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  • 執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

「いい管理人さん」がマンション管理会社にとっては不都合な理由

更新日:2021年8月31日



 2018年4月6日のダイヤモンドオンラインの株式会社シーピーアイ代表取締役須藤桂一さんの表題のブログを紹介します。


「管理会社に委託したマンション管理業務で、居住者が最も身近に目にするのが管理員の日々の働きだ。お住いのマンションの管理員の働きぶりはどのようなものだろうか?


 「よい管理員とは?」と言っても、管理会社にとってか、居住者にとってかで答えは変わってくる。

 またマンションの規模やグレードによっても管理員の役割は異なる。大規模である程度以上のグレードのマンションなら窓口に常駐し、日常掃除などは専門業者に任せ、自身は業者対応、居住者対応に専念することになるし、さらにグレードが上がれば、24時間対応のコンシェルジュ的な業務が中心となるといった具合だ。

 しかし平均的なマンション、例えば 、大都市郊外で50戸程度のミドルクラスのマンションなら、週3回程度、日常清掃、点検をこなしながら、来訪する定期点検業者などの対応、ごみ収集の後始末に当たる、といったところが普通だろう。

 このような平均的管理員像を念頭に、管理組合にとってよい管理員とはどのような人なのかを考えてみたい。


管理会社にとってのよい管理員とは

 実は「素晴らしい、行き届いた管理員」では困るというのが、管理会社の本音だ。

 DIYが得意で、簡単なことなら業者任せにせず自分で直してしまう。自発的にサービス残業をしてくれる。果ては修繕のコストダウンまで提案してくれる。出勤日でなくても理事会や総会に自発的に陪席してくれる。こんな、居住者にとってはありがたい管理員は、管理会社には「都合の悪い管理員」だ。

 居住者がフロント担当者より、その管理員に信頼を寄せるなら、その管理員は会社から「やるな!やりすぎるな!」と注意されるだろう。あまり管理組合側に立たれては困るということだ。


 実例を挙げてみよう。

 Aマンションの管理員は元自衛官。退官後、まだまだ社会貢献したいと、自宅近くのマンション管理員を引き受け、その働きぶりでマンションでは大好評だった。ある日、翌日は大雪の天気予報に、なんと前日から管理員室に泊まり込み、雪の朝に備えてくれたという。

 居住者にとっては至れり尽くせりで大いに感謝されたのだが、管理会社にとっては完璧に「やりすぎ」。というのも、居住者がこんなサービス水準を味わえば、それを今後も求められることになるからだ。


 管理会社から見た理想の管理員像とは、清潔で挨拶ができ、愛想が良く、整理整頓が普通にでき、そして余計なことはしない、しゃべらない人だ。

 このような人が、朝、少し早めに来てエントランスホールを掃除しながら、出勤する住人を気持ちよく送り出し、玄関前に集まる集団登校の小学生たちをさりげなく見守ってくれるなら、居住者も満足してくれる。


 しかし、それ以上では困るのだ。


管理会社を変えても管理員には残ってもらったBマンション

 数年前、関東圏、東京のベッドタウンの30戸ほどのBマンション管理組合から、管理会社変更の相談を受けたことがある。

 本連載で紹介してきたような典型的なダメ管理会社だったが、唯一評判が悪くなかったのは管理員だった。

 明るく、誠実で、裏表がなく、電球の球切れなど誰かが指摘する前に気が付いて交換してくれるような、気の利いた方だった。理事長さんも「管理会社は変えたいけれど、Cさんのような管理員はそういないだろうなあ」と言われるので、私は「新しい管理会社を決めるときに、Cさんを管理員として、残してもらうことを条件にすればいいのですよ」と申し上げた。

 管理員は、マンションの近くで現地採用される契約あるいはパート社員である場合がほとんどなので、この申し出は新管理会社としては採用広告を出す手間もコストも省けてありがたいのだ。

 結局、選ばれた新管理会社の契約社員として定年まで務められ、さらに管理組合の希望で、管理会社が定年の規定で雇えなくなった後も、管理組合との直接契約で数年は働いてもらったということだ。

 ここまで管理組合と相性の良い管理員さんを得られたのは幸運だが、一方で管理会社としてはやりにくい面もあったはずだ。

 事実、Cさんは管理組合との直接契約となる前から、新管理会社よりも管理組合に帰属意識を持っていたので、自分の子どもほどの年齢のフロントマンにはもちろん、その上司にも、管理組合側に立った遠慮のない発言で、管理会社にとっては「煙たい存在」となっていた。

 この管理員さんが辞めた後、管理会社は新聞折り込みで募集した新しい管理員を派遣して主導権を取り戻したが、居住者の満足度はイマイチだ。


マンション管理組合は管理員を味方につけよう

 管理員は管理会社にいろいろな不満を持っている。

 正社員であるフロントマンはろくすっぽマンションには顔を出さず、連絡は本社からFAXや電話で指示を出すばかりで、居住者からのクレームには、法定最低賃金額に近い時給で働いている自分が矢面に立たなければならないからだ。

 多くの場合、彼らにとってフロントマンは自分の息子、娘ほどの年齢だ。もちろん、自分のお父さん、お母さん世代の管理員の体を気遣い、親切に接するフロントマンも少なくはないが、中には上から目線で、彼らの働きをお年寄りの小遣い稼ぎか、暇つぶしのように軽く見ている者もいる。

 管理員の交代によって「管理の質」が変わるという問題もある。高齢者の職場でもあり、短い期間での交代や病欠に伴う臨時管理員による業務ということも起こるが、そのような場合に備えて、管理員にお願いしたい仕事マニュアルや巡回図などを用意しておけばスムーズに引き継ぎができるだろう。


 管理員の立場は微妙である。

 やり過ぎれば会社から文句を言われ、やらなければ居住者から非難される。居住者の声に耳を傾ければ会社からは煙たがられ、「知らぬ存ぜぬ」の態度では居住者からは管理会社の窓口なんでしょ?と嫌味を言われてしまう。


 そこで、管理組合としては、管理員を味方につけてしまうのが得策だ。

 もちろん管理員は正規雇用ではないといっても、管理会社の社員なのだから、完全に管理組合側に立ってもらうということはできない。

 しかし、BマンションのCさんの例もあるように、本人に対する信頼があれば、管理会社を変えても続けてもらうことも可能なのだ。このような“プロ”の管理員なら、雇用主とはいえ一方的に管理会社の意思だけに従順に従うロボットのような業務遂行にはならない。

 だから居住者も、管理員を「業者が来た時には対応してくれ、管理会社に言いたいことがあれば取り次いでくれる、便利な掃除人」扱いはしない方がいい。

 むしろ、管理組合の知恵袋の一つとして、管理組合側、前回の話でいえばコミュニティ側に迎え入れることをお勧めしたい。実際、管理員の多くは近隣に住んでいる普通の生活者だ。同じようなマンション暮らしをしている人も多い。すでに社会の第一線を離れているリタイア世代がほとんどだが、それは裏を返せばフロントマンよりも、ほとんどの居住者よりも社会経験が豊富だということだ。

 実際、BマンションのCさんは、定年まで大手電機メーカーのエンジニアとして活躍しておられたという。今では大好きなゴルフ代の足しにと管理員を続けているのだ。Cさんは、「絶滅危惧種」と言われるほど、なかなか見かけることができないタイプの管理員さんで、マンション管理組合は、こんな貴重な人材を放っておいてはいけない。


 管理会社の対応に疑問があった場合や、管理会社の変更をも視野に入れた改善が必要だと感じられた時に、管理会社基準の理想的管理員ではなく、Cさんのような、ほぼマンションコミュニティの一員となっている管理員の存在があれば、マンション管理組合には力強い。」


 今、管理会社の変更業務を行っている管理組合も、唯一の条件として、管理員さんは継続雇用ということで話を進めています。それほど管理員さんは信頼され、入居者から頼りにされている存在だということです。


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