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  • 執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

消防法とマンション管理組合



 マンション管理組合で把握しておきたい防火に関する法令として、消防法があります。消防法では第6条で防火対象物の一つとして「寄宿舎、下宿または共同住宅」をあげており、マンションはこの共同住宅にあたります。映画館などの不特定多数が出入りする場所ではないため特定防火対象物ではありませんが、大きく分けて下記の2点に対策が必要です。


消防設備の点検

 設置してある消防設備を年2回点検し、3年に1回消防署長に報告するという義務があります。


防火管理者の専任  消防法では収容人員数が50人以上(店舗が入っている場合には30人以上)のマンションでは、防火管理者の選任が必要となります。収容人員数は世帯数ではなく、人数によって算定を行うため注意しましょう。人が入居していない部屋があった場合でも、部屋の間取りによって下記のような1戸あたりの収容人員算定を行う必要があります。  ・3K(DK/LDK含む)以上の1住戸…4人  ・2K(DK/LK/LDKを含む)の1住戸…3人  ・1K(DK/LDKを含む)の1住戸…1.5人  仮に3LDKのファミリーマンションでそのほとんどが空室だったとしても、13戸以上のマンションについては防火管理者の選任が必要となります。この基準を基にすると、ファミリー向けマンションではほとんどのマンションで防火管理者が必要となります。防火管理者はマンションの条件に合わせた資格講習(通常平日に2日間の講習)を別途受ける必要がありますので、管理組合で選任するだけでは防火管理者にはなれないことも覚えておきましょう。


マンションの防火管理で必要なこと


1. 消防計画の作成

 マンションに合わせた消防計画書を作成しなければなりません。これは火災が発生した場合の対処や避難訓練の計画、防火管理者の外部への委託情報、各世帯の防火対策などマンションの防火管理全般についてまとめられています。また、防火管理者が必要なマンションでは、作成した消防計画を防火管理者名で消防署長に届け出ることが必要となります。


2.消火、通報及び避難訓練の実施  いざ火災が起きた際、防火管理者だけでは消火や通報といった火災発生時の対応の全てを行うことができません。そのため、マンションの居住者が消火活動や避難誘導ができるよう、定期的に消火器の使い方講習や避難経路の確認といった訓練を行います。


3.消防用設備施設の点検・整備  マンションの規模によって消防用設備の設置・点検の義務があることは前述しましたが、この点検は防火管理者が中心となって行います。点検だけではなく3年に1度の報告も忘れないようにしましょう。また、この義務付けられている点検の他に消防用設備に変形や異常がないかといった日常点検も防火管理者が行います。


4.火気の使用または取り扱いに関する監督  火気を使用するイベントを管理組合で実施する場合や、喫煙所がマンション内にある場合の監督も防火管理者の役割の一つとなります。喫煙所等には、防火管理者を火元責任者として掲示しておく必要もあります。


5.避難または防火上必要な構造及び設備の維持管理  防火シャッターや避難通路など避難に必要な構造や設備の維持管理も必要です。防火シャッターの前や非常口の前などは、避難時に障害となるような物を置くことは禁止されていますので、避難経路を定期的に見て回ることも管理の一つとなります。防火扉の前に物が置かれていて、非常時に閉じられない等は良くある指摘事項なので、避難経路に不要な物がないか等、注意深く見ておく必要があります。


6.収容人員の管理  主に映画館などの不特定多数の人が出入りするところで、火災時のパニックを防止するために消防用設備の数に合わない人数が施設に入らないよう制限することをいいます。マンションの場合は各世帯の居住者名簿で収容人員を把握しておきましょう。


7.その他の防火管理上必要な業務  上記のほか、必要な書類関係を用意したり点検報告書のまとめといった書類業務が必要となります。防火管理者が一人のマンションでは、防火管理者が突然の引っ越しなどでいなくなってしまう場合にも備え、いつでも引き継げるよう防火管理者の業務を簡単にマニュアル化しておくと安心です。


 先日、リプレースで管理会社の変更をおこなったマンションで、以前の管理会社は防火管理者の専任等を行っていないことが判明しました。消防法による届け出も実施されておらず、年に1回の防災訓練も行われていませんでした。明らかな消防法違反ですが、どうやらこの管理会社は違反を知っていながら、意図的に行っていないようです。


 違反については、【資料提出命令に従わなかった場合、報告を求められても報告をしなかった場合】⇒30万円以下の罰金・拘留

 【防火管理者選任命令に従わなかった場合】⇒6ヶ月以下の懲役・50万円以下の罰金

とあり、消防署からの指導に従わなかった場合にしか罰則はないようになっています。


 防火管理者の専任についても、避難計画の作成についても、また防災訓練についても、管理会社の手間暇がかかるために、あえて無視したとしか思えません。しかし、実際に火災等が発生し、点検不十分のために人命にかかわるような事故が発生した場合には、管理組合はマンションの管理責任者としての不法行為責任が問われます。手間暇はかかりますが、法令を遵守した対応が必要です。


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