
マンション管理センターから「管理組合のためのマンションの空き住戸対応マニュアル」が発行されました。空き住戸により発生する管理上の問題がまとめられています。
空き住戸が発生すると以下のような問題が発生します。
1)緊急時の対応問題
マンションで火災や漏水事故等が発生した場合に、 住戸内に利用者がいないため 対策が遅れ被害が拡大することがあります。
2)長期的に住戸が管理されないことの問題
(1)専有部分立入りへの対応
住戸内に立ち入る必要がある点検や工事の円滑な実施が困難になります。
(2)専用使用部分の管理不全
ベランダに鳥の巣ができる、専用庭に雑草が繁茂する、ベランダに落ち葉がたまって排水溝を塞ぐ、等のトラブルが発生します。
(3)専有部分の管理不全
排水管内の劣化によって、水漏れが派生し、下階に被害が生じる可能性があります。
3)管理組合の運営面の支障
(1)役員の成り手不足
空き室の区分所有者には役員の資格がないことが多いので、役員の成手が不足します。
(2)管理情報の周知不徹底
区分所有者がマンションに立ち寄らないため、管理や情報が伝わりにくく、合意形成に支障が生じることもあります。
(3)組合活動への関心の低下、総会決議の困難
管理に対する関心が低下し、総会に欠席、議決権行使書の未提出用で特別議決が通らなくなる可能性が生じます。
(4)管理費・修繕積立金・使用料支払いのトラブル
住戸を利用していないのに同額の管理費の負担について異論が出ることがあります。
住戸に住んでいない区分所有者に滞納額を請求し、支払ってもらうことだけでも手間がかかり
ますが、区分所有者の所在不明、相続人の不確知等により、請求する相手が 見つからない
ときは、さらに多大な労力と金銭的負担も必要となります。
このマニュアルでは、空き家の割合に応じて、マンションをランク化しています。
空き状況の見える化
ステージ1(空き家率10%未満)
管理組合の努力で何とか問題を表面化しないで進められる。
ステージ2(空き家率10%超)
日常的な管理組合に対応がやや困難になり、長期的展望が持ちにくくなる
ステージ3(空き家率20%以上)
日常的に管理が困難になり、負のスパイラルに陥りやすくなる
ステージ4(大幅な空き家の進行)
設備の維持管理ができず、居住が困難となり、自力での再生が困難となる
空き家が増える要因
1)相続後の放置
相続により空き住戸を取得した場合、積極的に使用するインセンティブが働かない、兄弟の共有物件になっているため、意思統一ができずに放置されている、等のケースがあります。
2)相続人の不存在
法定相続人がいなかったり、法定相続人が相続を放棄し、相続人がいない状況になったりすることがあります。
相続が放棄されるケースでは、住戸の利用価値や財産価値が低かったり、被相続人に他の債務が存在することもあり、その処理には困難を伴います。
3)相続人の未確定
法定相続人がいる場合でも、協議が整わず当該住戸の相続人が決まらないため、空き住戸となっているケースがあります。
このマニュアルでは、上記のようになった場合の対応方法も記載されています。
空き家への管理組合の対応方法としては以下の施策が考えられます。
管理組合としての対応方法
1)緊急時の対応
①長期空き家・不在となる場合の緊急時連絡先の届け出
②長期空き家住居の鍵の預かり
2)長期空き家の保全
①防犯、通風、換気、ポスト整理等の空き家管理サービスの導入
3)組合運営
①役員の居住要件の廃止。理事会へのリモート参加。
空き家を発生させないための施策
1)住宅としての価値向上
①定期的な修繕工事とバリューアップ工事の実施
2)利用用途の拡大
①居住以外への用途転換
宿泊施設、老人福祉施設、保育所、シェアオフィス等
空き家を増やさないための最終的な手段は、マンションの魅力を高め、若い世代に入居してもらうことで、入居者の世代交代をはかることです。
是非一度、目を通してみてください。
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