マンション等の高層建築物が建設されると、電波がビルに遮られテレビが受信できないエリアが発生します。そのため建物を建設する際には電波障害が起こっていないかを検査し、発生している場合には電波障害対策施設を設置して周辺住宅にもテレビが映るようにしていました。
特にテレビがアナログ放送だった時には電波障害は起こりやすく、多くのマンションで電波障害対策が行われていました。
電波障害対策として良く行われていた方法は、マンションの屋上に電波障害の発生する住宅用のアンテナを設置し、有線で各家庭まで電波を送るという方法でした。
アナログからデジタルにテレビ放送が変わり、電波障害の発生が少なくなった現在でも、その設備が残っているマンションもあります。
2001年に放送法が改正され、テレビのアナログ放送を2011年7月24日までに終えることが決定した頃から、新築マンションを建設する際に電波障害対策をどのようにするかが、マンションデベロッパーの間でも議論されるようになります。共聴アンテナ設備を設置した場合、アナログ放送の対応を行ってからその後にデジタル放送への切り替えを行わなければなりません。そのため作業が煩雑になり、マンション管理組合にも迷惑をかける可能性が出てきました。
こうした事情から、2000年代前半から電波障害対策はケーブルテレビを使うことが増えました。ケーブルテレビならデジタル化に関係なく、電波障害対策ができるうえに切り替えなどの手間もかからないからです。ケーブルテレビ会社に20年分の費用を払えば、あとはデジタル化の対応など全てケーブルテレビ会社が行ってくれるからです。
最近発生している問題は、このケーブルテレビの20年という契約期間が切れたことに発生しています。ケーブルテレビによる対策は、90年代はさほど多くありませんでした。20年分の受信料を前払いするというのが事業主にとって負担が大きかったので、共聴アンテナ施設で対策していたからです。しかし前記のように2001年以降は、ケーブルテレビによる対策が急速に増えていきました。
2001年に竣工したマンションの電波障害対策は、今年で20年になります。これまでテレビを見ていた人のところにケーブルテレビ会社の人が突然現れて、もうすぐ契約が切れるので契約を更新しませんか?と営業に訪れるのです。20年前のことを覚えていない人も多く、なんでテレビを見るのに今後はお金がかかるのかと驚いてしまいます。そしてマンション建設が原因でテレビが見られなくなったのだから、マンション側が払うように言いに来る人がいます。こうしてマンションの管理人さんのところに、近隣からの文句が集まるというケースが出ているようです。
また共聴アンテナ設備を残している場合、使っていない電波障害対策施設が老朽化してトラブルになることもあります。戸建に設置している保安器とケーブルが老朽化して外れてしまい、庭先にケーブルが落ちている状態で、マンション管理組合には、それが自分たちの所有物だという認識がなく、戸建ての所有者からケーブルの撤去を求めらてトラブルになるケースもあるようです。使っている電波障害対策施設であればマンション管理組合も電気代などの項目に出てくることもあるので、自分たちの施設という認識があります。しかし使わないことを何代も前の理事会が決定し、引き継ぎも不十分なままの管理組合では自分たちの所有物という意識が希薄になっているのです。このように地デジ化によって電波障害は減りましたが、電波障害対策をめぐるトラブルは今でもちょこちょこ起こっています。
マンション管理組合は過去の契約書等を確認し、電波障害対策を行ったことがあるのか、または現在も行っているのか、その契約内容はどうなっているかを把握しておく必要があります。
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