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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

無理してタワマンを買った年収700万夫婦の末路

更新日:2021年4月30日



 2021年3月26日のプレジデントオンラインの記事を紹介します。


「家を買うときに気をつけるべきことは何か。ファイナンシャル・プランナーの高山一恵さんは「7000万円のマンションを買った世帯年収700万円の夫婦が、家計のやりくりに困って相談にやってきた。ローン計画は非常にナンセンスなものだった」という――。


7000万タワマンを35年ローンで購入

 住まいについて、「分譲or賃貸」はいつも激しい論争になります。コストだけで言えば、生涯にわたって支払う住居費用はどちらもそう変わりません。買ったら買ったでメンテナンスや管理費にお金がかかりますし、そもそも人生100年時代の今、寿命によってどちらが得かは大きく変わってきます。

ただし、「どちらでもいい」と言われて納得される方は少数でしょう。実際のケースをみてみると、イメージしやすいと思います。今回は「ローンで詰んだ」小林寿一さん(仮名/36歳)の例を入り口に考えてみましょう。

 小林さん夫婦が私のもとにやってきたのは、都内のタワーマンションに暮らしはじめて1年ほど経った頃でした。レクリエーションルームやライブラリー、宿泊施設も整った高級マンションは、彼らにとって手に入れたくて仕方のない物件だったそうです。夢のタワマンを、小林さん一家は7000万円で手に入れました。両親から援助してもらった1000万円を頭金に、残り6000万円を35年ローンで借りたのです。

 ローンは変動金利と固定金利を組み合わせたかたちで、ならすと金利は約1%。すると毎月の返済額は約17万円になります。そこへ管理費2.5万円が加わり、毎月約20万円が住居費に消えるようになりました。小林さんの年収は700万円で、毎月の手取りは約45万円。支出の半分近くがローンということになります。妻はパート勤務で月収は3~5万円程度。そのお金はほぼお小遣いとして消えていました。


ローンで借りられる金額と返せる金額は違う

 毎月20万円の住居費を70歳まで払い続ける……。ずばり、小林さんのローン計画はファイナンシャル・プランナーの目から見て非常に、ナンセンスです。

 はじめて家を借りるとき、「収入の1/3くらい」の家賃で家を探しませんでしたか。ローンを組んで家を買うときにも同じようなことが言えます。これを「返済負担率」といって、年収に対して年間で返すローン金額を「25%以内」に収めると堅実とされています。

 年収700万円の小林さんに上記のローンの条件を当てはめると、ローンとして借りられる金額は5000万円程度。毎月の返済額は、約14万円となります。ただし、気をつけたいのが、返済負担率は、税込の年収で計算していることです。実際のローン返済は、毎月の手取り収入から返します。そうすると、小林さんの場合、毎月の手取り収入が45万円ですから、14万円のローンでも毎月の収入に対するローンの負担割合は30%を超えてしまいます。しかも管理費・修繕積立金を考慮するともっと割合が増えてしまいます。毎月20万円のローン返済に対して、私がナンセンスと一刀両断した理由もおわかりいただけるかと思います。


「一生に1回だし」というマジックワード

 そもそも銀行が貸さなければローンは組めません。こんな詰んだ貸付けをする銀行に「ちょっとさぁ…」と小言の一つも言いたくなります。不動産屋も必死ですから、家族がキッチンに立つと「お似合いですねえ」なんて褒めそやし、そこに住めば夢の暮らしが手に入ると思わせる。そうして買いたい気持ちが高まってしまうと、多少の無理があっても自分を納得させるような材料をいろいろと集めてきて、最後は「なんとかなるっしょ!」と、ノリでいってしまう。このあたりは結婚式の散財の仕方とよく似ていて、マジックワードは「一生に一回だし!」です。でも、結婚だって今は何度もする人が多いですよね(私も2回しています)。本当に「一生に一度」の買い物かどうかは、冒頭にお話しした人生100年時代にも絡んできます。

 家族の増減、転職、介護や病気など、長く生きればその分ライフスタイルだって変化するでしょう。コロナのような価値観をガラリと変えるような出来事だってあるかもしれません。また前回の柴田さんのような大手企業に勤めている人も一生安泰ではなく、給料が上がり続ける保証はどこにもありません。

 これまで「絶対」と思われていたことが希薄になっている時代に、「一生に一度のマイホーム」という考え方もリセットする必要があるのかなと思います。


「引っ越す前提」で600万円の家を購入した夫婦

 そんな中で感銘を受けたのが、32歳の村中さん(仮名)ご夫婦のお話です。

 共働きで世帯年収500万円。1歳のお子さんがいて、子どもはもう一人欲しいと考えていたけど、それまで住んでいた23区内の賃貸マンションではあまりに手狭な上、家賃も高い。そこで村中さん夫妻は自然が多く、子どもたちがのびのびと暮らせる環境を求め、横浜駅から数駅先の中古一軒家を購入します。

 この物件、駅近ながら築50年のぼろぼろの家だったため、購入金額は600万円と破格の値段だったそう。これを自分たちの手で少しずつリノベーションし、リノベーション費用も加えると1000万円だったそうです。ローンも月4万円まで抑えているとのことでした。

 しかし村中さんご夫婦は、「自分たちはこの家に一生住むと思っていない」ときっぱり。子どもが小さいと家をめちゃくちゃにされるから、高い家を買ってももったいない。だったら子どもたちが大きくなるまでは皆がのびのび住める家や自然のある環境を重視して、住居費を抑える。その分浮いたお金は貯金し、家族の成長やライフスタイルに合わせて家を買ったり借りたりしたい、と話してくれました。


「売れる」「貸せる」視点も必要

 変化を嫌うどころか、自ら変化し続けるスタンスをとる――。村中さん夫妻のケースを自分に置きかえて考えてみると、一度買った我が家を売り、また別の場所に家族総出で引っ越す……どうしても腰が重くなりがちなところを、彼らはまったく厭わない。「幸せに生きるために変化し続けるのは当たり前じゃない?」という軽やかさに、目から鱗が落ちる思いでした。変化の激しい“風の時代”の住居選びでは、マイホームを建てたり分譲マンションを買ったりしても、村中さんのようにフレキシブルに移動する心構えを持っておくことが、大きなヒントになりそうです。

 また結婚のたとえで恐縮ですが、20代のときに「結婚したい」と思った人と、30代、40代で惹かれる人はだいぶ違うと思うんです。同じように住まいも、20代のときに思い描いていた理想の間取りと、50代のときに心地よく感じる間取りはまったく異なるのではないでしょうか。

 そういった意味で今後の住宅購入は、「売れる」「貸せる」といった視点を持つことも必要かもしれません。小林さんの場合、ローンの組み方には問題ありですが、資産価値の高いタワマンは売れる可能性が高いので、移動は案外、簡単かもしれません。

 ただその一方で、「自分の家は資産価値が高い」という思い込みにも注意が必要です。一時期、スカイツリービューが手に入るということで墨田区周辺の不動産価値が高騰しました。こういった家の場合、完成当初の人気が落ち着けば実力相応の価格に戻るため、高値で売ることは難しくなることがあります。


ローンを組む前に第三者に見てもらうといい

 小林さんほど「詰んだ」ローンを組む人は稀ですが、マイホームの購入を考えている方は一度、関係者以外のファイナンシャル・プランナー(FP)に相談されることをおすすめします。FPのいいところは、さまざまな事例を持っていること。同じくらいの年収で家を買ったAさんの場合、Bさんの場合……という風に、類似例をサンプルとしてお話ししながら、無理のないローンの組み方をお伝えできると思います。

 そして、夢の住まいを手に入れたのに、お小遣いは2.5万円と大幅減になってしまった小林さん。老後資金を貯める余裕などもちろんなく、食費もレジャー費もあらゆる費目を小さく小さく、ミニマムにせざるを得ない状況のため、不満が溜まっていると言います。ただ、今のタワマンを維持しながら、お子さんの教育にも今後お金を使いたいという希望もあったので、私からはまず、妻のフルタイムでの職場復帰をおすすめしました。それが難しければ、家の買い替えをして生活ランクを下げることになりそうです。

 繰り返しになってしまいますが、マイホームのご購入時は、ローンを組む“前”にFPに相談していただけたらと思います。購入してしまった後でできるご相談は、削れるところのチェックと、努力で増やせることをお伝えしてモチベーションを上げることくらいになってしまいます。」


 持ち家は終の棲家と思いがちですが、人生のライフステージによって、求める住宅も変わってきます。住替えることも前提に、資産価値の下がりにくい住宅を購入するのが、ベストな住宅購入術だと思います。また、私の会社員時代も、住宅の購入金額の上限は年収の5倍までと言われていました。景気の波の中でボーナスが出ないことも考えられます。住宅の購入前には、第3者の意見もよく聞いて、後悔しないようにしてください。


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