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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

ゼネコン再編に住宅大手の影 大成建設も中小M&A参戦

更新日:2022年2月18日



 2022年1月13日の日経新聞の表題の記事を紹介します。


「ゼネコンで再編の機運が高まっている。バブル崩壊後、各産業で業界再編が進む中、ゼネコンは横並び体質から抜けきれていないが、大和ハウス工業や積水ハウスなど異業種が中小のゼネコンを傘下に入れて開発会社として存在感を高める。危機感を抱いた大手も大成建設がM&A(合併・買収)への積極姿勢をようやく打ち出した。中小のゼネコンを取り込む、つばぜり合いが始まっている。


 JR大阪駅北側では大林組や竹中工務店が施工を手がける「うめきた」2期工事が本格化する

2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)に向けて大阪市内は再開発が活況だ。JR大阪駅北側の「うめきた」再開発地区に近いなにわ筋沿いでは、マンションなどの建築工事が進む。

 タワークレーンには竹中工務店など大手ゼネコンの社章が掲げられるが、開発主体は積水ハウスだ。関西では同地発祥の積水ハウスや大和ハウス工業などハウスメーカーがデベロッパーとして圧倒的な影響力を誇る。大和ハウスと積水ハウスは10年代以降、不動産開発や建築など多角化を進めてきた。特にゼネコンが有する大型建築物の施工管理能力を手に入れようと、業務資本提携や子会社化を進めてきた。


 大阪・なにわ筋沿いには、積水ハウスが開発主体となり竹中工務店が施工を手がけたタワーマンションや大型施設が立ち並ぶ

 大和ハウスはフジタを、積水ハウスは大阪の鴻池組を傘下に抱える。2社は10年度にゼネコン首位だった鹿島の年間売上高を逆転し、20年度の連結売上高は大和ハウスが4兆1267億円、積水ハウスが2兆4469億円と、ゼネコン首位の鹿島(1兆9071億円)を大きく引き離す。

 ゼネコンの営業担当者からは「入札に大和ハウスが来たら手を引く」との声が多い。特に近年開発が盛んな大型物流倉庫など、意匠性を求められない大規模テナントでのコスト競争力や意思決定の早さが目立つ。

 大和ハウス事業開発部の柴田英一常務執行役員は「ゼネコンを傘下に入れることで、住宅建築だけでなく、インフラから街づくりまで一貫してサービスを提供できる」と説明する。

 ハウスメーカーの攻勢に中堅ゼネコンが呼応した。コーナン建設は21年1月、木造住宅メーカーの住友林業の傘下に入った。住友林業は大型の木造建築の強化に動いており、熊谷組とも資本業務提携を結んで協業を進める。

 コーナン建設は1948年創業の関西を地場とする中堅ゼネコンだ。21年3月期の売上高が191億円で、関西と首都圏で学校や福祉法人などの校舎の工事が多い。


「売上高は1+1=2にならず」

 原真一会長は「地域密着で小回りが利く強みを保ちつつ、事業継続への安定した基盤が必要だった」と振り返る。すでに住友林業の受注や紹介による工事を2件手掛ける。需要が見込める大型木造建築の専門部署を創設し、住友林業から幹部や技術者を受け入れた。

 売上高1000億円を超えるゼネコン同士の大型合併は、21世紀に入って3件にとどまる。業界では「挙げる手が減るだけで一緒になるメリットが少ない」(大手ゼネコン経営者)、合併しても「売上高は1+1=2にならなかった」と、M&Aに否定的な声が多い。コーナン建設の原会長も「規模の大きいゼネコンの下に入れば吸収される」と、大手ゼネコンとは距離を置く。

 それでも大型再編を主導しようとする大手ゼネコンが出てきた。業界3位の大成建設だ。

 「証券会社やブローカーなどから、すでに案件が幾つか持ち込まれている」。大成建設の桜井滋之副社長は強調する。21年4月にM&Aやアライアンスなどの戦略立案を手がける「新事業企画部」を新設し、5~6人ほどの専属部員を中心に建設業界内でのM&A情報を収集する。

 大成建設は中期経営計画で「業界再編圧力の高まり」を掲げる。21年3月期に1兆4801億円だった連結売上高を31年3月期までに2兆5000億円に引き上げるために、通常とは別にM&Aに向けた投資枠を設けた。

 1兆円もの増収を目指すが、相川善郎社長は「5000億円程度はM&Aによる効果を見込む」と、同業他社へのM&Aの積極姿勢を示す。西日本の地場ゼネコンのほか、木造や設備系の技術を持つ企業に関心を持つ。


エンジニアの不足が深刻

 桜井氏は「建設市場の縮小以上に、技術力を支えるエンジニアの不足が深刻だ」と、危機感を示す。建設業界では10年代に東京五輪・パラリンピックに向けた建設投資が盛り上がりを見せたが「特に準大手の受注高を見ると、トップラインが明らかに減っている」(桜井氏)。地方零細も含めると国内にゼネコンが2万社が存在する一方で、人手不足が施工能力の押し下げ要因になると分析する。

 桜井氏は「売上高が数百億円規模の上場ゼネコンでも、後継者問題を抱える企業は多い」と語る。こうした国内同業の現状から桜井氏は「業界再編は必然。大手の一角として主導するのが自社の役割だ」と訴える。

 東日本大震災の復興と五輪特需は完全に収束し、利益率の高い工事は大幅に減った。ゼネコンが本業の建設業で稼ぐ力を示す完成工事総利益率(単体)は、22年3月期は上場する大手・準大手13社中10社で落ち込む見込みだ。

 21年6月、大豊建設の経営幹部は「聞いてないぞ」と絶句した。目にしたのは西松建設の株主総会招集通知だ。西松建設が、筆頭株主で村上世彰氏が関与する投資会社シティインデックスイレブンス(東京・渋谷)から「大豊建設との間で経営統合を含むM&Aを行うよう、繰り返し提案」を受けたと記されていた。

 最終的にシティは買い増しを中止し、西松建設はシティ側から自社株TOBを実施した。TOBから漏れた議決権ベースで10%相当の株式は、同12月に伊藤忠商事が引き受けることとなった。

 幻に終わった「西松―大豊」の経営統合だが、シティはその後も他のゼネコンの株式を大量保有するなど、ゼネコンへの関与をいまだ弱めていない。

 21年9月には準大手の戸田建設が水戸市の昭和建設を子会社化した。戸田建設は18年12月に福島の地場ゼネコンの佐藤工業を買収するなど、地場ゼネコンを相次いで傘下に入れている。戸田建設の大谷清介社長は「昭和建設のアスファルト合材工場から、子会社の戸田道路へ材料が供給できるシナジーが見込める」と語る。今後も地方ゼネコンとのM&Aを模索する。


 中小企業のM&Aを仲介するストライクによると、21年1~9月の建設・土木業界の上場企業のM&A件数は32件で、11年以降で最多になる勢いだ。同族企業が多い建設業では中堅以上のゼネコンでも非上場企業が多く、件数はさらに膨らむとみられる。

ゼネコン各社は創業家の名を冠した社が多く、今も創業家の家業として独立独歩を保つ気風が強い。大手5社で唯一の非同族企業である大成建設が投じた一石は大きい。長年、市場を独占してきたゼネコンも市場縮小の波にはあらがえない。


ゼネコン業界に今後の再編を聞く

 ゼネコンの大手では進まなかった再編がようやく動き出した。何が再編のポイントになるのか。大手でM&Aに積極的な大成建設の桜井滋之副社長と、住友林業の傘下に入ったコーナン建設の原真一会長に聞いた。

大成建設 桜井滋之副社長

後継者の不足にM&A余地

――建設業界ではM&Aが低調でした。 「業界内では入札時に挙げる手が減るということでやりたがらなかった。ただ、長期的なマーケットの縮小もあるし、それ以上に直近で深刻になりつつあるエンジニア不足が問題だ。大学から土木学科がなくなったり、建築学科の人気が落ちたことも一因だ」 「外部からはアクティビスト(物言う株主)の介入もあるし、国内の人口減を前にハウスメーカーがより強い危機感を抱いて参入してきている」 ――業界内で経営の担い手不足が深刻になっています。 「同族企業が多い業界だが、地方の売上高数百億円規模の上場企業でも、オーナートップの下にバンカー出身者が多いと感じる。つまり経営の後継者がいない。こういうところにM&Aの余地があると考える。大成建設は大手で唯一非同族なので、受け入れてもらいやすいのではないか」 ――どういう形でM&Aを進めますか。 「今どき吸収合併は方法論としてあり得ない。ホールディングス化が常識化している。あくまで資本的なコントロールのみになる」 「これまで、自社株買いした総額1000億円ほどの株式を金庫株にしていた。M&Aの株式割り付けに使うこともできるので、これを保有していることでM&Aに関する情報が集まってくるのではないかとも思っていた。ただ、大成建設の方針も世間に示せたので意味がなくなり、現金で株式を取得する方針に転換した」 「自己資本だけで言えば1000億~2000億円の買収は可能だ。それだけでなく、大成建設は2013年以降、実質無借金経営を貫いてきたが、現在の利回りを考えると金融機関からの借り入れを活用することも視野に入る」 ――海外でのM&Aも視野に入れてますか。 「アライアンスは考えるが資本は早すぎる。訴訟リスクが現地ではなく直接、本体に及びうる。相手の戦力やのれんが具体的に分かる国内でのM&Aに注力したい」

コーナン 原真一会長

買い手は相手の特徴理解を

――住友林業に傘下入りを決めた決め手は。 「同業ゼネコンの中には入っても吸収されるだけで、同じ建設業だが他業種と一緒になりたいと考えていた。住友林業の木材総合商社という点が、我が社の建築事業と相乗効果が発揮できると判断した。創業した父がもともと住友系の企業に勤めていたこともあり、掲げる社是も住友の影響を受けていることも一因にある」 ――子会社化する過程で混乱はありませんでしたか。 「事業がこれまで通り継続されると決まったことで、社員の安心感は大きかったと思う。上場会社の会計期やコンプライアンス、連結決算の事務上の調整を短期間で行うためには多少混乱はあった」 ――21年1月から協業をスタートして相乗効果は。 「本体の住友林業が受注した木造以外の施工を回してもらえるようになった。すでに2件ほど鉄筋コンクリート造の施工を手がけている。ほかにも公共施設工事で木造について住友林業からコンサル指導を受けたほか、木造関連の専門部署を21年4月に設置し住友林業から経営幹部の派遣を受けている」 ――M&Aに応じる側として何を重視しますか。 「事業規模より自社の特徴を理解してくれるパートナーを探すことが重要だ」 ――ゼネコンのM&Aは加速すると思いますか。 「業界は大手5社が栄える一方で、準大手・中堅以下は資本や技術力で差をどんどんつけられる。ある時点で合従連衡が激しくなるかもしれない。生き残る手法は規模ごとに異なるだろうが、そのためにこれから規模を拡大する余裕はない。今の強みをどう生かすかを考えた結果のM&Aだ」」


 建設業界では、高齢化の進展に伴い人材の確保が急務になっています。どこのゼネコンに聞いても、「技術者が足りない。技術者がいない。」という悩みを多く聞きます。人材不足を手っ取り早く解決する方法として、地方のゼネコンと合併するというケースが増えてきているように思います。また大手ゼネコンよりも、大和ハウスや積水ハウスの方が規模が大きくなっているという内容も驚きでした。今後は建設業界だけではなく、デベロッパー機能をもった不動産会社とゼネコンの合併というケースも出てくるのかもしれません。


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