くなり、6筆の農地を相続。農業を継がず、会社員生活を送っていた男性にとって、使い道に困る土地「負動産」だった。

 うち5筆は近くの農家が引き取ってくれ、自宅から車で5分ほどの1筆だけが残った。初夏から秋に草がすぐに生い茂り、草刈りが重荷になっていた。

 農地取引には地元の農業委員会の許可が必要で、宅地のように簡単には売れない。さらに、大正時代に祖父が取得したこの土地は、当時の事務手続きのミスからか、土地の形や位置を記した公的な図面(公図)がない。処分がむずかしくなる悪条件が重なっていた。


 頼みの綱として男性が使ったのが、国に引き取ってもらう方法だ。

 相続土地国庫帰属制度と呼ばれ、昨年4月にスタート。建物のない宅地、農地、山林などが対象になる。売買でなく相続で受けついだ土地だと、国に一定のお金を払って手放せる。境界がはっきりしない、担保権が設定されているなど対象外となる条件もあるが、負動産の新たな処分法として注目されている。

 男性は制度が始まった直後の23年5月、さっそく申請した。現場の写真を撮ったり、パソコンで書類を作ったり。手間はかかったが、窓口となる法務局に相談して準備した。申請すると、書面審査や現地調査が始まる。「承認されるかどうかずっと不安な気持ち」で待っていたところ、9カ月後の24年2月、申請を認めるとの知らせが届いた。

 277平方メートルの土地の引き渡しにかかった費用は、審査手数料1万4千円と、国が土地を管理する費用にあたる負担金53万3千円。「安い額ではないが、土地の処分は自分の子や孫の世代に残したくない宿題だった」と男性は振り返る。


 法務省によると、今年5月までの申請は宅地や農地、山林など全国で2207件。審査には半年から1年ほどかかる。審査済み案件のうち、国への引き渡しが決まったのは460件、条件を満たさずに却下・不承認となったのが23件。このほか、別の有効活用法が決まったり、承認はむずかしいと判断したりしたことによる、取り下げが266件あった。

 申請への相談は今も月1千件ほどあり、法務省の担当者は「関心を持っている人は多い」とみる。


 制度がつくられた時、引き渡しの条件が「厳しすぎる」との声があり、使い勝手について専門家の意見は割れた。スタートから数百件の相談を受けてきた荒井達也弁護士は「事前の予想以上に、承認されている比率が高いと感じる。負動産の処分法として、有効活用できる方法だ」と話す。

 不動産業者に土地の処分を相談したが、「売却は難しい」と門前払い。そんな悩みを抱えた多くの人が、荒井弁護士のもとを訪れる。「お金を払ってでも負動産を何とか処分したいと思う人が、最近とても増えている」という。


 負動産の処分はこれまで、民間での取引、相続放棄、自治体への寄付などの方法があった。寄付だとお金はかからないが簡単には受け入れてもらえない、相続放棄だと手続きのハードルは低いが、プラスの財産も含めてすべて受け継げない。それぞれ一長一短があり、新たな枠ぐみとして国庫帰属が加わった。

 この制度が生まれたのは、持ち主のわからない土地が増え続けているためだ。その規模は九州の面積に及ぶほど。所有者不明だと十分に管理できずに事故の原因となったり、災害復旧や公共用地取得に支障が出たりする。不明となる主なきっかけが相続のため、この際に国が引き取るしくみが用意された。


 国庫帰属とは別に、政府は今年4月から国民に対し、これまで任意だった相続土地の登記を義務づけた。4月以前に発生した相続にも適用され、怠ると罰則がある。

 こうした動きに乗じ、消費者トラブルを招く新たな商法も広がる。

 「国の制度が変わり、売れない山林を放置すると家族が迷惑すると言われ、100万円の費用で引き取ると勧誘された」(80代男性)

 「相続登記義務化の説明とともに、原野の売却サポートを案内された。夫が40万円で契約したが、解約したい」(70代女性)

 国民生活センターには最近、そんな相談が寄せられている。1970~80年代の原野商法で不要な土地を抱えた人は多い。子世代への相続の時期を迎え、土地の処分を望んで新たな二次被害にあう状況だ。

 こうした相談は17~18年度に年1500件ほどあり、その後は落ち着いた。ただ、最近は制度変更の案内で危機感をあおる手口が、目立ってきたという。


 負動産を巡り、民間業者による引き取りや、売り手と買い手をネットで結びつけるマッチングサービスが増えた。国庫帰属は条件が厳しいと強調し、自社サービスへと誘う業者もある。当初の約束より高い費用を請求されたり、実際には所有者変更が登記されなかったりして、トラブルになりやすい。

 荒井弁護士は「土地の引き取りやマッチングサービスは、法規制がないなかで様々な業者が乱立している。悪質な業者を見極めるのは難しく、利用は十分に注意した方がよい」と呼びかける。

 国庫帰属だと安心できるが、引き取る国の側に有効活用のめどはない。国民の負担で長期間、管理し続けることになる。

 何でもかんでも引き取れない一方で、条件が厳しすぎると利用されない。微妙なバランスをはかりながら、国が土地を引き取る異例の制度は動き出した。

 人口が減り続けるとともに、地方より都市に集まる流れも止まらない。離れた実家の親から受け継ぐ土地の処分に困る人は、さらに増える。

 「その土地、いりません」と思ったときにどんな手立てがあるか。いざ相続のときを迎える前に、一度考えてみるとよさそうだ。」


 相続土地国庫帰属制度は認められるケースが少なく活用が難しいと言われていましたが、この記事を読むと、比較的利用しやすいように運用されているようです。不要な土地を所有している人は、活用を検討してみてはいかがでしょうか。


閲覧数:7回0件のコメント

Comments


bottom of page