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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

構造スリットとは

更新日:10月1日



 先日、日経クロステックのネット記事で以下の内容の記事がありました。

「清水建設が仙台市内で20年以上前に施工したマンションで、構造スリットの不具合が明らかになった。構造スリットとは、柱と壁、壁と床などを構造的に分離して地震時の損傷を防ぐために設ける「隙間」のことだ。2024年6月に同社が調査した結果、少なくとも74カ所でスリットが存在せず、3カ所で施工不良が見つかった。

 仙台市は、清水建設に対し原因の究明や安全性の確認を求めている。24年7月16日の定例会見で郡和子市長が明かした。同市建築指導課指導係によると、清水建設が市内で施工したマンションは28棟あり、当該物件以外では「同様の問題は無い」との報告を受けたという。

 問題発覚のきっかけとなったのは、当該マンションの管理組合による自主的な調査だ。24年2月、管理組合がAMT一級建築士事務所(東京都八王子市、以下AMT)に調査を依頼。外壁の目地をはつるなどして調べたところ、竣工図通りにスリットが入っていないことが分かった。

 同年6月6日には清水建設東北支店とAMTが合同調査を実施。このマンションに約560カ所あるはずのスリットのうち、85カ所を抽出して調べたところ、74カ所でスリットが存在せず、3カ所で施工不良を確認した。

 鉄筋コンクリート(RC)造の建物において、構造的に重要な柱や梁(はり)と腰壁などの非耐力壁を切り離すのが構造スリットの役割だ。1995年の阪神大震災以降、耐震設計手法の1つとして普及した。

写真は壁と柱を切り離すために設ける構造スリットの模型で、壁側を模したもの。施工時は、緩衝材となるスリット材に受け材と目地棒を取り付けて、型枠合板にくぎで固定する。コンクリートを打設して型枠と目地棒を取り外した後は、受け材にシーリングを施す(写真:日経クロステック)

型枠建て込み時の様子。型枠を組み立てながら構造スリットも取り付けていく。柱と壁の間に垂直スリットを、壁と床の間に水平スリットを入れてある(写真:AMT一級建築士事務所)

 構造スリットを設けないと、柱が非耐力壁と一体化するため、地震時に変形できる長さが不十分な「短柱」となり、せん断破壊を起こしやすくなる。また、施工不良で構造スリットがずれると、躯体(くたい)の断面欠損や鉄筋のかぶり不足につながり、建物の強度に影響する。

AMT一級建築士事務所が過去に調査した構造スリットの不具合。スリット材が曲がり、柱側に食い込んでいるため、断面欠損が生じていた(写真:AMT一級建築士事務所)


 AMTの都甲栄充代表は、「あってはならない瑕疵(かし)だ。しかし、残念ながら氷山の一角だろう」と話す。「このマンションが建設された時期は、構造スリットが普及し始めた頃と重なる。現場の技術者がスリットの機能をきちんと理解していなかったのではないか」(都甲代表)

 修繕工事の時期は未定だ。清水建設コーポレート・コミュニケーション部は日経クロステックの取材に対し、「できるだけ早く是正工事に着手したい。管理組合の要望に真摯に対応する」と回答。建物全体を調査して、構造スリットの状態や有無についても確認する方針を示した。

 同社によると、当初は24年7月16日から修繕工事を始める予定だった。6月22日に管理組合と合意し、7月13日に住民説明会を実施した上で着工する段取りだったが、AMTから申し入れがあり、説明会や着工が延期となっているという。」

 

 構造スリットは建物の柱と壁などの構造体に意図的に設けられる隙間であり、「耐震スリット」とも呼ばれます。マンションは一般的に柱と梁による構造となっていますが、バルコニー側や玄関側の壁が余計な力を柱に与えることで、地震などの揺れにより壁が壊れた場合、柱が折れて建物が損傷するケースがあります。このような事例を防ぐ目的で構造的に計算された隙間として、柱と壁を分離し、緩衝材の役割を果たすのが構造スリットです。建物に構造スリットがない場合、地震などの外部の力により予想外の損傷が生じ、建物への被害が大きくなる可能性があります。

 1995年の阪神淡路大震災で8階建ての神戸市役所が、6階部分が崩落。構造スリットがないことによる短柱による層崩壊ということで、それ以降のマンションでは耐震スリットを設置することが一般的となりました。

 私も会社員時代にマンションの建設に従事していましたが、当時は通常の伸縮目地や打継目地との違いも良くわからず、また外部からの漏水のおそれがあるなど、現場サイドでは構造的な重要性よりも施工性が優先され、実際には設置していないケースもあったと思います。この記事にもあるように、2000年代初頭までのマンションでは構造スリットが図面には記載されているものの、実際には必要な位置すべてに設置されていないマンションもあると思います。また打設中のコンクリートに押されて、上記写真のように構造スリットが曲がったままに設置されているマンションも有ると思います。

 あってはならないことですが、構造スリット初期導入時のマンションでは、上記記事のような事例が多いと思われるのも事実です。

 

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