マンションで良くある質問で「1階に住んでいて、エレベーターを利用しないのに、電気代や維持管理費用を払わなければいけないの?」という質問があります。
マンション所有者の権利や基本的なルールを定めている「区分所有法」では、管理費についてどう書かれているのでしょうか。第19条には「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」とあります。つまり、管理規約に特別な記載がない限り、管理費は専有部分の床面積に応じて決まるということです。
マンションには多くの人が住んでおり、共有部分の利用状況もそれぞれ異なっています。そのため、使用頻度にかかわらず専有部分の床面積によって、負担額を決めるという考え方が一般的になっているのです。
また、自身がエレベーターを使わないからといって、エレベーターの恩恵に預かっていないとは限りません。例えば、電気や水道、消防設備の点検の際の作業員の移動手段や、機材の運搬にも使われています。共用部分の維持・管理を通して間接的に利用しているとも考えられるのです。
実際にエレベーターの利用の有無を管理費に反映させるかで争った判例があります。
2002年に1階の住戸の区分所有者が原告となり、「マンションの管理費のうち、エレベーターの電気料金や保守費用にあたる金額は負担する必要がない」と主張しました。
それに対し、札幌地裁は主張を棄却。エレベーターは区分所有者全員で所有・管理する「共用部分」にあたるため、1階の区分所有者であっても管理費を負担するべきとしました。
また、マンションの標準規約の25条のコメントには「管理費等の負担割合を定めるに当たっては、使用頻度等は勘案しない」とあります。
「普段使用していない」という理由は、負担額を減額してもよいという根拠にはならないのです。
どうしても不公平感が拭えない場合、規約を改正すれば管理費の値下げすることが理論上は可能です。先ほど説明した区分所有法でも「管理規約に特別な記載がない限り、」という但し書きがあります。これは、規約で定めれば1階の住民のみエレベーターの費用を払わないと定めれば、支払いしなくても良いということです。ただし、規約の改正には総会の特別決議での可決が必要になることから、上階の居住者の理解が必須になります。規約の改正には区分所有者の4分の3以上の賛成が必要なので、現実的には難しいでしょう。
エレベーター以外でも、自転車置場や宅配ロッカー等、使用しない人にとっては不要な施設であり、だからと言って管理費や修繕積立金を払わないと言えば、マンションの管理が成り立たなくなります。やはり、1階住民だけ支払わないというのは、現実的には難しいと思います。
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