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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

「長生きできない家」が多い地域の特徴は?47都道府県ランキングで判明



 2024年5月2日のダイアモンドオンラインの表題の記事を紹介します。


人は寒さに弱い、どうしたら長生きできるか

 人は冬に亡くなる確率が高い。「冷えは万病のもと」と言われるように、人間は寒さに弱いからだ。日本全国で冬(12~2月)の死亡率は他の季節よりも18%も高い(人口動態統計による)。逆に、冬対策がしっかりできていれば、死亡する確率を下げることができる。計算すると、死亡率を他の季節並みにできたら、人は6歳延命することになる。死亡率を下げるためには、どんな対策をしたらいいのだろうか。

 冬の死亡率の増加は、特定の死因に偏って起こる。最も多いのは45.8%も増える「不慮の溺死及び溺水」で、お風呂場で起きている。これは主に「ヒートショック」によるもので、詳しくは後述する。

 次に多いのは、「急性心筋梗塞」32.1%、「心不全」29.9%、「脳内出血」29.1%で、循環器系と言われる症状が並ぶ。つまり、血圧の変動によって発症しやすくなるものだ。これ以外に、「糖尿病」29.8%、「肺炎」28.9%も高い。これらの持病がある人にとって、冬は要注意なのだ。

 「不慮の溺死及び溺水」の代表的なものにヒートショックがあり、自宅で発症することが多い。銭湯で罹患するという話を不思議と聞かないのには理由がある。厚生労働省の調べで、ヒートショックによる死亡者数は年間1.9万人に及ぶと推計されており、交通事故死の2610人(2022年)の7倍以上にものぼる。

 これは同年の死亡者数の約1.5%に相当し、冬場の風呂場で高齢者が発症し、帰らぬ人になることが多い。発症のメカニズムは、他の部屋よりかなり寒い風呂場で裸になり、熱いお風呂に入ることで、血圧が急変し、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすことだ。

 予防法としては、脱衣所やお風呂場と他の部屋との気温差を小さく保つことだ。銭湯の脱衣所は寒いとは言えない。このヒートショックをなくすだけでも、高齢者は寿命を3年ほど延ばすことができる計算になる。

 冬の死亡率は都道府県でかなり違う。それは日本の気候が多様だからだ。47都道府県で「死亡増加率」をランキングしてみた。ワースト3は岡山県・山梨県・香川県となる。地域としては意外かもしれないが、これについても後で考察しよう。


すごく寒いはずの北海道で冬場の死亡率が低い理由

 逆に、冬場に亡くなる人が減るのは唯一沖縄県(47位)で、その他の県はすべて冬場に亡くなる人が増加している。亡くなる人が減る2位は鹿児島県(46位)で、冬場に9.5%増加する。ちなみに、沖縄県の1月の平均最低気温は14度、最高は19度で、冬とは言えないほど過ごしやすく、鹿児島県は最低3度、最高12度なので、それほど暖かいとは言えない。同3位山形県(45位)、4位秋田県(44位)、そして5位に最も寒い印象がある北海道(43位)が入る。不思議に思うかもしれないが、このランキング結果には理由がある。

 ヒートショックの発生率が最も高い香川県(東京都健康長寿医療センター研究所)では、居間の温度が平均13.1度(スマートウェルネス住宅等推進調査委員会)で最も寒く、冬場の死亡率が高くなる割合は122.9%(人口動態統計)と、47都道府県でワースト3位となっている。これは、断熱されていない部屋が寒くなるケースが多いことが一因と考えられ、二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓が採用されている住宅の割合は21.1%(住宅・土地統計調査)で、低い方から11番目となっている。


 香川県と言えば、瀬戸内海の温暖な気候を想像するが、それが過信と装備不足を招いているのかもしれない。なぜなら、北海道はヒートショック死者数が沖縄に次いで2番目に少ないからだ。居間の室温は平均19.8度と高く、断熱性能の高いサッシ・ガラスは81.6%と最も高い。結果的に、冬場の死亡率が高くなる割合は111.9%と5番目に低くなっている。寒冷地は入念な寒さ対策が必須要件だけに、ヒートショックが少なくなっていると考えられる。

 冬に亡くなるのは外気が寒いのではなく、自宅の室内温度が低いことが原因だ。実は「自宅に殺されている」と言っても過言ではない。

 阪神淡路大震災でも能登半島地震でも、死因は圧死が最も多く、家の耐震性が十分あれば、多くの人が死なずに済んでいるはずだ。これと同じで、家の室内温度についてWHO(世界保健機関)は2018年、冬場の室温を18度以上に保つことを強く勧告している。冬場の室温が健康と寿命に影響するからだ。

 先進国ではおおむねこの基準が室内最低推奨室温となっている。なぜなら、18度未満では血圧上昇・循環器疾患の恐れ(たとえば、ヒートショック)があり、16度未満では呼吸器系疾患の恐れ(たとえば肺炎)があることが立証されているからだ(スマートウェルネス住宅等推進調査委員会調べ)。調べてみると、日本の居間の室温はかなり低い。先ほどの香川県はその中でも最低の13.1度しかなかった。


夏暑く冬寒い日本家屋の決定的な弱点

 肝心なことは、マイホームは冬をどう過ごすかをよく考えて、その性能を高めておかなければならないということだ。こうした家の冬対策にとって逆効果なものに「こたつ」がある。こたつがある場合とない場合を比較すると、こたつがある家では室内温度が18度未満に(寒く)なる確率が2.6倍上がり、運動不足になり、不健康になりやすいことがわかっている(スマートウェルネス住宅等推進調査委員会調べ)。暖を取るための付け焼き刃的な対策が逆効果になることもあり、本格的に改善するには家を「断熱」するに限る。

 日本の家が夏暑く冬寒いのは、断熱がされていないからである。外気がどうあろうと室内の温度を一定に保つには、熱の流出入を止めればいい。魔法瓶と同じ原理だ。冷たいものは冷たく、熱いものは熱くあり続けるようにするのだ。それが「断熱」だ。

 住宅において最も熱を通すのは窓になる。窓ガラスを二層・三層にしたり、その間の空間に特殊なガスを入れたり、サッシをアルミから樹脂に変えたりすればかなり変わる。二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓が設置された住宅の割合と冬場の死亡率の増加は、都道府県単位に相関する。(高知と九州・沖縄を除くが、R二乗0.95)その関係性から、設置すれば冬場の死亡率は10.3%下げることができる計算になる。


 日本の住宅の性能は数値化されていて、断熱等級は7段階あり、2025年4月から新築住宅は省エネ基準適合が必須となり、断熱等級は4以上となる。この等級を上げると減税や補助金が増額される仕組みになっており、光熱費も下がるので住宅コストをトータルで下げることになり、家を新たに購入する人にとって最重要事案になっている。

 また、既存住宅で断熱をどうするかも課題となる。今住んでいる自宅でも、もしくはこれから購入する中古住宅でも、断熱はやった方がお得だ。断熱リフォームは標準的な戸建てで300万円、マンションで120万円ほどかかるが、補助金と減税で最大満額の現金が返ってくる。ただし、その方法は複雑だ。対象商品と住んでいる自治体によって、補助金額や減税額が異なるからだ。スタイルアクトが運営する『住まいサーフィン』の会員には、お得な断熱をアドバイスしてくれるリフォーム会社を紹介している。

 それだけではない。新築は断熱性能が高いが、中古でも同等以上にしないと資産価値に影響することになる。断熱の効果は、健康面でも明らかな改善が見られる。断熱等級5以上の物件に引っ越した人の85%が、健康状態が改善したと回答している(近畿大学・岩前篤教授)。


人生と生活を変える「断熱リフォーム」の第一歩

 親に断熱リフォームをプレゼントした友人がいる。彼は商社勤務で海外経験が長く、日本の家が寒いことを危惧していたので、「まずは親の家から」と考えたらしい。これで、冬の不慮の死を回避し、1年を通じて健康増進を実現できるだろう。

 私が彼に断熱リフォームでは補助金と減税で最大10割が返ってきて、ローンも組めるという話をしたのが理由だが、彼の家庭では今、自宅の戸建を断熱する話が進んでいるそうだ。断熱は冬を迎える前にやった方がいいし、この手のリフォームは早ければ2時間程度の取り付け時間で済むものもあり、住みながらにして実施することができる。

 始めの一歩を踏み出せば、その後の人生・生活が変わってくることだろう。」


 「冬の死亡増加率」ランキングで1位が岡山県・2位が香川県と、ともに温暖な瀬戸内海地域が入っていることが衝撃です。冬場でも比較的暖かいため、住宅に断熱材を設置するという発想が少なく、またサッシのガラスはシングルガラスが当たり前という地域性の為かもしれません。

 今、国が進めている「先端的窓リノベ2024事業」では、工事費の約5割の補助金が支給されます。マンションの窓サッシに内窓を設置して約20万円。補助金と冷暖房費の節約で数年で元が取れます。その上、冬場のヒートショックのおそれも少なくなり、健康寿命も延びます。断熱リフォームは是非実施したいリフォーム工事です。


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