
前回、前々回に続き、理事会のお話です。1年間の業務も終わりに近づくと、総会の準備に向けた理事会が開催されます。総会は年に1回は開催しなければならない管理組合で一番重要な会合です。重要な決定事項はすべて総会での多数決で決定されます。
総会開催日時の決定
標準管理規約では総会の召集周知および議案書を開催の2週間前までに組合員に配布しなければなりません。議案書が整わなくても、総会の日時は、できるだけ早く決め、区分所有者に周知しましょう。その際、居住者の多くが関わる学校行事や地域の行事とぶつからないように注意する必要があります。
議案書の準備
区分所有法および標準管理規約では、特別決議の対象となる項目については議案書が必要ですが、普通決議となる議案については議案書作成の必要はありません。しかし、実際は総会出席者が少なく、委任状や議決権行使書による決議が多いことから、普通決議の項目についても議案書の作成、事前送付が必要です。なお、議案には、普通決議事項と特別決議事項を明確に記載することが望まれます。
総会議案の検討
通常総会の議案は、あらかじめ決められたものとして以下が挙げられます。
① 前期の事業報告
② 前期の決算報告
③ 前期の監査報告
④ 来期の事業計画(案)
⑤ 来期の収支予算(案)
⑥ 来期の役員選任
上記以外の項目については決議する場合は、個別に議案を作成します。議案の内容によっては、いきなり総会議案として決議するのではなく、入居者へのアンケートや、事前説明会を行った方が良いものもあります。組合員が内容をよく理解した上で賛否を表明できるようなステップを踏むことが、円滑な管理組合運営には必要です。
事業報告及び決算書の作成
通常は管理会社が用意してくれますが、執行できなかったこと、予算をオーバーした項目については、原因を明らかにし、総会で丁寧に説明する必要があります。予算オーバーについては少額であれば、総会で説明することで足りますが、大幅超過が見込まれる場合は、予算執行の前に、臨時総会を開催して、追加の予算承認を受けることが必要です。管理規約で一定金額以下であれば理事会決議で予算修正を認めている管理組合もあります。
管理組合会計は、発生主義を採っており、収入および支出を発生時点の期間内に計上する方式です。滞納があれば未収入金、前納があれば前受金として処理します。発生主義によって、資産と負債を適切に把握できます。
総会の決算報告では、会計の主な内容の補足説明を記載しておくと、組合員も分かり易く、総会がスムーズに進みます。
監査報告書の作成
監事は、管理組合の業務の執行や財産の状況の監査役として、理事会における議事録や会計内容を、理事会の開催時期や毎月の会計時期に合わせて、定期的にチェックすることが重要です。
監事の仕事は一般的に下記のようなことが考えられます。
業務監査
① 各種点検や修理の履行確認
② 理事会の開催・運営状況の確認
③ 事業計画の履行確認
④ 苦情、投書の処理確認
会計監査
① 決算報告書と月次報告書との整合性確認
② 通帳、有価証券、領収書などの現物確認
③ 賃借対照表、収支決算書内の余剰または予算超過の理由の確認
④ 資産運用の危険性の確認
⑤ 未収金の回収状況と回収見込みの確認
⑥ 修繕積立金の不足の可能性の確認
上記の視点で理事会の業務執行状況を日ごろからチェックし、最終的に「監査報告書」を作成し、署名捺印の上、総会議案書に添付します。
事業計画案および収支予算案の検討
来期収支予算案の作成に関しては、今期の実施状況を分析しながら、来期の予算に反映していきます。大規模修繕等の大きな支出がある場合は、その準備費用も含め計上します。
管理組合会計は予算に合わせて実行されるため、次期理事が新たな取組をしようと思っても予算がなくて実施できないケースも発生します。このような事態を防ぐ目的で、予備費を計上しておくと、ある程度柔軟な理事会運営が可能となります。ただし、あまり多くの予備費は、予算の不正執行と思われるおそれもあります。
役員候補の検討
役員は輪番制による場合がほとんどですが、区分所有者の高齢化に伴い、役員のなり手が減っている現状もあります。この役員のなり手不足対策として以下の方法が考えられます。
① 役員資格の拡大、現に居住する区分所有者から、同居・非同居を問わず、成人である一親等家族まで対象を広げる。
② 役員報酬を出す、理事会出席1回あたり1000円の商品券等の手当を出す。
③ マンション管理士等の外部の専門家に、理事会運営の一部を委託する。
理事会としては、理事、監事それぞれの定数通りの役員候補者を選任し、本人意思確認の上、議案として作成します。
Comentários