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  • 執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

「役員いりません」 マンション管理「理事会なし」方式の魅力と魔力

更新日:2023年6月16日



 2022年11月20日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。


「分譲マンションを買った人の悩みの一つが、管理組合の役員に就任するかもしれないこと。高齢になったり、子育てや共働きで忙しかったりと、様々な理由で引き受けられない人がいて、なり手不足が課題だ。そんななか、役員選びは不要とうたう新たな管理サービスが出始めている。なぜそんな「負担」軽減をできるのか。カラクリを探った。  まず取材で訪ねたのは、「タラタタッタタ♪マンションのことなら」のCMで知られる長谷工グループ。入居者の不安や負担を減らして気軽に住めるようにと、新サービス「smooth-e(スムージー)」を展開している。昨年8月から試験的に始め、今年4月から管理組合への提案を本格化。今は首都圏や関西の新築~築10年ほどの15物件に提供している。  「サービスの出発点は、役員になる負担感やなり手不足など入居者の困りごとの解決です。新築マンションを手にした喜びもつかの間、役員に選任されて、不安に思う顧客の姿を見てきました」。運営する長谷工コミュニティの恒吉正俊担当部長はそう話す。  分譲マンションを買うと、住人(区分所有者)は管理組合のメンバーになる。運営の要となるのが約1~2カ月ごとに開く理事会。複数の役員(理事)が抽選や輪番で選ばれ、その代表が理事長(マンションの管理者)になる。会社にたとえると、理事長は社長、理事会は取締役会の位置づけだ。  スムージーを始めると、理事会をなくすので役員がいらず、理事長代わりの管理者に長谷工コミュニティが就く。同社は管理組合から管理を受託したこれまでの役割と、委託する側のマンションの代表者としての新たな役割と、1社で2役を担う。  このふしぎな関係は不都合が生じやすい。例えば、マンションを代表する立場では管理の費用を抑えた方が住人に喜ばれるが、管理会社としては収益をしっかり保ちたい。利害関係が対立する「利益相反」になる。  対策として新たなチェックのしくみを築く。お金の不正がないかを外部の監査法人が点検したり、住人や外部の専門家を「監事」に選んだり。監事は会社でいうと監査役のような役目。適切な運営を確かめる立場だ。  住人への情報公開も進め、運営の透明化を図る。スマホの専用アプリを使い、日常的な管理や設備の状況を定期報告。自社に工事を出す際はオンライン投票などで賛否を問う。アプリ上には投稿機能を設け、住人が意見を伝えやすくした。「駐輪場に自動空気入れがほしい」などと声があがれば、ほかの人もアプリ上で考えを表明できる。関心の高い提案は住人全員で投票し、賛成が多いと実行へ。すべて会社側におまかせでなく、管理への関心を持ち続けてもらうしかけだ。  これまでの管理サービスのグレードアップ版との位置づけで、追加費用は1戸あたり月300~1千円ほど。チェック役を監査法人に頼むとさらに年10万~20万円ほどかかる。導入にはマンションの規約改正が必要で、管理組合の総会で4分の3以上の賛成がいる。費用や手続き面のハードルはあるが、管理物件から問い合わせが多くあるという。 なぜ今広がる? 第三者管理方式  住人が理事長にならない方式は第三者管理方式と呼ばれ、実はこれまでも一部であった。大半は投資用ワンルームやリゾート地のマンション。自ら住む所有者が少ない、遠方で暮らす人ばかりで理事会が成り立ちにくいなどの理由で、管理会社が引きうけていた。  マンションは住人の大切な資産で、理事会をつくって主体的に管理する。それが基本の姿。第三者管理は気楽さが魅力だが、管理への関心が薄れたり、利益相反による不正の温床になったりする「魔力」も秘める。なぜ今、都市部のマンションなど一般的な物件でも広がり出したのか。  なぞを探るべく、もう1社取材で訪ねた。大和ハウスグループの管理会社・大和ライフネクストで、「タクスタイル」という名前で今年から始めた。理事会をなくして同社に管理を託すサービスで、首都圏の7物件で提供中。来春までに30物件ほどへ拡大をめざす。  「理事会運営に限界を感じるマンションもあります」と、サービスを担当する柏勇次さんは話す。なり手不足から同じ人が10年以上役員を続けたり、選ばれても理事会に出ない『幽霊役員』がいたり。出席者数がそろわず理事会が成立しない物件もある。管理会社は住民の理事会運営を支える秘書役のような仕事も担うだけに、対応に苦慮してきた。  導入すると、同社を管理者とする新たな契約の費用がかかる一方で、これまでの委託契約の中から理事会支援業務がなくなって費用が下がる。約70戸以上の規模のマンションだと、追加の負担はほぼかからないという。  新サービス開始の背景には、2020年の民法改正もあった。利益相反の行為であっても、依頼者側が事前に承諾していれば認められると明文化された。同社へ託すことを承諾しない人が増えれば、スムーズに元に戻せるしくみも整え、開始にこぎつけた。柏さんは「今まで画一的だった管理サービスを多様化したい」と話す。  各社の新サービスの背景には、コロナ禍による社会の変化もありそうだ。オンラインの会合が広がり、IT機器を使った話し合いや意思決定が自然になった。長谷工の恒吉さんは「検討を始めたのはコロナ禍前でしたが、感染拡大で対面の理事会が難しくなったこともあり、開発に拍車がかかりました」と振り返る。長谷工や大和のほか、首都圏などで分譲マンションを手がける三井不動産グループも「試験的に取り組んでいる」という。  理事会運営の限界、民法改正、コロナ禍に加え、マンションの投資商品化が進むことも無縁でない。  不動産コンサルタント会社・さくら事務所の土屋輝之さんは「高級分譲マンションは、海外投資家の購入がかなり増えています」と話す。マンションによっては、役員選出をすると半数が外国人のこともあるという。言葉の壁があったり、保有者が海外にいたり。理事会運営など管理面での不安を感じる日本人購入者もいて、「多少高くついても管理の心配がいらない第三者方式は、販売側にとって新たな付加価値となった」とみる。

グループ丸抱えや管理への関心低下も  一方で課題も多い。チェック機能を強化しても、工事発注を自社グループで丸抱えしやすい構図は変わらない。費用を抑える規律が働きにくい。内部管理態勢がずさんな会社が参入すれば、管理組合のお金の着服などが心配だ。住人側も管理への関心を失って丸ごとお任せとなりかねず、これまで築いた運営ノウハウをいったん失えば元に戻しにくい。  さくら事務所の土屋さんは「管理組合は安易に飛びつかず、メリットとデメリットをよく見極める必要がある。また、第三者方式を担う管理会社側もしっかり対応しないと、ただでさえ危ういマンション管理がさらに危うくなる」と指摘する。  第三者方式は長谷工や大和でも管理物件の1%に満たないが、今後広がりそうだ。所有者の高齢化や国際化、物件の賃貸化や投資商品化はとまりそうにない。理事会での合意形成がむずかしい管理組合は増えていく。  大きなマンションとなれば、住人は千人超で小さな自治体並み、扱うお金は億単位で中小企業並み。住人間のトラブル対応から会計・契約・法令・建築の知識まで、役員が判断を求められることは幅広い。なのに、輪番や抽選で「素人」が選ばれ、重荷となりやすい。  理事会は適切な管理の要で、役員就任は「負担」でなく、みずからの資産やコミュニティーに目を向けるきっかけ。そんな大原則があてはまる物件ばかりでないのも現実だ。管理の大原則を揺るがす魔力も秘める第三者方式。その行方からしばらく目が離せない。」


 マンションが古くなってくると、組合員も高齢化し、理事のなり手不足から、この記事にあるような「第三者管理方式」が増えてきます。この記事によると、今は全体の1%程度とのことですが、今後増えてくる予想です。第三者管理の採用にあたっては、記事にもあるように管理会社のいいようにされないためにも、監事等を組合員やマンション管理士等にゆだねることで、しっかり管理会社を監督することが重要です。

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