大規模修繕工事を実施するときに、タイルの浮き面積が多いマンションでは、新築工事時の施工不良の疑いがあいます。しかし、素人では施工不良かどうかの判断はつきません。いったいいくらぐらい浮いていれば、施工不良と判断されるのでしょうか?
この問題には諸説あって、公式な見解はありません。
2017年9月の「判例タイムス」には、「外壁タイルの瑕疵と施工者の責任」という論文に施工不良の「判定目安」として5年以内0%以上、5年超10年以内3%以上、10年超15年以内5%以上、15年超20年以内10%以上という目安が記載されていますが、私の経験から言うと、少し厳しめかなと思います。
私が会社員時代にはBELCA(ベルカ)基準を判断の基準にしていました。BELCAとは「ロングライフビル推進協会」の略で、建築物の診断を行う「ビルディングドクター」や建築物の維持保全を担当する「建築・設備総合管理技術者」などを教育・育成している社団法人です。
BELCA基準では、築年数×0.6%をタイル浮きの目安として定めています。築10年で6%超、築15年であれば9%超のタイル浮きがあれば、施工不良だという判断です。
私の個人的見解では、1回目の大規模修繕工事実施時に10%以上のタイル浮きが発生していれば、管理組合として事業主に、損害賠償を求めるべきだと思います。
施工会社はアフターサービスのタイル保証期間(2年)や、品確法の主要構造部の不具合や雨漏りの10年を保証期間として主張してくると思います。民法上の不法行為責任は20年なので、管理組合としては、この20年を根拠に会社側と交渉することになります。不法行為の立証責任は管理組合側にありますので、はがれたタイルや下地部分を建築士等の専門家に判断してもらって、事業主と交渉することになります。ただし大規模修繕工事は建築から10年以上経過しているので、損害賠償を実施するかどうかは、相手方の誠意しだいということになります。
最近はネット等での風評被害のおそれもあり、企業側も柔軟に対応してくれるところもあります。
建物診断等で、タイル浮き面積が多いことが、あらかじめ解っているのであれば、大規模修繕工事を新築工事を施工した会社にあえて発注するのもお勧めです。「施工不良の会社に何で?」と思われるかもしれませんが、逆に表ざたになるのをおそれて、安価で施工してくれたり、無理を聞いてくれるケースも多いです。また、二度と同じような施工不良をおこさないように、慎重に工事をおこなってくれます。
タイル剥離の問題は、建物の傾きや構造的な瑕疵と違い、お金さえかければ修繕が可能です。私も会社員時代にタイルの全面張替えを実施した建物が2件、自社物件でもありました。
事前交渉もせず、いきない裁判に訴えるのは得策ではありません。常に落としどころを考えて、紳士的に交渉していくのが、かしこい管理組合だと思います。
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