2022年2月11日の東洋経済オンラインの表題の記事を紹介します。
「都内に住む50代の自営業の男性は昨年、雑誌で一目ぼれしたEV(電気自動車)を購入した。しかし、実際に使ってみると、ガソリン車に比べて煩わしいと思う点がある。充電の問題だ。
男性が住むマンションにはEV用の充電設備がないため、普段は急速充電器がある近くの自治体の役所に立ち寄って、充電しているという。急速充電とは言っても、100kmほど走るだけの電気を充電するには30分近い時間がかかる。仕事とプライベートで毎日車を使うため、4日に1回は充電する必要があり、それが非常に面倒だ。「自宅のマンションに充電器がありさえすれば、こんなに無駄な時間を費やさずに済むんだが」と男性は嘆く。
充電器の設置数を10年で5倍に
カーボンニュートラルに向け、世の中では「本格的なEV時代の到来」が叫ばれている。日系自動車メーカーも電動化の目標を相次いで発表し、EVの販売に本腰を入れ始めた。しかし、充電インフラの普及なしにEVの本格的な普及はありえない。
地図情報大手のゼンリンによると、2020年度末時点で導入済みの充電器は全国でまだ2万9000基ほどに過ぎない。そこで経済産業省は2021年に発表したグリーン成長戦略の中で、その数を2030年までに5倍の15万基にまで増やす目標を掲げている。
ここで言うEV用の充電設備は大きく分けて2種類ある。まず1つ目は、出力が高く、短い充電時間で済む急速充電器。もう1つは出力が低めで、充電時間が長い普通充電器だ。前者は導入コストが工事費込みで1区画あたり少なくとも300万円近くかかり、主にパーキングエリアなど業務用の充電ステーションで導入されるケースが多い。一方、後者は主に住居といった停車時間が長い場所での使用を念頭に置いたものだ。
経産省の目標では、2030年までにこの普通充電設備を12万基にまで増やす計画になっている。自宅に専用の充電設備があれば、夜間など自宅にいる間にフル充電でき、よほど遠出をしない限りは出先で困ることもない。
しかし、そこで問題になるのが、自宅がマンションのケースだ。戸建て住宅であれば、家主の意思で充電設備を導入できるが、マンションは家主が所有権を持つ分譲でも導入のハードルが高い。共有設備となるため、管理組合の総会で住民の合意を取り付ける必要があるためだ。
普通充電器の導入にかかる費用は工事代を含めて1区画あたり数十万円。現状ではまだEVの所有者自体が非常に少ないため、ほとんどの住民にとって、EV用充電器の導入は「今の自分には何のメリットもない設備投資」でしかない。当然の如く、そのために修繕積立金を充当することに住民の合意を得るのは難しい。
自らの体験から起業に至る
こうしたビジネスチャンスを見出し、起業した企業もある。2018年設立のユアスタンドは、マンションや職場での普通充電器の導入・運営をサポートするベンチャー企業だ。社長の浦伸行氏自身がマンション暮らしでEVを購入し、充電の煩わしさを体験したことから起業に至ったと言う。
マンションの屋内外や地下の駐車場など、あらゆる場所に充電器を設置することができる
(写真:ユアスタンド)
同社が提供するのは、充電設備の運用に関わるサービスだ。EVを所有する住民は専用のアプリであらかじめ充電器を利用する時間を予約し、アプリ上で決済もできる。充電サービスの利用料は、設備導入コストや電力会社に支払う電気代を勘案して1時間あたりの料金を管理組合が決めることができる。3キロワット出力の充電器で1時間あたり100円前後、6キロワット出力で1時間あたり180円前後に設定されることが多いという。
収入のうち9割は管理組合に入り、残り1割をユアスタンドが運用代行手数料として徴収する仕組みだ。実際に充電設備を使用する住民が支払うサービス料で初期投資を回収する設計で、こうすることによって全住民の理解を得やすくしているわけだ。
ユアスタンドの浦社長は、「マンション暮らしのEV所有者にとって、どこで充電するかは非常に悩ましい問題。自宅のマンションで基礎充電ができさえすれば、わざわざ出先で充電ステーションを探さずにすむ」と語る。
時期尚早で見送られるケース
「充電器導入の提案から1年以上動いてきて、ようやくメドがつきそうだ」。そう話すのは、PHV(プラグインハイブリッド車)を所有する都内マンションの理事会メンバーの男性だ。
2020年8月、男性は「充電器の設置検討のお願い」を理事会に提出し、マンションの駐車場の区画に充電器を設置することを提案した。今年3月に開催される管理組合の総会で正式に承認されれば、年内に2区画分の充電器を設置し、運用が開始される予定だという。
ただ、こうしたマンションはまだ少数だ。ユアスタンドの浦社長によると、「最近になってマンションの管理組合からの問い合わせが大幅に増えたが、実際に導入に向けて話が進む案件はまだ限られる」と話す。
一番多いのは、管理組合で検討課題に上った後、住民たちの話し合いで「(まだEV所有者がほとんどいないので)時期尚早」と見送られるケースだという。
EVユーザーは自宅マンションでの充電できる環境を切実に求める一方、EVを持たない住民からの理解を得ることはなかなか難しい。経産省の2017年度の調査では、国内のEV所有者のうち9割は戸建て住民で、集合住宅に住む所有者はわずか1割にすぎなかった。
マンション住民の充電問題は、EV普及の大きな壁になる可能性もありそうだ。」
このブログにもあるように、プラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車が多く販売されるようになってきましたが、マンションの場合は充電設備の設置が難しく普及が図られていない状況です。マンションの契約電力を考えると急速充電器の設置は難しく、200Vの普通充電設備の設置が現実的です。特に、機械式駐車場の廃止を検討している管理組合は、機械式駐車場で使用していた動力を電気自動車用の充電コンセントに充当できるため、契約電力の増加が必要でなく効率的に設置可能だと思います。
今後ますますの普及に向けて、充電設備の補助金制度も、行政には是非検討してもらいたいと思います。
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