以前に大規模修繕工事を実施したマンションの1年点検時に、入居者から床の長尺シートを張り替えた開放廊下の排水溝の近くの長尺シート上に、雨水が溜まるというクレームが寄せられました。
原因は、床のシートの施工方法にあります。廊下やバルコニーは、5年間の防水保障を付けるのが一般的ですが、その保証を付けるために、排水溝や巾木のウレタン塗膜防水を、床の防滑性ビニル床シートの下に10㎝程ラップするように塗り込みます。このため側溝のすぐ手前の防滑性ビニル床シートの下には奥行10㎝(=100㎜)程ウレタン防水が水下で2㎜程度・水上で0㎜程度に水下から水上に向かって勾配をつけ擦り付けるように塗られています。よってここに2㎜/100㎜=1/50の逆勾配が発生します。これが排水水の手前で滞留水が発生する原因です。(下図参照)
このマンションでは、施工会社が雨水が溜まる部分については、長尺シートを剥がして施工をやり直すことを検討しているようですが、監理者としては、それでいいの?と思ってしまいました。
床シートを張り替えるために、ウレタン塗膜防水に傷をつけますし、雨水が溜まらないようにするためには、長尺シート下のウレタン塗膜防水は、防水保障上必要な2mmよりも薄く施工せざるをえません。
排水溝の近くに雨水が溜まっても、通行は廊下の真ん中を歩くので生活には支障ありません。細かい指摘をした入居者の意見だけで、マンションの建物的にも、あまりよくない手直し工事を実施することに、とても違和感を抱きます。
施工会社は、このような説明もせずに、改修工事を実施するようです。せめて、水溜まりができる理由を説明して、建物の防水上はリスクがありますが、それでも手直し工事を実施しますか?と問いかけてから施行をおこなって欲しいと思いました。
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