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  • 執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

高額化するタワマンの管理費、放置しておくとこんなに資産価値が下落する!

更新日:2023年6月20日



 2022年11月22日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。


マンションの管理費や修繕費といった維持費が年々、上昇している。しかし、高額化した維持費はリセール時には不利となり、築年数を重ねると資産価値にも大きく影響してしまう。ひいては老後の資金計画にも狂いが生じかねない。

 なぜ管理費は高くなってしまうのか、本当に人件費の高騰や物価高だけが原因なのか、そして管理費を安くする方法とは――。無関心でいるとヤバいマンション管理。それを裏で取り仕切る「管理会社」が絶対に知られたくない「闇」について、マンション管理のからくりを知り尽くす3人が座談会を行った。


【座談会参加者】山内太郎氏=マンション管理士、中山次郎氏=住宅ジャーナリスト、田口三郎氏=元管理会社社員 ※いずれも仮名


新しいタワマンの管理費が高いのはなぜか

中山 タワマン(タワーマンション)の管理費が高騰していますね。70平方メートルくらいの物件で、3万円近い金額になっています。修繕費を入れれば、合計で5万円を超えるマンションもありますよ。 山内 マンションの管理費でおかしいのは、同じ管理会社のほぼ同様のサービスのマンションでも物件によってはかなりの違いがあることです。

 たとえば、東京都港区の駅直結の高級タワマン「Sタワー(2005年築)」は2つのラウンジに加えて、ゲストルームやワーキングルーム、ジムなど多彩な共用施設を誇る大型のタワーマンションですが、管理費は1平方メートルあたり210円程度です。この物件を管理するのは大手財閥系の管理会社「M」ですが、同社が管理する高級シリーズ「P」の「Pタワー(文京区・2021年築)」の管理費は1平方メートルあたり約430円で、その差は2倍以上になっています。

田口 管理費というのは新しいから高いわけでも、共用施設が多いから高いのではなく、基本的には竣工時の分譲価格の動向に比例します。これくらい高い分譲価格で買える人なら、このくらいの管理費を支払えるだろうというレベルの金額に設定するので、価格が高騰している最近の物件の管理費は高いのです。タワマンの「売り」である充実した共用サービスも、高級だからというより、総戸数の多さというスケールメリットが効くから運用できるのです。

 同じ「P」シリーズでも、こちらより築古ながら有名人も多く住む港区の「Pタワー(2018年築)」は1平方メートルあたり約390円、同じく港区の「Pタワー(2010年築)」は1平方メートルあたり約340円です。しかも、この2つのタワマンは荷物を自室まで運んでくれるポーターサービス付ですが、文京区のPタワーではポーターサービスはありません。


管理会社を信じてはいけない

山内 そうなんですよね。管理会社との契約は1年更新なので、その会社が安く管理している物件がよそにある以上、最近建てられた物件は割高になっている可能性が高い。管理会社の経営的にも、不動産相場が高い時代に分譲されたマンションからは管理費を高く取り、利益率を高めたいという狙いがある。逆に言うと、こうした物件の購入者は割を食っているとも言えます。実は「Sタワー」は名物理事長が管理費をはじめとする出費を見直すなど、改革を主導したタワマンですが、そのノウハウを管理会社が他の管理物件で教えてくれることはありえません。そんなことをすると管理会社が損をするだけですからね。

田口 管理会社はマンション管理組合の良きパートナーなんて言う人もいますが、これは一方的な片思いでしかありません。管理会社の収益源は、マンションの区分所有者で構成される管理組合が集めた管理費と修繕費などの維持費ですから、根本的には割高なサービスほど管理会社が儲かるという利益相反の関係なのです。性善説を信じて管理会社に任せっぱなしだと、とんでもない損をすることがあります。

中山 マンションの管理・維持費を高いまま放置しておくと、最終的には資産価値に悪影響を与えてしまいます。今は不動産相場が高止まりしているので管理費などの維持費の高さはそこまで問題になっていませんが、今後、市況が悪くなってマンション相場が落ちてくれば問題化していくはずです。マンションの資産価値を維持するつもりで高い管理費や修繕費を払っていても、中古市場では高額な維持費は買い手が敬遠するため、中古価格という意味での資産価値を下げてしまいます。

山内 実際、中古市場を見ても、相場よりも安く感じる物件は多くのケースで維持費が高い物件ばかりですよね。これは単純な理屈で、たとえば、管理費と修繕費の合計が同等条件の物件より2万円高いとすると、ローンを組む35年間で840万円も支払いが多くなるわけで、単純計算で840万円価格を下げないと売れなくなります。


金利が上がると、ますますヤバい

中山 しかも直近では、4ヵ月連続で新築物件の成約率が70%割れになっています。不動産市況は今後、下げトレンドに転じそうな雲行きです。さらに気がかりなのは、金利動向です。今はゼロ金利で住宅ローン金利が低いですが、今後、金利が上がれば、確実に不動産相場は崩れて、月々の支払い増加を苦に物件を手放す人も増えてくるでしょう。そうなった時にライバル物件より維持費が高いと、売り出し価格を下げざるをえないという負のスパイラルに突入してしまいます。あるマンションが現在1億円として、それを買う人には月3万円の管理費は負担にならないかもしれません。

 しかし、相場が崩れてこのマンションが7000万円になると、この価格帯で買う層にとって月3万円の管理費が重く押しかかってくるはずです。結局、買い手が付かなくなり、さらに価格を落とさないと売れなくなってしまいます。でもそんなことは管理会社はお構いなしなんですよね。

山内 では、マンションの維持費、とくに毎月の管理費は「下げられるのか」ということですが、答えはYES。もちろん条件がつきますが、とくに値下げに応じてもらいやすい物件は、分譲後、一度も管理費の減額交渉が行われていないマンションです。というのも、竣工後の管理会社は「抱き合わせ契約」により、無競争のまま分譲不動産会社の系列子会社に決まっていることがほとんどです。当然、親会社の収益確保のため、割高な随意契約になっていることも多く、そこに管理費値下げの交渉の余地があります。具体的な手段は、何といっても競争原理の導入です。複数の同業他社に管理会社変更(リプレース)の見積もりを取り、それを現在の管理会社に突きつけるのです。すると、現行の管理会社が慌てて「管理委託費」と外注費の見直しなどを行い、管理費の引き下げに応じることも多い。値下げに応じないのであれば、現行の管理費より低い金額を提示した管理会社を変更すれば、管理費が下がります。

 もちろん物件によりますが、こうした改革をすれば、物価上昇中の昨今でも1平方メートルあたり300円を超えるような高額な管理費の場合、200〜250円程度まで下がる可能性は十分ありますし、実際、今年に入っても管理費を減額できたマンションの事例は複数聞いています。


管理サービスは悪くならない?

中山 現行の割高かもしれない管理契約を続けているのは、機会損失にもつながります。たとえば500戸のタワマンで月2万円の管理費が1万5000円になれば、年間で合計3000万円。10年間で、3億円にもなります。この金額を修繕費に振り向ければ、段階的に引き上げられる修繕積立金の上昇を抑えられるかもしれません。

山内 こういった維持費の改革は、管理組合を運営する理事会が主導しますが、理事らには管理会社の交渉など、多大な負担もかかります。手間を避けたければ、「マンション管理費削減コンサルタント」や「管理費見積もりサイト」など、理事に変わって面倒な見積もり作業を代行してくれるサービスもあります。報酬は年間で削減できた金額の全額、もしくは半額の成果報酬が一般的で、新たな出費はありません。「管理費が安くなると、その分、サービスが悪くなるのではないか?」という不安があるかもしれませんが、そもそも、他社への見積りは過剰なサービスを見直しながらも、「現在と同等レベルの管理体制」を条件にお願いするものなので、管理会社が変わったとしてもサービスが悪く感じるということはないでしょう。

 基本的に現行の管理会社に不満があって変更される場合が多いので、むしろ変えた後のほうがサービスがよくなったという声が多いのが実情です。もちろん、管理会社を変更したことよる些細な変化を気にする人もいるでしょうが、毎月支払う管理費が安くなったり、その分のおカネで修繕積立金の値上げを回避できたりするなど、大半の区分所有者にとって金銭的なメリットほうが大きいでしょう。繰り返しますが、管理費が高くてもそれは実際にかかっている管理コストではなく、管理会社の利益に消えているだけかもしれず、管理費の高さはリセール時の資産価値を下げてしまうのです。


独立系管理会社の注意点

田口 少なくとも、他の管理会社社への見積もりをお願いする段階まではまったくのノーリスクなので、とりあえず、現行の価格が本当に適切なのか、客観的に把握しておくことは重要です。もちろん、管理会社の変更にも注意点はあって、独立系の管理会社に変えた場合は月々の管理費が安い反面、分譲会社系列の管理会社と比べて修繕工事や設備更新の営業攻勢が活発です。そのつど、工事の提案や費用の妥当性のチェックすることが必要になります。つまり、分譲会社系列の管理会社は管理費が高めで、工事の営業はそこそこ。独立系はその逆だと考えてください。

 ただ、タワマンなら管理会社のメンツもあるので、他社の見積もりを提示されれば、値下げに応じるパターンが一般的だと思います。

山内 管理費の削減に取り組もうとしたとき、注意したいのは「まずは」と、現行の管理会社に交渉しようとすることです。当然、物価高や人件費の高騰など、もっともらしい理屈で現在の価格を正当化されて意味がないだけでなく、他の理事が納得してしまい、改革が頓挫しかねません。管理費が実際に下がるかどうかは、あくまで市場原理が決めることなので、他社への見積もり発注は試してみる価値がある。現行の管理会社との無用な交渉は避けて、さっさと見積りの数字を出してみる事です。そこではじめて現行の管理会社との交渉が始まるのです。

中山 本来、管理費の問題は「競争原理を取り入れて、他の管理会社と比較しよう」という一言で片がつくはずです。しかし、こうした合理的な判断ができないのは、大事な意思決定の場である理事会を管理会社の担当者が主導し、彼らの営業トークに乗せられてしまいがちなことです。

 とくにタワマンは理事が10人以上の大所帯になっていて、問題意識を持った理事が一人いても、その方向で全員の意見をまとめるのは難しい。無理に事を荒立てるより、他の理事らは「自分が出すおカネじゃないし、ちょっとくらい高くてもいいか」と、穏便に済ませてしまうものです。


管理会社は住民の分断を望んでいる?

山内 そういう意味で、改革の成否はやはり管理組合内でのコミュニケーションや事前の根回しにかかってきますね。いきなり理事会の場で管理会社の社員を前に、彼らの収益を減らしてしまうような提案をしても、管理会社を信頼してしまっている他の理事らに反発されるおそれもあります。できれば理事長や顔なじみの理事に個別で説明してみて、ある程度、賛同者を集めてから理事会の場で切り出したほうがいいでしょう。また、理事会の時に「理事だけで話したい」と、管理会社の担当者に退室してもらう方法もあります。

田口 実は管理会社は、理事同士が結託するのをことさら恐れるんですよね。「あの工事費は高すぎるんじゃないか」と、理事同士で盛り上がってしまうのは彼らにとって都合が悪い。逆に言うと、管理会社にとって、住民同士は分断状態にあるほうが都合がいいのです。何も知らず、管理会社の意に沿って営業提案を飲んでくれる理事会がありがたいと感じているはず。経済的に合理的な管理手法が理事会や区分所有者の間で共有されたり、知恵を付けられたりしては困るのです。

 一方で、マンション内のコミュニケーションが活発であれば、無知な理事会が管理会社の提案に前のめりになっても、理事ではない一般の区分所有者から意見が出て、軌道修正されることも期待できます。要は住民の主体的な意見が出て、それがマンション管理に反映されやすい環境を作ることが重要なのです。


住民の知恵を活かす

中山 たしかに一般の区分所有者でも、管理員などを通じて管理会社に意見を取り次いでもらうことはできますが、管理会社が自社の営利目的に反する意見を、馬鹿正直に理事会に伝えるかと言えば、やはり疑問です。さらに、年1回しかない総会にわざわざ出席して発言しても、クレーマー扱いされかねません。管理会社にとって都合の悪い、管理費値下げなどの提案は、後に理事会で管理会社社員による「不動産事情の知らない素人の提案だ」というような「ご説明」で葬られるだけでしょう。

山内 そこでオススメなのは、理事会が直接管理するメールアドレスを取得して、意見募集の窓口として敷地内に掲示したり、各戸にポスティングしたりすること。Gmailなどでフリーのメールアドレスを作り、複数の理事が見られるように設定できます。透明性の観点から、メールは理事全員が見られるようにしたほうがいいでしょう。もちろん理事の負担もあるので、「個別に返信しない」ことを明示し、実名・匿名に関わらず、聞く価値のある意見だけ吸い上げればいいのです。マンションの管理費などに不満のある住民有志によるグループラインなども有効です。とくにタワマンは居住者も多く、専門知識や解決案を持つ住民の知見が期待できます。


密室の理事会に要注意

田口 また、マンション管理において、注意したいのは理事会の不透明さです。マンションの理事会は閉鎖性が強く、密室でなんでも決まってしまいます。もちろん理事会には監事役員もいて、最終的に重要事項を決める際はマンション総会の決議が必要ですが、多くのマンションでそれらが健全に機能しているとは残念ながら言い難いのが実情です。議事録には都合の悪いやり取りは載っておらず、理事会が発議した総会議案の書類もろくに目を通されずに「理事会が決めたんだから、そんなものか」と、何の疑いも持たれずに大方は数の力で決まってしまいます。

 しかも、管理組合の意思決定の場である総会は、理事役員以外の一般の区分所有者に何かの提案を発議する権限はなく、理事会による「発議した者勝ち」の状態なのです。こうした性質を営利企業でもある管理会社に悪用されると、不必要で割高な事案がどんどん決まり、管理費や修繕費は高くなってしまうこともある。とくに管理会社の目線から言えば、言いなりになりやすい理事が理事会に多くいるタイミングを狙って、過剰な大規模修繕計画や高額な改修工事を決めてしまうこともできるのです。

山内 理事会の運営で難しいのは、様々な考え方を持つ所有者がいて、必ずしも経済合理性だけで意見がまとまるわけではないことです。多いのは「転売目的の人のために、管理費や修繕費を下げてマンションの質を下げるのは許せない」と主張する住民たちです。しかし、実際にはマンションは毎年、総戸数の約3%が売買で所有者が入れ替わります。つまり30年も経つと、計算上、所有者の9割は売買を経験していることになります。なかには、維持費が安いと管理サービスが悪くなると思い込み、維持費が高いほうが高付加価値につながると信じている理事役員もいますが、こうした理事が他の区分所有者の財産権を侵害している可能性すらあるのです。


「相見積もり」でも安心できない

田口 もちろん管理費の減額も重要ですが、マンション管理を主導する管理会社がどういう存在なのか。とくにその収益構造を理解しておくことが、適切な出費を行う意味で大事になります。マンション管理会社は、実は管理の実務を担っているわけではなく、それらは主に清掃業者やエレベーター保守業者、点検業者など専門業社に外注しています。管理会社というのは、いわばその代理店のような立ち位置の業態なのです。管理員業務などの委託業務では中間マージンを、管理組合が直接契約している植栽剪定やエレベーター保守などの契約でも、公共料金以外はその紹介料や手数料という名目で実質的なバックマージンを得ています。

山内 とくに相場が分かりにくい設備更新や修繕工事などでも、業者からしっかりバックマージンを得ています。これらが管理会社の担当者の営業目標やノルマになっており、管理会社が提案する工事が割高に感じるのは、こうしたカラクリで管理会社の利益が実質的に上乗せされているからです。

 「相見積もり」を取っているつもりでも、肝心の業者選定は管理会社が行っており、当然、付き合いがあってバックマージンを上乗せできる複数の業者を「実績のある業者」として選別しているので、その場合の相見積もり価格は「茶番」と言ってもいいでしょう。

 ちなみに、高額な工事や設備更新も管理組合側が直接、業者を探したり見積もりを取ったりすればはるかに節約になります。こうした見積もりを担当する理事には負担が生じるので、なかにはそれに対する報酬を支払う組合もあります。とはいえ、この場合、今度は理事が不正に手を染める危惧もありますよね。こうしたケースに備えて、理事は1〜2年の輪番制をしっかり守っておけば、不正はしにくいでしょう。いずれにせよ、管理会社に相見積もりを頼むと、相当のマージンを上乗せされるおそれがあるので注意が必要です。


管理会社の粗利率は高い

中山 これら実際には見えにくい中間マージンやバックマージンが、管理会社の収益源の本丸と言えます。総会で配布される収支報告書からは管理会社へ渡る利益の総額はわかりませんが、管理会社の決算書をみると、粗利にあたる売上総利益率がだいたい20~25%くらいということから、収益の多さがわかります。

 管理会社が表面上の報酬として受け取る「管理報酬」は委託業務部分の「管理委託費」のうちの5~10%程度しかありませんが、裏ではしっかり利益を上げているのです。しかも、この慣習が問題なのは、管理会社が管理報酬からしか利益をあげておらず、高額の管理費が仕方のないコストだと住民側が誤解してしまいかねないことです。この業務なら管理会社を通す必要がないと住民側が自発的に考えたり、違う業者を探したりするという機運が起こりにくく、健全な市場競争や契約が意図せずに阻害されているおそれもあります。

田口 しかもこの20~25%という粗利は、広告費宣伝費などの経費や税金対策が反映された結果の数字なので、管理費が割高な物件では管理費のうち30〜40%が管理会社の収益として流れているといったケースもあるでしょう。

 たしかに、分譲時に管理組合がイチから管理体制を構築するのは大変ですが、管理会社にとっては、一度、実務を行う専門業者と契約関係が構築できれば、基本的に契約を維持しているだけで、大した手間もかからずチャリンチャリンとおカネが入ってくるおいしいストックビジネスなのです。逆に言えば、管理会社の収益が見えにくくなっているのは、管理会社の仕事内容に対価が伴っていないという「後ろめたさ」の表れかもしれません。専門業者や管理人にはすでにおカネを払っているのに、それ以外の管理会社の役割である毎月の理事会支援や自社の利益にもなる工事の提案などにこんな大金を支払う価値があるのか、という話です。

 しかもタワマンになれば、それが年間数千万円の単位になります。言葉は悪いですが、マンション管理会社ビジネスとは、無知な管理組合との情報格差を利用した中抜きビジネスなのです。


サービスがどんどん悪くなる

山内 このようにマンション管理の費用が不透明な状態になっているのは、やはり多額のお金がかかる契約や事業でも、実質的にほぼ「競争原理」が働いていないことに尽きます。その根底には、マンション管理を担う管理会社は基本的に変えないものだという先入観があるからです。

 実際、国土交通省が2018年に取ったアンケートでは、既存のマンションの約73%が分譲後から管理会社を変えてないという結果が出ています。ずっと同じ会社と契約を続けているという状況が、安心どころか、丸投げの依存体質になりがちなのです。その結果、マンション管理会社は契約解除されないとたかを括って、売上目標を達成するために必要性の低い工事提案をしたり、利益を確保するためにコストカットに走ったりするのです。

田口 とくにタワマンでよくあるのが、管理会社の委託業務のサービス低下です。物価高や人件費の高騰を引き合いに、コンシェルジュが廃止されたり、清掃の頻度が減ったり、共用サービスを廃止されたりするのは、よくあるパターンです。

 「この項目をカットすれば、管理費の値上げを避けられる」と説明され、実は物価上昇の影響以上にサービスをカットされて、管理の質が落ちているマンションも少なくありません。分譲の系列会社だからと、管理契約の維持をし続けていると、どんどん管理の質が落ちていくことも多い。そして、分譲当初の光り輝いていたタワマンらしさはいつの間にかなくなり、陳腐さが出てきて、人気を落としてしまい、それは当然、資産価値にも影響してきます。


いがみ合うべきではないけども

山内 もちろん、管理会社と「いがみ合うべき」というのではありません。ただ、管理会社とはビジネスライクな距離感を保ちつつ、他社との比較や自分たちで見つけてきた会社から見積もりを取るといった、サービスを契約する上で最低限のことをやるべきというだけです。

 あくまで、管理の費用は現行の管理会社の説明だけを聞いて納得するものではなく、市場の競争原理で決められるべきものです。もっとも、管理会社も別に悪意があるわけではなく、業界特有のビジネスモデルとして利益相反的にならないと利益を上げられない構造なのです。

中山 もっとも、最近は管理員の人手不足などで「管理会社が撤退する時代」などという報道も見ます。たしかに人手不足や人件費の高騰を理由に、撤退をチラつかせながら管理費の値上げを迫られるケースは、最近かなり聞くようになりました。

 ただ、値上げはともかく、「撤退」という情報が業界から流れてくるのは、値上げを実現するためのマーケティング的な側面もあると私は思っています。というのも実際、マンション管理会社全体の管理戸数は減るどころか、新築物件の供給とともに、増えていっています。管理費を高く取れる築浅の物件が増えているので、その分、手間の割に儲けの少ない小規模物件は切り捨てられていくというのが真相でしょう。

 少なくとも、年間で総額1億円を超える管理費予算があるタワマンなどの大規模物件の管理から撤退するなど、絶対にありえませんし、タワマンが管理会社に撤退されて自主管理に陥ったという例はゼロです。マンション管理会社は国内産業の数少ない安定業種で、コロナ下でも増収増益です。少なくとも値上げしないと大変だという状況ではないのです。

山内 マンション管理に対して区分所有者がが無知無関心だと、管理会社が理事会を主導して、彼らのいいようにやられてしまいます。とくにタワマンは高額所得者や、賃貸に出す外部居住の所有者も多く、地味なマンション管理に関しては無頓着になりがちです。

 自分たちのマンションは自分たちが守るという気概がないと、あとあと大きく後悔してしまいかねません。まずは自分が支払っている管理費が、実際のマンション管理に対して適切な金額なのかどうかを考えることから始めてみましょう。」


 タワーマンションや大型マンションでは、共用部の施設も多く、またコンシェルジュや警備員の人件費等、管理費も高額になりがちです。また、管理費削減を目的に管理会社の変更(リプレース)を行っても、思ったように管理費が下らず、逆に上がってしまうケースもあります。概して独立系の管理会社は管理費が低額ですが、その分利益を上げようと、小修繕工事を多く提案してくるケースも多いようです。記事にもありますが、施工会社に工事を依頼しても、多くの管理会社はバックマージンを施工会社から得ています。管理組合はその分、割高な工事費で工事を行っていることになります。修繕費用を低減したいのであれば、建築のことを良く知っている人を修繕委員等に選任し、組合が業者から直接見積もりを取ることが重要です。

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