2022年8月21日の「うちもメディア」の表題の記事を紹介します。
「和室を洋室にリフォームしたいという要望は多いもの。しかし新築注文住宅では7割以上の人が畳スペースを作っているというデータがあります。といっても昔ながらの和室ではなく、畳だからこそ便利に使える部屋として計画がされています。リフォームを専門にする一級建築士が、畳スペースのイマドキ活用法や和室リフォームのアイデア、費用をご紹介します。
若い人ほど畳の部屋を作る
和室を洋室へリフォームしたい、畳をフローリングに変更したいという要望は多いもの。イマドキの暮らしでは和室を上手く使えないという声は多く、建売住宅やマンションでも和室のない間取りが圧倒的に多くなっています。
でもちょっと待って!和室は本当に使いにくい部屋でしょうか?実は、注文住宅を建てた20~40代を対象とした調査(※)によると、約75%の人が「畳スペース」を作り、若い人ほど作る割合が高くなっています。といっても、以前のような正統派の「和室」ではなく、部屋の一部に畳を置いたり、敷き込んだりするスペースを含めての話。面積も一般的な6畳以上を作る人は少数派で、4.5畳未満が増加しています。
畳にはフローリングには無いメリットが数多くあり、暮らしをより便利に快適にしてくれます。イマドキの家づくりでは、様式としての「和室」は減っていても、床材のひとつとして「畳」を選び、上手に使いこなしている人が多いのです。
(※)20~40代世帯 間取り実態調査/株式会社住環境研究所調べ
昔の和室とは違うイマドキの畳スペース
以前の和室は、客間や仏間としての役割がありました。そのため6畳以上の広さを確保し、床の間や畳、障子、襖などを取り付けて、伝統的な空間として設えるのが一般的でした。
イマドキの畳スペースは、子育てや家事、趣味、そしていざという時のゲストルームとしてなど、暮らしの中に便利に役立つ空間として考えられるようになっています。
例えば、子どもの遊び場やお昼寝スペースとして。小さな子どもは床に直接座ってお絵かきや宿題をすることが多いものですが、畳の上なら快適です。畳はあたりが柔らかく、音が響きにくい特性もあります。赤ちゃんに添い寝をする時も、畳の上に布団を敷けばベッドから落ちる心配をしないで済みます。若い世代ほど畳スペースを作る割合が高いのは、子育てにとても役立つ部屋だからです。
50代を過ぎたら、子どもが孫を連れて遊びにきた時に大いに役立ちます。戸を閉めて個室にできるようにしておいたおかげで、お昼寝や授乳スペースに困ることが無かったという声もあります。もちろん離れて暮らす両親が遊びに来た時にはゲストルームとして。
畳スペースは使い勝手のいい家事室にもなります。洗濯物をたたむ時も畳の上なら広く使えます。ちなみに40代~50代に着付けを始める人が多いというデータ(※)があり、着物をたたむのにもテーブルでは狭く、畳の上が便利です。
他にも、お風呂上りに寝転んでくつろいだり、趣味の部屋として使ったり。風邪をひいて寝室を分けたい時など、いざという時の予備室としても便利に使えることでしょう。
このようにイマドキの生活スタイルで必要なのは「和室」というよりも「畳スペース」です。そして最新の家づくりでは、この畳スペースを役立つ生活空間として捉え、位置、面積、内装の計画がされているのです。
(※)きものカルチャー研究所調べ
畳の部屋は狭い家ほど便利に使える
畳スペースにはもうひとつ大きなメリットがあります。筆者のアトリエは、もとは和室がある間取りを全面リフォームしたのですが、あえて和室を残しています。理由は家が狭いからです。
和室は、ゆとりのための贅沢な部屋というイメージがあります。確かに伝統的な和室にはそういった面もありますが、生活空間として使うのであれば、狭い家ほど効率のいい面積活用ができます。
洋室の場合、基本的にはひとつの空間にひとつの用途が想定されています。例えば寝室ならベッドを置いて眠る、ダイニングならテーブルを置いて食事をする、リビングならソファを置いてくつろぐ、といったように目的に特化したつくりになっています。
しかし畳スペースは用途を限定することなく、何にでも使える部屋にできます。ローテーブルを置けば、食事や勉強、家事ができます。テーブルを片付けて布団を敷けば寝室に、畳の上でそのまま昼寝をすることもできます。人が集まる時は、椅子の数に関係なくテーブルを囲めます。
畳スペースは何通りにも使えるフレキシブルな空間であり、狭い家こそ便利に活躍してくれるのです。
和室の再活用は位置により向き不向きも
洗面脱衣室と庭のデッキの間に設けた約4畳の広さの畳コーナー。バスタイム後のリラックス空間として、また洗濯物を畳むスペースとしてなど、様々な用途に使えます(オクターブ洗面化粧台/TOTO、ミセル小あがりユニット/大建工業) https://re-model.jp/
よく考えてみたら畳スペースって便利!もしそんな風に感じたなら、和室を洋室にするリフォームをする前に、畳という床材を活かした活用方法を検討してみるのもいいでしょう。まずは和室の「位置」から、どんな活かし方ができるかを考えてみましょう。というのも、今ある位置によっては、用途に向き不向きがあるからです。
リビングにつながる和室の場合は、子どもたちの遊び場や勉強スペース、家事室、趣味の部屋にするのに向いています。キッチンに立った時に見える位置なら見守りがしやすく、安全で快適な子どもたちのスペースになります。ただし目が届きにくい独立した和室は、子どものためのスペースには向きません。間仕切り壁で死角ができる場合は、部分的に撤去するなどして見通しよくしておきましょう。
洗濯機や物干し場、クローゼットと近い位置、もしくはそれらを行き来する通路上にあるなら、家事室として便利に使えるスペースになります。遠回りしないと行けないような場所にある場合は、結局は使わなくなるのでお勧めしません。
半透明の間仕切り戸なら光を通し、それぞれの空間を明るく保ちます。閉めれば個室に、開け放てばひろびろとした雰囲気になります(ハピア間仕切り戸/大建工業) https://www.daiken.jp/
趣味の部屋やゲストルームにしたい場合は、戸を付けるなどして独立性を保てるようにしましょう。リビングとの境界に間仕切り開閉壁を取り付けるリフォームをして、普段は開け放ってひろびろと暮らし、いざというときは閉めて個室にするアイデアもあります。
ダニやカビを寄せ付けない畳
調湿や脱臭機能を持つタイル状の建材エコカラットを壁に張った畳スペース(エコカラットプラス/LIXIL) https://www.lixil.co.jp/
和室を再活用するなら、畳や壁の機能やインテリア性にもこだわって、より心地よい空間を目指しましょう。畳はダニやカビを寄せ付けにくい和紙や化繊の製品があります。色柄も豊富に揃っていますので、インテリアに合わせて選ぶことができます。壁は調湿や脱臭機能をもつ壁材を使えば、湿気や気になる家の臭いを防いでくれます。
畳だからといって和風にこだわる必要はありません。例えば、人気の北欧インテリアは、自然素材と相性がよく、畳によく似合います。わが家ならではのおしゃれで楽しい空間を目指しましょう。
畳スペースは3畳で十分なことも
収納にもなる畳スペースユニット。自由に組み合わせができ、必要なところに必要なだけの和コーナーが作れます(畳が丘/パナソニック) https://holdings.panasonic/jp/
次に、必要な畳スペースの「広さ」を考えてみましょう。
タンスを置き、布団を2組敷く場合は6畳が必要です。しかし用途によっては3畳~4.5畳あれば十分であることが少なくありません。
もし今の和室が6畳以上あるなら、部屋を分割して一部を収納にするなど、空間を無駄なく有効活用できる計画を立てましょう。例えば、6畳の和室に1.5畳の床の間と押入れが付いている部屋なら、3畳の畳スペースと4.5畳の大型収納が作れます。
リビングから繋がる和室なら、部分的に洋室にするリフォームをしてリビングを広げつつ、一部に畳スペースを作るのもいいでしょう。上の写真はLDKの一角に約3畳分の「収納付き畳ユニット」を置いた様子です。3畳でもオープンな空間ならゆとりが感じられ、新たな収納スペースも生まれます。
ただし小上がりを作る際には、高さに注意が必要です。収納付きにするためには30㎝~40㎝程度の高さが必要になり、ソファや椅子の座面の高さに相当します。昇降はいったん腰を掛けて行いますが、小さな子どもは落下の危険がありますので、注意をしましょう。
玄関脇の和室はシューズクローゼットに
玄関脇などにある独立した和室は、空間が孤立しやすいため、畳スペースとしては再活用が難しいこともあります。そんな時は、玄関脇ならではの位置を活かしたリフォームをしましょう。
例えば、大型のシューズクロークや玄関クローゼットにリフォームすれば、散らかりがちな玄関まわりがすっきりと整います。シューズクロークや玄関クローゼットとは、靴だけでなくベビーカーやゴルフバッグなど玄関にあるものをまとめて収納できる個室タイプの収納のこと。1畳程度から作ることができ、コートやバッグ類なども収納できるようにしておけば、家の中に花粉やウイルスなどを持ち込まないで済みます。
例えば、押入れや床の間を含めて8畳の和室なら、1.5畳をシューズクローク、2畳をウォークインクローゼットにして、残りの4.5畳を趣味やワークスペース、ゲストルームなどにすることができます。
ただし和室を収納化するリフォームでは、出入り口の位置の失敗を見かけることがあるので注意が必要です。
クローゼットにするなら着替えスペースに直結させること、もしくは中で着替えられるようにしておきましょう。リビングで使うものを収納するならリビングから出入りができるように計画を。出入り口が遠いと、しまいっぱなしの納戸になりやすいので注意をしましょう。
庭に面した和室はインナーテラスに
和室が庭に面しているなら、家で過ごす時間をより豊かにするための空間づくりをするリフォームのアイデアもあります。
例えば、床をタイル張りにして、窓を大きくとって太陽光を取り込めば、明るい日差しの中でブランチを食べたり、趣味を楽しんだりできるインナーテラスになります。インナーテラスとは、家の内と外の中間的な存在で、室内にありながら屋外を感じさせる空間のこと。アウトドアの雰囲気を楽しむことができ、部屋干しができるユーティリティとしても活躍します。庭と繋がっている部屋だからこその明るさや解放感を生かしたリフォームで、新しい暮らしを始めましょう。
和室リフォームに掛かる費用
和室リフォームに掛かる費用の目安をご紹介しましょう。
和紙畳に表替えをする⇒ 約13,000円~/1畳
新しい畳を入れる⇒ 約20,000円~/1畳
間仕切り壁を撤去して開閉壁を取り付ける⇒ 350,000円~
壁・天井クロスを張り替える⇒ 約60,000円~/40平米
調湿性のあるタイルを張る⇒ 約500,000円~/3.3平米
壁面収納を取り付ける⇒ 約200,000円~
畳を撤去してフローリングにする⇒ 約150,000円~/6畳
畳ユニットを設置する(商品代金により異なる)⇒ 約50,000円~500,000円
窓を大きくする⇒ 約400,000円~
和室をウォークインクローゼットにする⇒ 約800,000円~
和室を洋室にする⇒ 約800,000円~
畳はイマドキの生活スタイルの中で大いに役立つ床材です。使っていない和室はそのままにしないで、再活用をしたり新たな畳スペースにしたり。上手にリフォームをして、さらに便利に快適にお過ごしくださいね。」
私もこのブログの内容に賛成です。本格的な和室ではなく「畳スペース」を設ければ、多目的に使用できる部屋になります。ほんの3畳でも良いので「畳スペース」があれば、来客者の泊まれるゲストルームや、小さな子供の遊び場としても活用できます。
冬はコタツを用意したり、雛人形を飾ったりと、日本的な生活をするためにも、畳スペースは必要だと思います。
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