秋口になり、窓を閉めて生活するようになると、上階の足音が気になるというクレームが増えてきます。今回は、そんなマンションでの騒音問題のお話です。
平成30年度の国土交通省によるマンション総合調査では、マンションで多いトラブルの第1位は騒音問題(38%)です。また日本建築学会の「建築物の遮音性能基準と設計指針」におけるアンケート調査によると、騒音の発生別、音源別トラブルでは、上階からの騒音が全体の65.2%と、騒音問題の多くは、上階にあることがわかります。
上階からの騒音の種類
上階からの騒音も、子供の飛び跳ねる音、足音、椅子を引きずる音、お風呂場の椅子・洗面器の音、引き戸の開閉音等、騒音の種類は様々です。上階からの音は、コンクリートを伝わって下階へ伝わる固体伝搬音であり、発生源である上階での防音対策が不可欠になります。
具体的な対策
クレームの多い以下の3つの音について、具体的な対策を説明します。
① 子供の飛び跳ねる音
子供が飛び跳ねる音を防ぐためには、フローリングの上に防音マットを敷いたり、畳の上で遊ばせることで、ある程度、発生する音を小さくできます。最近は100円ショップでも、30cm角の防音マットが売られているので、子供の遊び場には、防音マットを敷くことをお勧めします。
② 足音
大人でも、カカトからどんどんと歩く人は、下階に騒音となって響きます。歩き方を工夫して、カカトから歩かないようにするか、スリッパやルームシューズを履くことで、足音の軽減が図れます。
③ 椅子を引きずる音
フローリングの傷防止も兼ねて、椅子の足元にフェルトクッションや、毛糸カバーを履かせることで、騒音は発生しなくなります。
解決のポイント
まずは、管理会社・管理組合に相談して、掲示板等への張り紙による注意喚起を行います。ポイントは何時頃(深夜・一日中・曜日等)・どのような音(走る音・歩く音・重低音の音楽等)が、どれくらいの時間(何秒間・ずっと・定期的等)発生するのかを具体的に記載してもらうことです。定型文の注意喚起では、当事者が気付かないおそれがあります。
それでも解決しない場合は、管理会社から上階に「住民の方から、騒音の苦情がありました。」と個人が特定できない形で説明をしてもらいましょう。直接、上階に苦情を言いに行く方もいらっしゃいますが、お互いが感情的になり、かえって問題が大きくなることもあり、要注意です。
手紙を書くのも有効な方法です。直接会って話をするとトラブルを起こす危険もありますが、手紙だと冷静に伝えられるので安全です。騒音の状況とその結果、自分がどのような被害を受けているかを、丁寧な言葉遣いで穏やかに書くことが重要です。
「お子さんが元気なのは何よりですが、21時には就寝するため、その時間以降は気をつけていただけますでしょうか。」
「ご帰宅の時間が遅いと察しますが、深夜の足音が響きます。ドンドンと歩かない。またはスリッパ等を履いていただくとありがたいです。こちらも生活音には気をつけようと思います。」等、相手の立場に寄り添って、攻撃的にならないよう記述しましょう。最後に部屋番号と氏名も忘れずに記載してください。無記名の手紙は、かえって不信を生む結果になります。
上記対応でも、騒音がなくならない場合は、理事会等の第三者に間に入ってもらい当事者同士が話し合いを行います。上階の入居者に実際の音を聞いてもらうことや、夜間8時以降は、騒音を出さない等のルール決めを行います。100%音を出さない生活は無理です。下階の住人も、マンションに住んでいる以上は、「ある程度の騒音は許容する」心構えが大切です。
騒音測定を行ったにしても、実際に発生している音は非常に小さく、よっぽど常識外れでない限り、受忍限度内ということで、裁判で争っても勝てる見込みは少ないです。
一戸建ての2世帯住宅は、木造ということもあり、マンションよりも上階の音が煩いですが、クレームにはなりません。おじいちゃん、おばあちゃんは、孫がどんどんと元気に走り廻るのを、逆に喜んでいます。マンションでも、上下階の住人同士のコミュニケーションが良いと、○○ちゃんが今日も元気に走り回っていると、クレームにはなりにくいようです。
ここでも、マンション内のコミュニケーションの良しあしが、マンションの生活に重要であることがわかります。日頃の挨拶で「子供が煩くして、ご迷惑をおかけしていませんか?」と一言、事前に言うだけでも、騒音クレームはぐっと少なくなります。
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