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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

6千万円の大規模修繕、3分の1で出来た? マージン取る管理会社も

更新日:2022年3月28日



 2022年2月15日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。


「「工事費が高いと思う。検証が必要ではないか」

 1年ほど前。関西のあるマンションでは、住民や管理会社の担当者らが集まり、翌年の実施をめざしていた大規模修繕工事について話し合っていた。参加していた住民の男性は、ふつふつとわいていた疑問を口にした。

 大規模修繕工事は、経年劣化などに対応するため、マンションごとに作成した計画に基づいて行われる。国土交通省のガイドラインなどによると、一般的に12~15年程度の周期をイメージしている。50戸規模のこのマンションは築25年以上で、2回目の大規模修繕の時期を迎えようとしていた。

 所有者でつくる管理組合は、設計や監理など中心的な役割を担うコンサルタントを選び終え、施工をどの業者にするか決める段階になっていた。

 受注する業者の最終提示額は、6435万円。ただ、疑念が生じた。

 約15年前の1回目の大規模修繕工事は3045万円。工事業者は同じ、工事内容もほぼ同じだった。コンサルは住民に「安全対策のための費用が上積みされ、人件費が高騰している」と説明したが、釈然としなかった。


第三者に相談すると

 「工事費用は割高と言わざるを得ません」

 昨年、工事に疑問を持った別の住民は、マンション管理コンサルタント会社「ベタープレイス」(大阪市)に相談を持ち掛けた。社長の広居義高さん(52)から返ってきたのは、そんな指摘だった。

 同社は、第三者の立場から、管理組合にマンション管理のアドバイスをしている。このマンションの相談には半年ほど無料で応じ、昨秋から月数万円の顧問料を得ている。

 このマンションについて、広居さんは工事の項目、使用している材料などから、「工事費用の相場は、1戸あたり80万~100万円」と見積もる。国交省の大規模修繕工事についての実態調査(2017年)でも、2回目の平均は約98万円。このマンションでは、実際は120万円を上回っていたという。

 工事内容を精査した広居さんが、施工業者に確認したところ、実際には作っていない仮設トイレやつけていない看板の費用が、工事代金に盛り込まれていたことなどが分かったという。

 住民の男性は「住民は工事の素人。業者側に割高な工事を押しつけられても分かりません」と話す。マンションの工事は昨夏には終わった。ただ、工事後の点検ですぐにサビが見つかるなど、工事の品質にも疑問符がついた。

 このため、住民側は「引き渡し」を受けていない。

 コンサル、施工業者ともに取材に対し、「先方と協議中でコメントは差し控える」と回答した。


管理では利益が出ず…

 分譲マンションの問題を考えようと、建築家や研究者らで1991年に設立した「日本マンション学会」の元会長で弁護士の折田泰宏さんは「大規模修繕にまつわる問題は、学会を立ち上げた30年前から指摘されてきた」と指摘する。

 折田さんによると、月々のマンション管理自体は、管理会社にとって利益が出づらい。そこで、共用部の壁の補修など小規模なものから大規模修繕まで、工事の際に「リベート」のような名目で、工事業者から利益を吸い上げる慣行が生まれた。

 具体的には、管理会社と関係する業者に工事を任せ、割高な工事代金をマンション側に請求した上で、バックマージンを得るなどの方法があるという。

 また、大規模修繕については、この5年ほど、第三者のコンサルタントが関わるケースでのトラブルが目立つようになったという。設計コンサルは、第三者の立場でより適切な工事を監理することが期待されていたが、立場を悪用した形だ。

 折田さんによると、特徴的なケースはこうだ。管理会社と関係のあるコンサルが、極端に安い価格を提示して落札し、工事を取り仕切る。施工業者を入札する場合は、息のかかった会社を選ぶ。施工業者はコンサルに、コンサルは管理会社にリベートをおさめる、というわけだ。

 折田さんは「管理会社は、マンション側の積立金や住民の情報を知る立場にあり、いわば『元締』のような存在。コンサルも、管理会社の顔を気にします」。リベートは「10~20%程度」が一般的だという。

 こうした事態は業界誌などで指摘され、国交省も把握した。マンションの関連団体などに向け、17年には「一部のコンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作」を行っているなどと注意を促す文書を出している。

 管理会社や設計コンサルが割高な工事代金を設定したり、リベート名目で金銭を得ることは、「明らかに不当な額でなく、適切な契約がなされていたり、きちんと会計処理されていれば、これらを取り締まる法律はない」と折田さん。しかし、「圧倒的な知識や情報などを背景に住民に不利益をもたらしていることは問題。業界は慣行をあらためるべきだ」と話す。


割高な工事、修繕積立金値上げ

 割高な工事をきっかけに、修繕積立金を値上げせざるを得なくなったところもある。

 「次年度の修繕積立金の改定案について、どのように思われますか?必ず一つに○を記入して下さい」

 20年7月、さいたま市内のマンション(築27年、38戸)の住民のポストに、管理会社が作成したA4一枚のアンケートが届いた。「値上げしない」という選択肢はなく、「1・6倍」か「2倍」の二択だった。翌年4月の総会で、管理会社から「1・6倍で多くの賛成を頂いた」と説明を受け、結果的に同年9月から1・3倍の値上げが決まった。

 住民の中心は60~70代。毎月5千円ほど値上がりすることになった70代女性は「医療費や介護保険料も値上がりする中、修繕積立金の値上げは我が家にとって一番の脅威」と漏らす。

 値上げのきっかけの一つは、大規模修繕工事だった。

 このマンションは、19年、6200万円かけて、外壁など2度目の大規模修繕工事を行った。4千万円の借金をして、修繕積立金は底をついた。

 だが、その後、専門家に調べてもらうと、1900万円ほどでできる工事だったと評価を受けた。

 理事長の男性は、管理会社が組合の積立金が底をついても値上げや借り入れを進め、割高で無駄な工事を勧めて、管理会社さえもうかればいいと考えているように感じていたという。

 「最大の反省は、これまで住民がマンション管理への関心がなかったことだ」と話す。

 大規模修繕工事の見積もり合わせでは、管理会社系列の建設会社が「A社」と書かれたものより300万円ほど安価だと管理会社から説明を受け、臨時総会で決めた。安価とする詳細な証拠を管理会社に求めることはしておらず、ほかの会社の見積もり合わせや会社からヒアリングなどもしなかった。

 これまでの総会などの議事録を見返すと、「放置すると資産価値が落ちますよ」と言われ、管理会社が提案する修繕案などがそのまま通ってきたことも判明した。


危機感が住民たちを動かした

 理事長は、今後のエレベーターや給排水管の更新などの日常の修繕計画が書かれた「長期修繕計画」を見ても、必要のないものや通常より価格の高い工事が多いと感じている。

 今年から31年までで計2億円の工事が予定されている。一方、借金を返済して残る積立金額は今後10年間で1億円。このままだと、1・3倍に修繕積立金を値上げしても、1億円が赤字になる計算になる。

 住民の男性は「このまま同じ管理会社だと、さらにどんどん工事などでむしり取られる。管理会社の変更など持続可能な管理の仕方を模索しないといけないと強く感じた」という。

 こうした危機感から、一部の住民が中心となって、専門家を講師に招き、マンション管理の勉強会を昨秋から始めた。マンションの現状や問題点を伝えるため、全戸にお便りを配布する取り組みも始めた。

 また、管理会社の変更を決め、植栽やエレベーターの保守管理などの一部の業務は、管理会社を通さずに管理組合と専門業者が直接契約して、費用を抑えた。

 理事長は「修繕積立金の値上げが決まったころから、住民らが顔を合わせて話し合うことで意識も少しずつ変わってきた。無関心、無知から脱却することが目標です」と話す。」


 この記事にもあるように、管理会社は管理業務だけでは利益が確保できず、マンションで発生する工事からも利益を得ようとしています。管理組合の味方のように振る舞いながら、あえて高い金額で工事を受注させる行為は、明らかな利益相反行為です。原因の一番は記事にもあるように、管理組合が無関心なことです。管理会社だけでは不安な管理組合は、セカンドオピニオンとして、マンション管理士や一級建築士等を管理組合顧問として活用することをお勧めします。


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