
国土交通省はマンション管理の実態を把握するため、管理組合や区分所有者を対象とした調査を5年に一度行っており、このたび令和5年度調査の結果をとりまとめました。今後の分譲マンションの課題把握にも参考になる点が多々あります。
まずは世帯主の年齢ですが、「60 歳代」が 27.8%と最も多く、次いで「50 歳代」が 23.7%、「70 歳代」が 21.7%、 「40 歳代」が 15.7%となっています。 前回調査と比較すると、30 歳以下は 7.1%から 6.2%へと減少する一方で、70 歳以上は 22.2%から 25.9%へと増加しています。
居住者の高齢化が進展し、70 歳以上の割合は25.9%(前回調査より+3.7%)となりました。また、完成年次が古いマンションほど70 歳以上の割合は高く、昭和59 年(1984 年)以前のマンション(旧耐震:築40年以上)における70 歳以上の割合は55.9%と半数以上が70歳以上という結果となりました。またマンション全体で見ても60歳以上が49.5%とほぼ半数を占めるなど、高齢化がますます進展しています。
賃貸住戸のあるマンションの割合は77.8%(前回調査より+3.1%)であり、完成年次が古いマンションほど賃貸住戸のあるマンションの割合が高くなる傾向が見られました。空室があるマンションの割合は34.0%(前回調査より-3.3%)であり、完成年次が古いマンションほど空室がある割合が高くなる傾向が見られます。どちらも築年数の古いマンションほど多くなっています。
管理費については、駐車場使用料等からの充当額を除く月/戸当たりの管理費の額の平均は 11,503 円です。 形態別では、平均は、単棟型が 11,580 円(前回 10,970 円)、団地型が 10,394 円となっています。
修繕積立金については、長期修繕計画に比べて不足していないマンションは39.9%であり、計画に対して不足している36.6%と不明の23.5%のあわせて約60%が修繕積立金が不足していると思われます。修繕積立金の月々の平均額は、13,054円でした、5年前の調査時は11,243円だったので、5年間で1,811円増えたことになります。
管理費と修繕積立金の合計の平均は単棟型で24,634円となっています。
理事会の開催状況は「月に1回程度開催している」が 35.7%と最も多く、次いで「2ヶ月に1回程度開催して いる」が 27.3%となっています。 「月に1回程度開催している」の割合は、完成年次が古くなるほど、また、総戸数規模が 大きくなるほど高くなる傾向にあります。単棟型と団地型を比較すると、「月に1回程度開催し ている」の割合は、単棟型が 28.6%、団地型が 75.2%で、団地型が高くなっています。
少なくとも2か月に1回以上理事会を開催しているマンションは全体の63%を占めています。最近の新しいマンションでは3か月に1回のマンションも多くなっていますが、開催頻度は毎月開催、最低でも2か月に1回の開催を勧めたいと思います。
組合員名簿は 86.0%の管理組合が整備し「変更があるたび都度更新している」または「1 年に 1 回以上定期的に内容の確認を行っている」が 68.7%となっています。 居住者名簿は 82.8%の管理組合が整備し「変更があるたび都度更新している」または「1 年に 1 回以上定期的に内容の確認を行っている」が 60.9%となっています。 緊急連絡先は 81.7%の管理組合が整備し、変更があるたび都度更新している」または「1 年に 1 回以上定期的に内容の確認を行っている」が 51.3%となっています。一方、組合員名簿、居住者名簿、緊急連絡先ともに、総戸数規模が小さいマンションほど整備していない割合が高くなる傾向にあります。
組合員名簿の閲覧については、「閲覧理由が妥当な場合は閲覧できる」が 37.1%、「請求があれば閲覧できる」が 16.9%、「配布しているので閲覧の必要がない」が 3.0%で、合計 57.0%の管理組合において組合員名簿を確認できる体制にありますが、一方、閲覧を認めていない 管理組合が 38.2%あります。名簿に関しては、個人情報保護法のかねあいもあり、組合によって対応が違うようです。
大規模災害への対応状況では「消防設備等の点検を実施している」が 69.5%で最も多く、次いで「定期的に防災訓練を 実施している」が 39.8%となっています。総戸数規模が大きくなるほど何らかの対応策を実施している割合が高くなる傾向にあります。消防設備の点検報告は、法律で規定しているにもかかわらず3割が未実施なのは驚く状況です。また防災訓練の実施率も約4割と少ない状況です。
外部専門家の活用に関しては、41.4%のマンションで活用しており、第1位が建築士の15.6%、第2位が弁護士の14.5%、第3位がマンション管理士と管理業務主任者の13.8%となっています。専門家を活用している理由としては、大規模修繕工事の実施が第1位で47.4%、第2位が知識・ノウハウ不足で32.7%、第3位が管理費滞納等への法的措置で30.5%、第4位が管理の適正化で28.6%となっています。活用方法は単発のコンサルティング業務が65.2%、顧問契約が22.2%、外部役員の就任(理事長等への就任)は5.6%でした。このあたりは、やはり大都市圏で多く活用されているのだと思います。今後、地方のマンションにおいても、専門家の活用が増えてくると思われます。
外部役員についての検討状況は、検討している又は将来必要となれば検討したい意向をもつマンションが34.6%でした。検討理由は、区分所有者の高齢化が42.7%と最も多く、次いで役員のなり手不足が42.3%となっています。第三者管理の導入に向けたガイドラインも新しく見直されました。3割以上のマンションで外部管理者方式や専門家の顧問就任に興味を持っているようです。外部管理者方式のマンションも今後増加していくと思います。
管理費等の滞納状況では、管理費・修繕積立金を3ヶ月以上滞納している住戸があるマンションは 30.1%でした。 また、完成年次別では、築年数が古いマンションの方が割合は高くなる傾向です。
管理に関して取り組むべき課題では「修繕積立金の積立金額の見直し」が 36.2%と最も多く、次いで「長期修繕計画の作成 又は見直し」が 33.0%、「共用部分の利用に関するルールの徹底」が 26.3%となっています。大規模修繕等の建物の維持管理がマンションの問題として認識されているようです。 取得時期が古くなるほど「管理規約の作成又は見直し」、「長期修繕計画の作成又は見直し」、 「管理費等の滞納対策」、「耐震診断の実施、耐震改修工 事の実施」、「区分所有者以外の専門家を活用した管理組合運営」の割合が高くなる傾向にあります。
管理組合運営における将来への不安では「区分所有者の高齢化」が 57.6%と最も多く、次いで「居住者の高齢化」が 46.1%、「修繕積立金の不足」が 39.6%となっています。ここでもはやりマンションの2つの老いに対する問題が課題となっているようです。
この調査は5年毎に実施されるので、過去の調査と比較することで、マンション問題のトレンドが良くわかります。今後の業務の参考にしたいと思います。
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