給排水管の更生・更新工事の検討をしているというマンションの修繕委員会から問い合わせがあり、先日お伺いしてきました。
築36年のマンションであり、何故か築32年目に排水管の劣化診断を行っており、築33年目に排水管のライニング工法による更生工事の提案がありましたが、総会で否決になったという経緯があります。
設備図面で排水管の材質を確認しましたが、専有部の一部に鋼管(白ガス管)が使用されていましたが、共用立管を含め全てが塩ビライニング鋼管です。硬質塩ビライニング鋼管とは鋼管の内部に塩ビ管が内包された状態の配管であり、サビ等が発生するおそれがないため、多くのマンションでも採用されています。
一般的に更生工事で行う排水管ライニング工事とは、排水管に鋼管(白ガス管)が使用されていた頃のマンションで、排水管が錆びで腐食が進行し、穴等があいて漏水のおそれがある場合に、内部にライニング工事で塩ビパイプを成型する工法です。その結果、出来た排水管は、硬質塩ビライニング鋼管と同じような構造になります。
漏水事故も発生しておらず、排水管の劣化診断の写真もみましたが、汚れ以外は問題ないと思いました。
私のアドバイスとしては、「専有部の鋼管部分のライニング工事は実施しても良いが、その他の部分については、漏水事故が発生する等の事象が出るまで、後ろ倒しで良いと思われる。」という内容です。
以前相談のあった排水管が鋼管の物件は、築44年の物件です。排水管が鋼管でもないマンションで築36年での排水管更新工事は早すぎると思います。また、更新工事であればPS廻りの壁の撤去および、立管交換のためのコンクリートスラブの斫り工事等、大掛かりな工事が必要になりますし、立ち入りを拒否されると工事自体が出来ないおそれもあります。その為に、念入りな施工計画の立案が必要となります。
それにしても、塩ビライニング鋼管の排水管に、築33年で、ライニング工事の実施を提案した管理会社に対して、著しい不信感を抱きました。工事実施の理由が、排水管の閉塞率が40%発生しているという理由でしたが、排水管診断の結果には閉塞率の根拠もなく、また排水管が閉塞しているのであれば、まずは高圧水洗浄の提案が普通だと思います。一気に更生工事まで提案された理由がわかりません。
このマンションでは管理会社の提案に不審をもった入居者が総会で否決しましたが、工事に詳しくない住民の多いマンションでは、言われるままに、工事を実施して大切な修繕積立金を浪費しているのでしょうか?
管理組合の側に立った専門家が必要だと、切に感じた一件でした。
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